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再々読『ロスジェネの逆襲』 [池井戸潤]

ロスジェネの逆襲 (文春文庫)

ロスジェネの逆襲 (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/09/02
  • メディア: 文庫

自分的には再読のつもりだったけど、実は二度目の再読だとこのブログを書こうとして気付いた(苦笑)。まあ、TBSで久しぶりに日曜劇場で『半沢直樹』の新作が放映される直前でもあるし、彼岸の三連休だし、1冊ぐらいは小説を交えてもいいかと思う。

1回目(2012年9月)に読んだ際、「「全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。」っていうのは、今の僕自身の状況を考えたら、容易に首肯できなかった」とコメントした。7年半が経過した今、この半沢のセリフのところには再びマーカーで線を引いたけれど、それでは自分がそれを実感できているかというと、是ともいえるし否ともいえる。

どんな仕事において自分が必要とされるのかによる。必要とされる場所であったとしても、余人をもって代えがたいとして求められているのか、誰でもいいけどやってくれる人が必要だからと求められているのかによって、受け止め方は違う。与えられた仕事でベストを尽くしていればそれなりの評価は得られるけれど、器用貧乏というか、一つ間違えば何でも屋になってしまう。それでいいのかという気がしてしまう。

一方で、自分が本当にやりたい仕事をやるのに、一時的にであっても目の前の仕事でベストを尽くさねばならない時期もある。そういうのをコツコツやっていかないと、自分がやりたい仕事にありつけない。「この仕事をやらせろ」とアピールして、聞き入れてもらうためには今やっている仕事での実績が要るのも確かだ。

僕が本作品を30代とか40代とかで読んでいたら、それも受け入れていただろう。でもね、今や僕は50代後半。やりたいことははっきり見えていて、手も届くところにあるのだけれど、目の前には本意ではない別の仕事がある。それは最短時間で片付けたいのに、横やりを入れて話をややこしくする人が多い。

特に、この3ヵ月はつらかった。胸苦しさの頻度が上がったので、心配になって3月に入って早々に精密検査を受けたら、心臓には異常はなく、多分心因性でしょうと先生に言われた。こんなところで体をこわしてたら、これからやりたいことができなくなってしまう。

要はサラリーマンとしての残存年数を考えたら、今必要とされるところでベストを尽くしていてはダメな場合もあると僕には思えた。

◇◇◇◇

「株主に納得してもらうために動員すべきは、カネではなく知恵だと思います。知恵は資金力に優る――そう信じることが重要です。」

仕事の質は、人生そのものの質に直結しますから」

「どんな小さな会社でも、あるいは自営業みたいな仕事であっても、自分の仕事にプライドを持てるかどうかが、一番重要なことだと思うんだ。結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、オレは幸せだと思う」

正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織ではできていない。だからダメなんだ」

「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る

「きっと君たちは、机に向かって問題と答案用紙を配られたら、誰にも負けないいい点数を取るんだろう。だが今回の試験は、まず解くべき問題を探してくるというところからはじまっていたようなものだ」

◇◇◇◇

半沢の発言ばかりじゃないが、備忘録的に。

「週刊文春」2年半ぶり完売 “森友”自殺職員の手記公開が反響
相澤記者スクープに編集長「震えました」

3/19(木) 17:46配信スポニチアネックス
 文藝春秋は19日、森友問題で自殺した財務省近畿財務局の男性職員=当時(54)=の手記を掲載した18日発売の「週刊文春」3月26日号が約2年半ぶりに“完売”したと発表した。大阪日日新聞・相澤冬樹記者のスクープ「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ 森友自殺<財務省>職員遺書全文公開 『すべて佐川局長の指示です』」が反響を呼んでいる。
 発行部数は53万部。販売中の一部書店もあるが、発売初日の実績から、ほぼ入手不可能になることが確実な状態なため、関係各所に“完売”を通知。“完売”は2017年7月13日号「安倍首相に鉄槌!/船越英一郎が松居一代に離婚調停 全真相」以来、約2年半ぶりとなった。
 加藤晃彦編集長は「相澤さんの原稿を初めて読んだ時、震えました。NHKという大組織を離れ、いち記者に戻った相澤さんが粘り強い取材の末、ご遺族の信頼を得て『遺書』の公開にこぎつけた。その経緯が9ページにわたる原稿に克明に書かれています。相澤さんがこのスクープを発表する場として『週刊文春』を選んでいただいたことに感謝します。こうした記事が読者の支持を得られたことは、非常にうれしく、励みになりました。『ぼくの契約相手は国民です』が口癖だった真面目な公務員が、なぜ死ななければならなかったのか。小誌は、今後も取材を続けてまいります」とコメントした。
 学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた財務省近畿財務局の男性職員=当時(54)=が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制され、自殺に追い込まれたとして、妻は18日、国と佐川氏に計約1億1300万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

この赤木俊夫・近畿財務局元職員の遺書の内容が報じられた時、僕は妻とテレビの前で涙した。「正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること」――できてないと感じるし、一歩間違えれば自分だって同じような状況に追い詰められたかもしれない。ひたむきで誠実に働くのは当然のことだとしても、世間的に見てなんでこんなことをやってるのか、我々が尽くさなければならない相手が誰なのかよくわからない仕事に対しては、正しくないと堂々と言えると本当にいいと思う。そうなってない現実もあるのだけれど。

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