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2017年国勢調査の結果、ようやく公表 [ブータン]

ブータンの人口は73万5,553人
Bhutan's population is 735,553
Kuensel、2018年6月26日、Tshering Palden記者
*理由はわかりませんが、HPにURLが掲載されておりません。

2018-6-26 BBS.jpg

【ポイント】
6月25日、昨年5月末に実施された国勢調査(Population and Housing Census of Bhutan、PHCB)の結果が、トブゲイ首相により公表された。これによると、ブータンの総人口は2017年5月時点で73万5553人で、前回調査時から10万571人増加した。総人口のうち、68万1720人がブータン人だという。

人口関連指標では、合計特殊出生率(TFR)は前回(2005年)の2.5から1.7に低下。人口置換水準(2.1)を割り込んでおり、首相も懸念材料として認めた。一方で識字率は59.5%から71.4%に上昇。農村人口は62.2%。出生児平均余命は70.2年と、ブータン史上初めて、寿命が70歳を上回った(前回は66.3年)。女性の方が71.7年と長寿で、男性は68.8歳。こうして長寿化が進むことで、従属人口指数も低下が見られ、前回60.6%から、今回は47%にまで低下。

2017年の失業率は2.4%。うち都市部では4.6%で農村部では1.3%だった。若年失業率は全国平均で10.6%と高いが、都市部はさらに高くて16.7%を記録(農村部は6.7%)。

ブータンで生まれた人口の48.7%は、自分が生まれたゲオッグ(郡)から他所に転出、39.8%は生まれたゾンカク(県)からも他県へと転出していることがわかった。また、約22%は農村から都市部へと流入。人口社会増が最も多かったのはティンプー県、ティンプー市、プンツォリン市で、逆に社会減げ顕著だったのはシェムガン県、ルンツィ県、タシガン県だった。

世帯数は前回12万6115世帯から29.2%増加、16万3001世帯となった。同時に小家族化が進んでおり、1世帯当たりの平均家族数は4.6人から3.9人に減少。

家庭内照明に電気を利用している世帯は、前回57.1%から96.6%にまで上昇。飲料水へのアクセスも、84.5%から98.6%に改善したが、一方で18%の世帯が、飲料水には信頼が置けないとも回答。トイレ普及率は74.8%だった。自宅から30分以内で車両通行可能な道路に出られる世帯の割合は、前回63%から92%へと改善、道路網整備が進んだことも反映されている。

2017年PHCBは全国レポートの他に、全20県の県別レポートも整備、いずれも国立統計局(NSB)ウェブサイトからダウンロード可能。

◇◇◇◇

遅ればせながら、本日は6月25日にようやく公表された国勢調査の結果をご紹介する。公表された当日のクエンセルは、トップが国王と河野外務大臣のツーショット写真で、この日は他に王立ブータン大学(RUB)傘下のカレッジの合同卒業式(convocation)も開催されていて国王がカレッジを卒業する大学生に向けてメッセージを発せられる重要行事も開催された。国王のメッセージが全文掲載されるのは、過去2年の経験では、①12月17日の建国記念日の演説、②6月開催のRUBカレッジ合同卒業式での演説、そして、③国会開会式ないし閉会式での演説(但し、毎回演説されるわけではない)、の3回しかない。そんな重要なイベントがあった翌26日のクエンセルのトップは、国王演説ではなく、国勢調査の結果概要が中心となっていた。

要約からお察しの通り、また僕たちの予想の通りで、ブータンも少子高齢化、農村の衰退、小家族化に向かっていて、ブータンに限らずどこの国でも強みだと見られてきた家族のつながり、コミュニティのつながりが徐々に希薄になっていく傾向が観察されている。これらの指標は今後のブータン社会の行方を考える上でのベースラインとなっていくと思うので、この記事をブログで取り上げた。

さて、話は戻って国勢調査結果公表の当日のクエンセルの記事であるが、地方電化率に関して、別の記事が掲載されていた。

◇◇◇◇

全世帯の99.97%が電気にアクセス
99.97 percent of households connected with electricity
Kuensel、2018年6月25日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/99-97-percent-of-households-connected-with-electricity/

