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頑張る会計検査院 [ブータン]

会計検査院、SDGsへの取組みのギャップを指摘
RAA finds gaps in SDGs’ preparedness
Kuensel、2019年1月23日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/raa-finds-gaps-in-sdgs-preparedness/
【ポイント】
王立会計検査院(RAA)は、2030年の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた明確な政策ロードマップの策定が必要だとする報告書をまとめた。

RAA報告書によれば、ブータン政府のSDGsへの取組みは、議員への働きかけ、国連アジア太平洋地域における早期取組み着手国(early mover country)としての認定、2018年7月の国連ハイレベル政治フォーラムでの自主的レビュー報告書(Voluntary National Review)の提出、ブータン・フォア・ライフ基金を通じた500万エーカーの保護区設定、などの実績は評価できるものだとしている。

しかし、SDGs実施に関わる全てのステークホルダーの巻き込みや、ステークホルダー間の調整や協働促進を担保するようなメカニズムがブータンにはないことをRAAは指摘。GNH委員会は第12次五カ年計画はSDGs達成に向けて最初のアクションプランだと述べているが、2030年までにSDGsを達成するための長期のロードマップの策定は別途必要で、その中で、どのゴール・ターゲットの達成に向けた責任官庁も明確にする必要があるとも指摘。
◇◇◇◇

商工会議所のプロジェクトは会員企業に裨益していない
BCCI projects did not benefit its members: RAA
Kuensel、2019年1月24日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/bcci-projects-did-not-benefit-its-members-raa/
【ポイント】
RAAは、2018年会計検査で、ブータン商工会議所(BCCI)が、30年間にわたり、民間セクターの人材育成に貢献するという組織のマンデートについて、何も達成していないと指摘。さらに、BCCIが実施したプロジェクトは、この主目的とは関連性が薄く、会員企業に対して何ら恩恵をもたらさなかったとも指摘した。プロジェクトとして槍玉に上がったのは、「持続可能な企業家育成と食料安全保障ファシリティ」「一県三品(ODTP)」「グリーン公共調達」「中小企業融資」。(各々の具体的指摘事項は詳述省略する。)いずれも、政府の政策の方向性とは合致しているものの、責任官庁がある中で、BCCIの本来のマンデートとして行われなければならない会員企業への周知や裨益効果という点で、ほとんど成果を上げていないとする。ODTPについては、三品の選定がデスクリサーチのみによって行われ、事前の事業可能性調査(プレF/S)も行われず、実施後のモニタリングもされていないので、失敗に終わった事業が多い。こうした問題は、BCCI設立の法的根拠がなく、組織のマンデートを明確に規定する文書もないことに起因するとRAAは分析。

◇◇◇◇

物産展は高くつく
Trade fairs, an expensive affair
Kuensel、2019年1月25日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/trade-fairs-an-expensive-affair/
2019-1-25 Kuensel.jpg
【ポイント】
BCCIが主催する各種物産展(トレードフェア)は、出店業者からの出店料を得るBCCIの大きな収入源となっている。BCCIの収入の45%がこれら出店料から得られるが、RAAの検査によると、出店業者に対する資格審査(due diligence)は厳格には行われておらず、出店料の振込みを延滞している業者が再度出店を認められているケースも見られるという。2013年から17年までに、BCCIは25回の物産展を開催し、134万ニュルタムの収入を得ているが、一方で出店料未払金も190万ニュルタムにものぼっていることが、BCCIの財務諸表を検査した結果明らかになった。また、業者選定プロセスも不透明で、イベントテント設営が2015年にノルリンイベント社が業務不履行になった後ドルックイベント社に変更になった後、後者との特命随意契約でイベント開催が行われてきている。

◇◇◇◇

先週、クエンセル上で3日連続してRAAの検査報告が1面を飾った。いずれも興味深い内容で、そのうち実際にその検査報告書を読んでみたいと思う。

いずれもちょっとした驚きを伴うものだった。ブータン政府のSDGsへの取組み姿勢が会計検査の対象になるんだというのがビックリだった。BCCIについても、会員企業によるクラブ団体が会計検査の対象になるんだというのにはビックリした。日本の会計検査院のことはよくわからないが、日本で政府のSDGs取組み姿勢とか、日本商工会議所とかが検査対象となり得るのだろうか。

これに限らずだが、RAAの会計検査って、分野課題で区切っていて、組織で区切っていないケースが多い。僕が今までに読んだ検査報告書は、鉱業とか防災への取組みといったもので、ブータンの分野課題の概況と直面する課題を理解するには、まとまっていてある程度の分量もあり、とてもいい資料だと思った。毎年テーマを変えているので、古くなっている報告書も勿論存在するが、それはそれでその当時の状況をスナップショット的に把握できて、それをベースラインにその後の展開を自分で調べていける。

その一端は、BCCIの2018年業務実績検査報告に関する2つのクエンセルの記事からも垣間見える。具体例が相当豊富に述べられている。ODTPなんか、実施したBCCI側がデスクリサーチで決めちゃった産品について、実際の現地での取組結果がどうだったのかを調べている。RAAがその検査官の動員力でプレF/Sからモニタリングまで見ることができたら、ODTPの成功確率は格段に上がっていただろう(笑)。BCCIに関する記事は別の論点もあって、そもそも会員のほとんどがホテル業者や旅行会社等であるBCCIが、農産品を多く含むODTPを実施する能力があったのか、どうやって進めようとしたのか、そしてそれが会員企業が裨益する話だったのかというのがわからない。

例えば、ハ県の「三品」の1つは夏野菜なのだが、その夏野菜のブランド力をアップさせるために、質の高い野菜を作って高く売ろうという働きかけを農家に対してしていたのか、それに必要な技術指導をBCCIはしていたのか、するだけの知識やノウハウをBCCIは持っていたのか、そのあたりのことはRAAの報告書では指摘されていない。おおかた原料の品質向上の部分は農業普及員に任せて、ちょっとした加工機をそこに置けば農産品の付加価値は上げられると考えたのかもしれない。そこはそうかもしれないが、それではパッケージングとか、付加価値の高い野菜をどこにどう売るのかという、本来のBCCIのカバー領域と思われるところでどれだけのことをやってるのかがわからない。せっかくODTPで奨励された農産品が、結局ティンプーのサブジバザールで店頭に並ぶだけだというのなら、農家の側でも苦労して質を上げようというインセンティブは働かないだろう。

RAAの報告書は、プレF/Sの部分とモニタリングの部分の不備を主に指摘しているけれど、もう1つ指摘しなければならないのは、プロジェクトの設計と実施の部分なのではないかと思う。記事の限られた情報だけからの想像でしかないけれど、RAAの指摘事項以外にも課題はあるような気がする。ブータン人検査官がブータン人の組織を検査しているからそうなっているような気もするが。

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