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森林の炭素貯蔵量、ようやく把握? [ブータン]

ブータンの炭素貯蔵量は7億900万トン
Bhutan has more than 709 million MT in carbon stock
Kuensel、2018年8月3日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-has-more-than-709-million-mt-in-carbon-stock/
【ポイント】
最近公表された全国森林資源インベントリー調査レポート第2巻によると、バイオマスとしてブータンに貯蔵されている炭素貯蔵量は7億900万トンに達するという。これには、有機物としての森林被覆土が含有する炭素1億8800万トンも含まれる。この被覆土は地表から30センチ分しか計算に含まれないので、実際はもっと多いかもしれないという。森林エリアのバイオマス総量は11億900万トンで、これは5億2100万トンの炭素貯蔵量になる計算である。ブータンの森林の炭素貯蔵量は、1ヘクタールあたり2.01トン増加、森林以外の地域では1ヘクタール当たり1.25トン増加する計算となる。

農業森林省森林資源管理部の首席森林官によると、このレポートは森林セクターにとって大きなブレークスルーになるという。レポートには、バイオマスや炭素貯蔵量、炭素再生産量と年間増分、種の多様性に関する情報が豊富に含まれている。「森林の健康度や森林にかかる負担、非木材森林資源や野生生物等の質的データも報告されています。全国規模で収集された初めての評価結果です。これまでこうした情報は入手することができませんでした。」

これまでに入手可能だった森林資源インベントリーは、1974年から1981年に調査されたもの。これにはバイオマスや森林炭素貯蔵量の評価は含まれておらず、近年重要性を増した森林の炭素貯蔵可能性について確認できるデータとなっていなかった。

森林減少や森林劣化は、炭素排出量の17%増に相当する。世界中の運輸交通部門の排出増よりも規模が大きく、エネルギー部門の次に気候変動への影響度が大きい。森林資源インベントリー調査レポートは、ブータンの炭素吸収への貢献度に関する貴重なベースラインデータとなり得ると期待される。

ブータンの森林エリアの65%が広葉樹林であり、針葉樹林に比べてバイオマス総量が大きい。同様に、土壌の炭素含有量も広葉樹林帯の方が大きい。2000年時点での森林のCO2吸収能力は160万トンと言われていたが、今回調査の結果、吸収能力は630万トンと見込まれることがわかった。

別の森林官は、このような総合的なインベントリー調査が行われた国は少ないと強調。「このような取組み実践は、我々森林官による同様の実践の実施能力を高めるのに役立つ」と述べた。農業森林省は同様のインベントリー調査を今後5年おきに実施する予定。

森林資源インベントリー調査プロジェクトは2009年から始まり、これまでにSNV、ブータン環境保全信託基金、米国農業省森林局、FAO、世銀FCPF、ドイツ環境・自然資源保全・原子力安全省(ICIMOD、GIZ経由)等から技術・資金援助を受けて実施されてきた。

◇◇◇◇

記事で書かれていることを正確に意訳できたかどうか、正直自信がないのですが、2016年2月だかにトブゲイ首相がTEDトークで「ブータンは炭素吸収国(carbon negative)」と強調されていたのが、ようやく裏付けされたような感じだろうか。感覚としてはそうかなと思いつつも、それでは年間いくらぐらいのCO2をブータンは吸収してくれているのかというところに関しては、よくわからなかったのである。

でも、これだけ読んでも、ある時点での静的なスナップショット的情報はわかるかもしれないが、ある程度継続的にこの作業は行われないと、理論値が合っているのかどうかはよくわからない。

昔聞いた話だが、広葉樹林だから一概に良いとは言えないらしい。その森林がどんどん歳をとっていけば、CO2吸収能力は落ちていくのだという。若い森林の方が吸収能力が高いのだとか。そうすると、広葉樹林だから良いというのではなく、その広葉樹林内で新旧交代が行われていかないとCO2吸収能力が維持されないということだろう。古い木は伐採して、新しく植林を進めていくような計画性が求められるのだろうけれど、その部分については記事からは何も読めない。

また、広葉樹林で冬になると落ちる葉っぱも、腐葉土になっていく過程でCO2を発生させているとも聞いたことがある。そして腐葉土が養分となって新たな広葉樹が生育して行けば、そこでは今度はCO2を吸収できる可能性が出てくる。この記事で書かれているのはそうした腐葉土のストックのことは書かれているが、そうした腐葉土を巡るCO2の収支がどのような計算に基づいて行われているのかがよくわからない。

結局のところ、このレポート自体を読んでみないとなんとも言えないのだけれど、まだ農業森林省のHPには第2巻は掲載されておらず、ダウンロードができないので現時点ではここまでしか書けない。

さて、農業森林省は同様の調査を5年おきに実施したいとの意向を持っているようだが、一方でこの記事ではこれまでのインベントリー調査が外国からの援助で行われてきた実態にも言及されている。また、記事にある森林官の発言の仕方も微妙で、どうやら調査自体が援助資金で雇われた外国人専門家の主導で行われた可能性がある。5年も経てば人も入れ替わるし、同じ人がいても覚えているのかどうかはわからない。森林局はあくまでも森林資源管理をやるところで調査研究をやるところではないから、調査やシミュレーションを主導的に行う部署では必ずしもない。5年経ったらまたどこかの援助機関に頼るのだろうか。こういうことを行える国内のシンクタンクを巻き込んで、取組みにある程度の持続可能性を持たせる仕掛けが必要なのではないかとも感じる記事の内容だった。

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