【ポイント】
ドルックホールディングス(DHI)の年次プレスカンファレンスの席上で、ブータン・パワー(BPC)のCEOが語ったところによると、ブータン全世帯のうち電力供給へのアクセスを有する世帯は、第11次五カ年計画終了時に99.97%に到達、前期五カ年計画終了時の94%から大きく前進したという。残る0.03%はガサ県北部のルナナに住む300世帯。

CEOは、BPCが行った予備調査ではこのルナナへの電力供給は可能だと結論付けたが、問題はそのための資金確保で、同社は韓国やネパールの企業に声をかけているが、DHI傘下の企業も含め、民間企業がわずか1500人のために巨額の設備投資を行うのは難しい。ルナナまで電力供給するには、送電網整備に必要な鉄塔や変圧器を遠隔地まで輸送せねばならない。道路網が整備されたプナカまではなんとかなるが、そこから先の輸送が課題。空輸も選択肢の1つだが、ブータンが所有するヘリでの輸送は困難で、より大型の輸送ヘリを導入するには、さらにそれだけでも費用増加の要因となる。

CEOは、99.97%は100%に限りなく近いが、ルナナをなんとかしないと、安心できないともコメント。

同じく高地にあるソーやリンシーの場合も同様の課題に直面。当初は小水力発電プラントの設置が検討されたが、施工業者の総費用見積もりが利用可能な予算規模を大きく上回ったために断念。パロからの送電線延伸での対応を余儀なくされた。わずか202世帯に電力供給するために敷設された送電線は87.9kmに及び、総費用は2億100万ニュルタム。これをオーストリア開発庁(ADA)が資金支援した。

◇◇◇◇

BPCのCEOが99.97%と言っているのと、国勢調査で96.6%と言っているのでは若干の数字の開きがあるようだが、後者は2017年5月末の実数調査の結果だろうし、前者は単純にルナナを除く世帯数をブータン全世帯数で割ってはじいた理論値なのだろう。

同じ地方電化率が2日にわたって全国紙の1面の賑わせたことでかえって目立ったので、今回はこの2つの記事をドッキングさせて紹介したわけだが、この「ラストマイル」は結構大きな課題であるように思える。

僕が耳にしていたのは、確かにこの海抜5100メートルのルナナをなんとかせねばというのが次のブータン政府の第12次五カ年計画の課題の1つで、そのためにルナナは小水力でやるという話だった。そして、小水力プラントを建設するのに韓国企業が関心を示し、企業関係者がルナナ入りしたらしいという話であった。だから、送電線の延伸によるグリッド接続の話とはちょっと違うのだが、記事がこうやって出ている以上、僕の仄聞した内容の方が間違いである可能性もあるかなと思う。

いずれにしてもこれだけの遠隔地で、しかも裨益人口がこれだけ小さい場合、巨額の設備投資を行うにはそれなりの高いハードルがあるように思う。確かにソーやリンシーはオーストリアが援助したかもしれない。それはルナナに比べても難易度が低かったからだろうと思うので、最後に残ったルナナのハードルはもっと高いに違いない。

機会があれば、国勢調査のガサ県版でもよく読んで、実際のルナナの世帯状況をもうちょっと調べてみたいと思う。ルナナ支援は、電化だけではないいろいろな課題が絡み合ってくる。電力アクセスだけを切り出して考えていてもいいソリューションは見いだせない気がする。

◇◇◇◇

なお、国勢調査が公表されて以降、ここからの派生記事がクエンセルの紙面を連日賑わせているのでヘッドラインのみ紹介しておく。

【PHCB2017関連記事まとめ】
トイレの衛生状態が悪い世帯はティンプー、サムチ、チュカに多い
Homes with poor sanitation facilities highest in Thimphu, Samtse and Chukha
Kuensel、2018年6月27日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/homes-with-poor-sanitation-facilities-highest-in-thimphu-samtse-and-chukha/

HIV罹患者、新たに27人を発見
27 new HIV+ cases detected
Kuensel、2018年6月28日、Dechen Tshomo記者
http://www.kuenselonline.com/27-new-hiv-cases-detected/

29,973世帯が安全な水供給を受けていない
29,973 households lack reliable water supply in the country
Kuensel、2018年7月2日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/29973-households-lack-reliable-water-supply-in-the-country/

ティンプーの失業率が最も高い
Thimphu has highest unemployment rate
Kuensel、2018年7月3日、Rinchen Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/thimphu-has-highest-unemployment-rate/

【数字で見るブータン(Bhutan in Numbers)まとめ】
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