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ジュガード3.0 [仕事の小ネタ]

SimoneAhuja.jpgSimone Ahuja
JUGAAD 3.0
Penguin Random House, 2019

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内容紹介
どの組織であっても、生き残り、さらにこれまでよりも良くなるための最良の機会は、その組織自身の中にある―――本書はこれを証明するために書かれた。 進歩的であることが確かで、行動施行で、そして何よりも息つくひまもないディスラプションという背景に対し、確立されたビジネスのDNAは再調整を求められている。贅肉の少ない企業家精神を巨大企業のコアコンピテンシーにする、大きなうねりが始まっている。 多くのインタビューと、企業に対するコンサルティングにより、本書は、企業内ハッカーが有するコンピテンシーが何かを突き止めようと試みる。本書はまた、人々が自身をこの趨勢の中に位置付け、組織がその内部にいる革新者を特定できるようになるための模範形の提示を試みる。

外出自粛の週末読書の2冊目である。実際は、先週末に『英語教育が甦るとき』を読み終えた際に、少し英語音読をやりたいと思い、適当な蔵書を探したというのが発端で、1日1章、約20~25頁というペースで毎日シコシコ読み続けてきた。今週末を迎える時点でまだ50頁ほど残していたが、これを土曜午後に一気に読み進めて読了した。

この著者の共著作『ジュガード・イノベーション』は2012年12月に読み、その邦訳『イノベーションは新興国に学べ』は、2015年11月に読み終えた。ジュガード(JUGAAD)って何かという疑問を持たれる読者もあろうかと思うが、「問題に対して解決策を考案する能力」という意味のヒンディー語である。

著者の共著作に関する過去の2つの記事で相当書き込んであるので、『ジュガード・イノベーション』についての内容紹介はそちらに任せるとして、その共著者の1人が今回同様に「ジュガード」という名を用いた本を単著で書いた理由は、多くの企業がジュガード的イノベーション創出を指向しているにも関わらず、なかなかそれがうまく行かない、新たなビジネスの種につながらないのはなぜなのかという問題意識があったからだと推察される。

本書で最も頻繁に出てくる言葉は「intrapreneur(社内企業家)」である。社内企業家がなぜ生まれにくいか、組織内にいる潜在的社内企業家を如何に芽吹かせるか、そのためにどのような環境づくりが必要なのかが論じられている。

前著でも感じたことだが、この著者の枠組みは非常にシンプルで、それにこんなに多くの紙面を割かなくてもいいのにと思わなくもない。著者がいう、あなたの組織が組織内にいる潜在的イノベーターの能力を引き出し、それを組織の成果につなげていくための原則というのは次の8つである。

 1.Keep it frugal.(質素に保つ)

 2.Make it permissionless.(許可なしでもできるようにする)

 3.Let customers lead.(顧客にリードさせる)

 4.Make it fluid.(流動性を高める)

 5.Maximize return on intelligence.(インテリジェンスへの報酬を最大化する)

 6.Create the commons.(共有空間を創出する)

 7.Engage passion and purpose.(熱意を目的とつなげる)

 8.Add discipline to disruption.(ディスラプションに規律を付与する)

ひとつひとつの原則は「なんじゃそれ?」と思われるかもしれないが、なぜそれが原則なのかの解説を読んでいけば、どれも当たり前のことが言われている気がする。いちばん僕自身が勉強になったのは、米国の国際援助機関USAIDが2014年に組織内に創設したグローバル・イノベーション・ラボに関する記述であった。USAIDが新しい部署を作ったのだと勝手に思っていたが、そういう単純な組織論の話ではないらしく、部署横断的に果たす機能のことを言っているのだと理解した。

それとの比較で、昨年度から我が社でも開催されている新規事業アイデアコンテストも考えてみた。これも、潜在的社内企業家の熱意とアイデアと能力を引き出すための1つの仕掛であろうと思われる。実際に自分も事業提案書を書いて昨年末応募し、二次審査まで進んでピッチさせてもらった。

それで他のアイデアも見させてもらったが、ほとんどが新しい事業の話で、新しいシステムを考案して組織にビルトインするようなアイデアはなかったように思える。参加者がデスクオフィサー中心だと、新しいテクノロジーを用いてシステム的なソリューションを提供しようという提案がなかなか出て来づらいのではないかと思えた。

二次審査の結果はまだ出ていない。僕のアイデアは自身はあるものの、昨今の新型肺炎のお陰で会社が対応に追われていて、僕が提案した事業は最もコロナウィルス感染の影響を受けたと思うので、今のご時世、僕のアイデアに加点要素はあまりないかもなぁという予感がする。

このコンテストなんて、我が社が変わる第一歩だと思うが、まだまだ社員の間に眠っているアイデアは多い。忙しいからできないとか、プロトタイピングしてみる環境がないからできないとか、トップダウンでいろいろ下りて来る別の仕事が大きすぎるからできないとか、いろいろ事情はあると思うけれど、もうちょっとひとりひとりの社員のイノベーティブなマインドが解放される仕掛けがないものか―――そんなことを考えるのに本書はいい読書だった。


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