『ミライを変えるモノづくりベンチャーのはじめ方』 [仕事の小ネタ]
内容(「BOOK」データベースより)
先端技術を、宝の持ち腐れで終わらせるか、それが当たり前の世界を作れるか、すべてはやり方次第です。ミドリムシで上場のバイオベンチャー、ユーグレナの仕掛け人による、モノづくりベンチャーの成功ルール! 起業したい人、投資したい人、(VC、事業会社、銀行、エンジェルなど)必読の書!
ブータンでもビジネス展開されようとしているユーグレナ社の関係者の方だというので、ただそれだけの理由で本書を手に取った。自分がこんなものづくりのベンチャーを目指しているわけではないけれど、できれば老後に趣味と実益を兼ねてほどほどのものづくりは自分自身でできるようになれたらなと思っている僕にとっては、すぐに役に立つ本ではないが、想定読者が誰なのかを考えれば、今大学で生命工学を専攻していて、大学院にも行きたいと言ってる僕の長男ぐらいは読んでおいたらいいんじゃないかと思う。
但し、学生がすぐに役立つ本でも必ずしもない。学生発のベンチャーは推奨されていない。10年ぐらいはどこかの企業で修行して、技術を磨き、必死に勉強して、人的ネットワークを築けと説いている。その通りだと思う。ブータンではどこもかしこも「起業(スタートアップ)」慫慂しているけど、起業して誰でも成功できるものではないので、学生をターゲットにして起業アイデアのハッカソン「スタートアップ・ウィークエンド」をやたらと開催している今の風潮に対して僕が抱いていた違和感を、うまく表現している。(ユーグレナの出雲社長の本にも書かれていたことだが。)
ユーグレナに限らず、本書の中で登場するベンチャーは、社会の「ここを良くしたい」という思いで苦しい思いで試行錯誤を繰り返しながら研究開発を続けておられる。その顔ぶれを見ていて興味深いのは、著者自身は明記しておられないけれど、紹介されたベンチャーのほとんどが、「持続可能な開発」の実現に向けた取組みであるように思える。ミドリムシからバイオ燃料を開発するとか、台風の巨大なエネルギーを用いた発電とか。自分が何をやりたいのかを考えた場合、「持続可能な開発目標(SDGs)」の中にヒントが眠っている可能性が高いということである。
もう1つは、起業のネタはどこに転がっているかといえば、やっぱり開発途上国なのではないかという点である。ユーグレナの出雲社長が学生時代にバングラデシュでインターンをやっていて、それで自分が一生かけて解決に取り組むべき課題のヒントを得たというのは有名な話だが、ある程度発展して生活が便利になっている先進国の社会の中では当たり前のことが、途上国に行けば当たり前ではない。そこにビジネスの種は転がっている。何もないと言われるところでどのようにソリューションを設計できるか。それが当たれば、狭小で既に飽和状態にあるかもしれない先進国の市場以上の可能性が途上国の市場にはあるかもしれない。言い換えるなら、こうしたアプローチを志向するなら、どのような形であれ若い時分に外国を経験しておけということになる。そこで何かのヒントをつかめたらメチャメチャラッキー。(どうでしょう、長男クン?)
ただね、著者が言っていることで、飛ばし読みでは理解できなかった箇所もないことない。例えば著者がCEOを務めるリバネス社に関する記述の中で、土日は働くなと社員に言ってると書かれている箇所を見る一方で、経営者には土日もないというようなことも書かれているところもあった。自分も経営者的ポジションで仕事しているから、土日もないというのは非常によくわかるし、土日働くなと部下に言ってるのも自分自身やってることなのだが、言っていて何だか居心地の悪さも感じていた。そこをどう埋める説明の仕方があるのかなと期待していたが、そこについては特段なかった。(僕自身は、週末にまで出勤して来なくてもいいが、部下には期待する別の能力アップの途があると説くのだが。)
この本、ブータンで読んでブータンに置いていくつもりで購入したが、どうやら僕自身が本書をいちばん読んで欲しい人は日本にいるようなので、何らかの形で日本に持って帰ることにしたい。
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