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米国がSTEM教育を支援 [ブータン]

米政府がSTEM教育支援を約束
US govt. commits support to STEM education
Kuensel、2019年8月14日、Rinzin Wangchuk記者
http://www.kuenselonline.com/us-govt-commits-support-to-stem-education/

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【抄訳】
国王陛下は昨日、ブータン訪問中の米ジョン・ジョセフ・サリバン国務副長官と接見した。サリバン副長官以下8人から成る代表団は、8月11日から14日までブータンを訪れ、ブータン政府と人々との関係を拡大し、深めるための手段を探った。

昨夕行われた本紙とのインタビューで、サリバン副長官は、国王陛下が自分に与えられた機会にとても感謝していると述べた。「科学、技術、工学、数学のSTEM教育に対する陛下の関心に特に感銘を受けた」という。

国務省は、STEM教育プログラム向けに450万米ドルのパッケージをまとめた。 「STEM教育改善のために、ブータンを支援したい旨、連邦議会に通知した。STEM教育は陛下とブータン政府の優先事項であるため、私たちも資金拠出したい。」サリバン副長官は初のブータン訪問。

副長官はまた、8月12日にロテ・ツェリン首相、タンディ・ドルジ外相、ロクナート・シャルマ経済相を訪問した。米国とブータンの温かく友好的な関係にあると強調するためのブータン滞在である。

「ブータンと米国は外交関係はないが、ニューデリーの大使館を通じて緊密な関係を築いており、また人と人の交流がある」――サリバン副長官はこう述べた。彼はさらに、STEM教育も含めた教育の機会が両国の人々の間での交流を促進し、国王陛下との協議に基づき、NASAプログラムの実施も視野に検討していると付け加えた。

ブータンにふさわしく、ブータン政府のニーズに合った方法で協力や支援を増やせる機会がある――副長官はこう述べた。例えば、経済相との会談の中で、米政府や専門家が地質調査の専門家とともに地震対策分野での協力できる多くの分野を特定しできた。適切な時期に、私たちはブータンのカウンターパートとなる専門家チームを米国で配置し、関係を深めたいという。

首相は、副長官との会談の中で、ブータン経済の多様化と農業生産と輸出の維持について強調した。 「農産品輸出に関してブータン政府と協力したい」とサリバン副長官は述べた。

ブータンの民主的取引について、副長官は、それが米国との二国間関係の深化につながるポジティブな動きであると述べた。両国は民主的な価値観、腐敗のない法の支配や人権へのコミットメントを共有している、と彼は付け加えた。

「私はここに来て、ブータンに対する米国の支持と、ブータンの主権への支援を行う民主国家の友として、ブータンを守る決意を強調した」――副長官はこう述べた。

また、両国はお互いから学べる多くのものがあるとも指摘された。「何よりも、相互の価値観の尊重や、ブータンにふさわしい関係に従事することは、政府と人々のニーズを満たしており、相互利益のために協力できる分野は数多くある。」

サリバン氏は19代国務副長官。2017年5月24日に就任した。ボストンで生まれ、弁護士資格を持つ。

副長官と代表団は本日、ニューデリーに向けて出発する。彼は、インドでジェイ・シャンカール外務大臣と会談し、訪問中にインド米国フォーラムで講演する予定。

◇◇◇◇

国交がない米国の国務副長官がブータンを訪問して、「STEM教育」とか「NASA」とかに言及していた記事には、正直ちょっと驚いた。国務副長官って、ひと昔前にはアーミテージとかゼーリックとか有名人がいた、国務省事務方トップのポストだ。

ただ、ちょっと冷静に考えてみると、米国が対中国を意識した動きなのではないかとも思えてきた。このところの米中貿易摩擦のエスカレートぶりを見ていると、覇権争いが世界各地であっても不思議ではない。クエンセルを読んでても、米国絡みの記事が扱われたことといったら2016年の米大統領選の結果ぐらいだったから、米中関係という文脈から考えることなどほとんどなかったが、帰国して日本での報道とかを見ていると、それを強く感じる。

また、この記事を読むと、米政府の政策中枢の人物に対して国王が「STEM教育」と「NASA」に言及されたというのがわかる。このところの王様のテクノロジー推しとも符合する。宇宙の話は2016年頃から既に言われていた。九州工業大学に留学生を送り込んだ話も、2年経って留学生たちは帰国を果たしている。ナノサテライトの研究をしてきた彼らは、継続的に今後もナノサテライトを宇宙に展開する必要があるのだと思うが、インドのISROだけに頼ってもいられないので、NASAの協力が得られるのは大きいだろう。

メディアでは取り上げられていないけれど、先週はNPO法人国際建設機械専門家協議会(SECONEQ)と関西大学の方々がジグミナムゲル工科大学(JNEC)を訪問され、機械工学の四年制学士課程(Bachelor of Engineering in Mechanical Engineering)の他に、測量・地球情報学の学士課程(Bachelor of Engineering in Surveying and Geoinformatics)のコース開設を祝われた。機械工学の方は前から知っていたけれど、ジオインフォマティクス支援もカバーされていたと聞いてちょっと驚いた。まあ、それはともかく、ジオインフォマティクス分野の研究開発能力の強化も王様の肝いりだと以前JNEC学長が仰っていた。NASAが入って来るとはいえ、ナノサテライトとジオインフォマティクスの両面で、日本もそれなりに関わって来たという先行者の立場はアピールしていって欲しいと思う。

もう1つ気になるのは、副長官が教育の機会の提供で人と人との交流機会を増やしていきたいと言っているくだりである。米国も優秀な人材を外国からかき集めてきている国だから、そういうのでブータンの若者がSTEM教育のトレンドに乗っかって米国に行っちゃうケースが今後増えていくのかなという気がしないでもない。日本も留学生にとって学びやすく暮らしやすい環境を整えていかないと、オーストラリアだけじゃなく、米国にもいい人材をかっさらわれることになりはしないか。ちょっと気がかりである。

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