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『英語教育が甦るとき』 [英語一期一会]

英語教育が甦えるとき――寺島メソッド授業革命

英語教育が甦えるとき――寺島メソッド授業革命

  • 作者: 山田昇司
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2014/09/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
英語大嫌いの学生が「もっと早く出会っていたら」と嘆き、帰国生も「こんな楽しい授業は日本に来て5年目で初めて」と驚く。そんな英語の授業を生み出す「寺島メソッド」の実践的大研究。「英語で授業」に翻弄される日本の英語教育再生のヒントがここにある。

宣伝になるけど、著者は僕の8つ上の従兄である。そして、本書も刊行されて間もない2014年末頃、「Sanchai君に読んでもらって感想聞きたい」と言われて謹呈を受け、実家の両親経由で受け取ったものである。よって先ず謝ります。6年もかかってしまいましたと。

そしてまた、この従兄には感謝もしている。こと英語の勉強に関しては、よい目標として君臨して下さったこと。著者が大阪外語大学英語科に進まれたのは知っていて、それで僕は東京外語大学英米科を第一志望にできた。(結局行ったのは別の私大の英語学科だったが。)この従兄がいなければ、大学で英語を専攻するという選択肢があることすら僕は知らなかっただろう。また、大学で英語を専攻するという目標設定の下、逆算して高校時代に何をやっておくか、特に英検受験とかラジオ講座受講とか、隣町の教会の「バイブルスタディ」という名の英会話教室とか、田舎でもやれることをやったのも、この従兄の足跡がベンチマークになったところがある。(只管朗読や只管筆写は、僕はラジオ講座『百万人の英語』の國弘正雄先生の回を聴いて知り、自分なりに実践していたもので、従兄が同様に高校時代実践していたという話は、本書を読んで初めて知った。)

ただ、大きく異なるのは、大学進学にあたり、著者と違って僕自身は英語教師になろうという希望は全く持っていなかったことだ。それがおそらく大学での英語の勉強への取り組み方の違いにつながっているのだろう。僕はどちらかというと国際関係論とか経済学の勉強の方に傾斜していったため、英語を主題として捉える機会が減った。自力で奨学金を探してきて米国留学につなげた。以降は英語を使う機会はそこそこあったけれど、勉強の対象として捉えたことは一度もない。

なので、正直言うと本書で書かれた英語教授法について、僕が言えることはあまりない。ただ、英語で話されている話の主題について、日本語であっても予備知識がある方が、多少の英単語や構文が理解できなかったとしても、話にはついて行けるというのはその通りだと思う。僕はここまでちゃんと体系立った英語の教育は受けていないけれど、リズム読みは常に意識はしていて、時々舌慣らしのための英語の文章音読はやったりする(特に朝風呂の時)。ただ、本書で推奨されているような「セン・マル・セン」のような符号は使わない。文やフレーズの切れ目に/(スラッシュ)を入れる方を用いている。

音読を取り入れるようになった理由の1つは、國弘正雄先生の「只管朗読」だが、もう1つは同じラジオ講座『百万人の英語』で知ったハイディ矢野先生の「アメリカン・イングリッシュ道場」にある。高校時代に「ワナワナメソッド」だの「ゲラゲラメソッド」だのといった、日本人の発音でもネイティブっぽく聞こえるしゃべり方の法則をいくつか学んだことが大きい。なので、結果的には抑揚をつけた英文音読は僕も時々やっているけれど、本書で推奨されている「寺島メソッド」とは全く別の経緯で実践するようになったものだ。

本書は明らかに英語教師をターゲットにして書かれたものなので、教師にもなっていない僕が無責任な論評をするのはできれば控えたいと思っている。

但し、1つだけ気になったことを以下で論じたい。

著者が指導教官である寺島隆吉岐阜大学名誉教授と美紀子夫妻に対して相当な敬意を払っておられるのは理解はできるが、あまりの持ち上げ方に、ちょっと引くものを感じた。講演を依頼されたのに指導教官にものすごい遠慮をされているし、本書全体を通じて「寺島メソッド」推しが顕著である。僕は寺島先生御夫妻のご経歴や研究業績は全然存じ上げず、無礼な発言かもしれないが、「寺島メソッド」推しなら寺島先生御夫妻の著書を読めばいい話で、それを自著でママの「寺島メソッド」推しをされても、正直言うとあまり響かない。

せめて、「寺島メソッド」とは何で、通説で言われていることはどこまでで、自分は本書の中で、これに新たな仮説を加えて実際に実践してみて、こんな新たな発見があった、というような、著者ならではのオリジナリティをもっと明確に示して欲しかったと思う。武道や芸能の世界には「守破離」という言葉がある。本書は師の教えを忠実に守っている「守」の段階にあり、師の教えから離れて新たな取組みを始めようとする「破」の段階にはまだまだ行けていないと思えてならないのである。(そこが、昔から知っている従兄のいいところでもあるのだが。)

英語学習法に関する本はこれまでも度々読んできたが、英語教授法に関する本はまったく初めてで、とても新鮮だった。また、明石書店が、こういう英語教育関連の書籍を取り扱っているというのも、本書を通じて初めて知った。僕も以前、本を書きたいと思った時にアプローチした出版社だが、応対して下さった編集者の方には、「原稿もないのに話にならん」とダメ出しをされた。以後、本を出したいなら先ず原稿を書こうと思い、書いて別の出版社に持ち込んだら、「ここまで原稿を書いて持ち込まれるのは初めてです」と逆に戸惑われた。未だに何が正解だったのかはわからない。ただ、自分が門前払いを喰らった出版社からこうして専門書を出した従兄には、敬意を表したい。

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