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『異文化と向き合う国際協力』 [仕事の小ネタ]

異文化と向き合う国際協力―開発援助の現場から― (創成社新書62)

異文化と向き合う国際協力―開発援助の現場から― (創成社新書62)

  • 作者: 清水正・清水マリエッタ
    • 出版社/メーカー: 創成社
    • 発売日: 2020/01/24
    • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
世界と日本をつなぐ働き方のススメ!国際協力をめざす方への道しるべ。

創成社新書って、いつの間にか62冊も出していたんだと驚いた。国際協力シリーズの最新刊は、いつも「オランダ通信」を送って下さる清水正さんが夫人のマリエッタさんと共著で書かれた異文化コミュニケーションの本である。昨年末に送っていただいた「オランダ通信」に、年明けに著書が出ると書かれていたので、少しばかり売上にも協力させていただこうと思い、1冊購入した。

ちょうど、僕自身も、そろそろ国際協力の裏方の仕事から、ライフワーク的に取り組みたいテーマを2つ3つ程度にまで絞り込んで、時間投入をそれらに集中させたいと思っていた時期でもあったので、国際協力のフロントラインで相手国の人々と直接接して一緒に仕事をやってきた方々の心構えについて、虚心坦懐に学ばせていただきたいと思い、本書を手に取った。

内容としては、国際協力でのキャリア形成のお話で、しかも青年海外協力隊(今は「JICA海外協力隊」というらしいが)から始まったキャリアが、50代前半に入った今のご夫妻のお姿にどのようにつながっていったのかが描かれている。今、ちょうどその協力隊の春期募集が始まったところだが、これをエントリーポイントとして、将来がどのように開け得るのか、1つのあり方を提示してくれている1冊になっている。隊員時代に職場の同僚や周りの人々とどう向き合ったのか、国際機関の職員としてはどうだったのか、JICAの専門家としてはどうだったのか、そして国際開発コンサルタントとしてはどうだったのか等、その時々の生き方は参考にしていただける。

また、清水さんの場合、マリエッタさんがお仕事で外国赴任される時には主夫として同行するようなこともなさっていて、単に仕事としてだけではなく、同伴家族としての滞在国社会の中での暮らし方も、参考になるものが多いので、JICAの専門家や日本企業の海外駐在員の同伴家族として行かれる方にも知っておいていただいていいような内容が含まれていると思う。

そういう意味では、著者と同じように歳を重ねて50代後半を既に迎えてしまっている僕のような人間が読むよりも、これから協力隊を応募する、20代の若い人が読む方が参考にもなると思う。我が家でいえば3人の子どもたちに読んでもらえると嬉しい。それも期待しての購入だったわけだし。うちの子どもたちは今は国際協力に関心がほとんどないけれど、著者のキャリアを見ても、最初から国際協力を志向していたわけじゃないようだから、今やっている勉強の延長線上で、見聞を広げる意味で異文化と接する機会は是非持ってほしい。

また、それ以前に、大学生をやっている今からできることもあると思う。清水さんは学生時代に本多勝一に憧れたと書かれていたが、動機はともかくとして僕も学生時代に本多勝一の著作はそこそこ読んでいた。そういうのが今の我が子を見ていてあまり感じられない点には正直焦りも感じている。ゲーム攻略の動画サイトばっかり見ている姿は、すごく残念である。早く自分で気付けよと思う。

協力隊のような形で海外に行き、日本人ではない人生の伴侶と海外で出会い、そして複数の国で様々な立場で仕事してキャリアを形成していく―――そんな人ばかりではないと思うが、では著者が本書で書かれたことがすごく特殊な話かといわれるとそうではない。今は一時的に日本への来訪者の数が減っているし、本当にこれが一時的だと断言できる保証もないけれど、日本国内で外国人を見かけた場合、地域で外国人留学生と接する場合、同じようなことはやはり意識しておかないといけないのではないだろうかと思う。

日本ではあまり文化人類学という学問が注目されることは多くないが、外国人には文化人類学を専攻していたという人の話はよく耳にする。そういう人が日本に来て、そういう心得を以って日本人と接しておられる可能性もあるわけだし、そうするとどっちが心配りをしているんだかわからなくなる。日本で暮らす日本人だって、知っておく必要があるような内容も本書には含まれていると思う理由がそこにある。

最後に、とはいっても僕自身が今後目指す途を考えた場合、本書で著者が言及されている、NHKサンパウロ支局に伝わる「5つの”あ”」(p.68)は肝に銘じておきたい。

あせらない
あたまにこない
あなどらない
あてにはしないが
あきらめない

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