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『大量廃棄社会』 [持続可能な開発]

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)

大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実 (光文社新書)

  • 作者: 仲村和代、藤田さつき
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/04/16
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
「このままじゃだめだよな」「なんか変だな、おかしいな」暮らしの中で、ふと思うことはありませんか?たとえば、一回も袖を通すことなく、洋服を捨てる時。イベントだからと買った恵方巻きやケーキを食べ切れなかった時。新品の服が1年間に何億枚も廃棄されていることを知った時。たくさん作って、たくさん買って、たくさん捨てる。それが当たり前の時代だが、「無駄」のウラには必ず「無理」が隠れている。NHKの元キャスター・国谷裕子氏と「SDGsプロジェクト」に取り組む朝日新聞の2人の記者が、「大量廃棄社会」の実情と解決策を徹底リポートします。

このところ、たま~に読んでいたアパレル系の文献。行き着く先は「大量生産・大量廃棄」の問題点を指摘するこの本であった。最近のアパレル系の文献ではたいてい指摘されている業界の構造的な問題なので目新しさはないが、ファッション・レボリューションとか、ワンノバとか、自分が着ているその衣類が、どこの誰によって生産されて自分の手に渡って来たのかを可視化する試みを新たに知ることができたのは収穫かな。口ではエシカルを標榜しつつもユニクロで買い物してしまう後ろめたさを素直に告白しているレポーターの筆致には共感も持てる。

ワンノバを起業したのが現役の慶大生だと知り、同じ大学生であるうちの娘にも読ませたいと思った。幸いなことに市立図書館の貸出期限はまだ1週間以上あるし、夏休みに突入した我が家の女子大生は暇そうだ。本書は新聞記者が書いているので文章は読みやすい。読んで感想を聞かせて欲しいと言って、僕は本書を娘に手渡した。意識高い系じゃないうちの娘でも、何か感じ取ってくれたら嬉しい。

見えない作り手に思いをはせろ、生産者と販売者の努力やリサイクルの広がりだけでは限界もあり、消費者が意識を変えていかないと、衣類の大量廃棄の傾向は良化に向かわないという指摘は腑に落ちるところである。作り手の顔が見えないから、捨てることへのハードルも低くなっている。1つ1つの服をどこでどう購入したのかが思い出せる服、作り手さんの姿がイメージできて捨てたら誰が悲しむかがはっきりしている服なら長く着られるということか。そうだよなと思う。

SDGsとアパレルというテーマになると、良く出て来られるのがこの著者の方々である。僕の関わっている財団も、綿花の栽培農家さんの顔が中間製造業者や消費者に見えるようにするための活動をしているのだけれど、SDGsとうまく関連づけたマーケティングができていないねという話を、つい昨日の理事会で話し合ったばかり。自分でももう少しできることを考えていかないといけない。

一方で、この本、問題意識の高い著者がそれでもユニクロで買い物してしまうというのが言い訳になっているからか、ファストファッションに対するツッコミが弱いとも思える。買っちゃう消費者が意識を変えて行かないといけないというのはわかるけれども、ファストファッションの業界のマーケティング戦略におどらされた面もある筈で、今の大量廃棄の現状、メルカリで扱われている衣類の多くがユニクロだという現状、ファストファッションの業界の人がどう思っているのか、ちゃんと訊いて欲しかったなと思う。

本書のもう1つのテーマは、食品の大量廃棄。何年か前に某コンビニの本社でマーケティングやっていた大学時代からの友人が、「恵方巻というのを仕掛ける」と言ってたのを思い出しながら読んでいる。今はもうその会社を離れてしまっているけれど、今度飲む機会あったら、コンビニの恵方巻大量廃棄の実態、お前どう思うんだと酒飲んで絡んでみようかな(笑)。ただ、食品の大量廃棄の方は著者の突っ込みもあまり鋭くない。

確かに、広島のパン屋さんの話は面白かった。ただ、いい原料を調達すれば働き方のスタイルをこんなに変えられるというのはいいんだけど、いい原料を生産するのに生産農家さんがかけている手間と時間はどうなんだろうかとか、逆に働き方のスタイルを変える方向から僕らの食に対するアプローチの仕方を変えていくというのもありなのではないかとか考え、そうした方面の取材がもうちょっとあったら良かったのになと思えた。

本書を読み終わった娘がどんな感想を聞かせてくれるのか、わかったらこの記事にも少しばかり書き加えておきたいと思う。

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