EVも、急速充電器も増やせ [ブータン]
急速充電ステーション、新たに23カ所設置へ
23 electric car charging stations to be set up
Kuensel、2018年5月26日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/23-electric-car-charing-stations-to-be-set-up/
【ポイント】
情報通信省によると、同省は地球環境ファシリティ(GEF)の支援を受けて、「持続可能な低炭素排出都市交通システムプロジェクト」を実施予定。期間は3年。GEFの支援は、電気自動車(EV)購入者に対する20%の補助金供与に充てられる。対象EVは300台の予定。
それに先立つ環境整備のために、政府は23基の急速充電器を新たに設置する。うち12基はティンプー市内各地に、残る11基は、プンツォリン、プナカ、パロ、ワンデュに設置される。
EV購入を希望するタクシー所有者は、購入代金の20%分の補助金に加え、50%の銀行融資が受けられる。但し、タクシー運転手の中には、現在所有するタクシーのローンが完済していない中でのEVへの買い替えには慎重な意見も。
しかし、タクシー運転手の関心は高い。長距離移動にタクシーを利用する乗客は1回1000ニュルタム以上を払ってくれるので、試算すると5年間で120万ニュルタムの収入が得られる。急速充電ステーションが増えれば、EVの利用価値は高まるかもと見ている。
GEFの承認はこれから。
噂には聞いていたGEFのファンディング、こういうふうに使われるのねというのが具体的な数字とともに明らかになった記事である。日本の企業さん、EV300台の商機です。でも、この直後、三菱自動車の技能実習不正の疑いで、監督機関「外国人技能実習機構」が岡崎製作所の実地検査を始めたことがブータンでも報じられた("Mitsubishi Motors broke rules on foreign trainees", Kuensel, 5月28日)。タイミング悪いな。
この国でEVの話をすると、EV普及のボトルネックになっているのは急速充電ステーションの数だと言われてしまう。現在はティンプー、パロ、それにその中間のチュゾムも併せて合計4基しかないのが問題なのだと言われる。充電速度もボトルネックで、もっと速くならないといけないのかもしれない。急速充電ステーション増設という政府の方針自体は従って、必要なことだと思う。クエンセルの記事の書かれ方は微妙だが、急速充電ステーションの増設もGEFのファンディングだと聞いている。
さて、この記事が報じられた翌週、クエンセルは社説でこの話題を取り上げている。
政策に矛盾があると…
When policies contradict
Kuensel、2018年5月29日
http://www.kuenselonline.com/when-policies-contradict/
この社説の前半部分は、ブータンが輸入した車の台数と、それを問題視している割には自動車ディーラーがティンプー時計塔広場で大々的に繰り広げる商談会、銀行融資等、ガソリン車、ディーゼル車の規制と購入促進で相反する政策が存在することを指摘している。
その上で話はEVに飛ぶ。現在ブータン国内を走っているEVは94台、うち27台は政府所有で、残りは民間組織や個人が所有する。政府のEV普及促進の意図はいいにせよ、一方で全国205の郡すべてにマヒンドラ・ボレロ(4WD)を配布するような政策も一方ではやっていると指摘。
さらに、EV普及をタクシー業者をターゲットにして行うだけでは一般市民の信頼を勝ち取るのは難しく、道路の渋滞解消への寄与も限定されると指摘している。ここで急速充電ステーションを4基設置した際に行われたパイロット事業のレポートに言及し、「制度環境の未整備(Lack of preparedness and awareness among those tasked with the works)」がその際にも指摘されていたではないかと論じている。ちなみにこのパイロット事業はJICAが行ったものである。
そのパイロット事業のレポートを踏まえて、どこまで政府は考えてきたのだろうか。自動車整備を扱う職業訓練校はティンプーにもあるが、EVの整備のためのコースはない。電気系統の知識を自動車整備士に習得させるようなカリキュラムがそもそもないのである。この点を政府関係者に指摘すると、主に2つの回答が来る。1つは、そもそもEVは内燃機関車に比べたらメンテナンスが要らないという意見。もう1つは、だからだと思うが、整備はディーラーに任せればよいという意見。でも、万が一EVタクシーがプナカやワンデュを走っていて不具合が生じた場合、どうするつもりなのだろうか。
それに、EVは少ないモジュールで構成されているので、モジュールごと取り換えれば車自体は長く使用できるし、特定モジュールに特化すれば、地場の産業の育成にもつながる可能性がある筈だ。だから、僕はブータン国内の工学系のカレッジにはEVの研究開発の機能を持たせてもいいのではないかと思っているが、そういう動きもまだない。あくまで完成車の輸入を前提とした政策のみが論じられている。
新技術を導入、普及させたいなら、その技術を知る人材も併せて育てないといけないですよね。
23 electric car charging stations to be set up
Kuensel、2018年5月26日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/23-electric-car-charing-stations-to-be-set-up/
【ポイント】
情報通信省によると、同省は地球環境ファシリティ(GEF)の支援を受けて、「持続可能な低炭素排出都市交通システムプロジェクト」を実施予定。期間は3年。GEFの支援は、電気自動車(EV)購入者に対する20%の補助金供与に充てられる。対象EVは300台の予定。
それに先立つ環境整備のために、政府は23基の急速充電器を新たに設置する。うち12基はティンプー市内各地に、残る11基は、プンツォリン、プナカ、パロ、ワンデュに設置される。
EV購入を希望するタクシー所有者は、購入代金の20%分の補助金に加え、50%の銀行融資が受けられる。但し、タクシー運転手の中には、現在所有するタクシーのローンが完済していない中でのEVへの買い替えには慎重な意見も。
しかし、タクシー運転手の関心は高い。長距離移動にタクシーを利用する乗客は1回1000ニュルタム以上を払ってくれるので、試算すると5年間で120万ニュルタムの収入が得られる。急速充電ステーションが増えれば、EVの利用価値は高まるかもと見ている。
GEFの承認はこれから。
◇◇◇◇
噂には聞いていたGEFのファンディング、こういうふうに使われるのねというのが具体的な数字とともに明らかになった記事である。日本の企業さん、EV300台の商機です。でも、この直後、三菱自動車の技能実習不正の疑いで、監督機関「外国人技能実習機構」が岡崎製作所の実地検査を始めたことがブータンでも報じられた("Mitsubishi Motors broke rules on foreign trainees", Kuensel, 5月28日)。タイミング悪いな。
この国でEVの話をすると、EV普及のボトルネックになっているのは急速充電ステーションの数だと言われてしまう。現在はティンプー、パロ、それにその中間のチュゾムも併せて合計4基しかないのが問題なのだと言われる。充電速度もボトルネックで、もっと速くならないといけないのかもしれない。急速充電ステーション増設という政府の方針自体は従って、必要なことだと思う。クエンセルの記事の書かれ方は微妙だが、急速充電ステーションの増設もGEFのファンディングだと聞いている。
さて、この記事が報じられた翌週、クエンセルは社説でこの話題を取り上げている。
◇◇◇◇
政策に矛盾があると…
When policies contradict
Kuensel、2018年5月29日
http://www.kuenselonline.com/when-policies-contradict/
この社説の前半部分は、ブータンが輸入した車の台数と、それを問題視している割には自動車ディーラーがティンプー時計塔広場で大々的に繰り広げる商談会、銀行融資等、ガソリン車、ディーゼル車の規制と購入促進で相反する政策が存在することを指摘している。
その上で話はEVに飛ぶ。現在ブータン国内を走っているEVは94台、うち27台は政府所有で、残りは民間組織や個人が所有する。政府のEV普及促進の意図はいいにせよ、一方で全国205の郡すべてにマヒンドラ・ボレロ(4WD)を配布するような政策も一方ではやっていると指摘。
さらに、EV普及をタクシー業者をターゲットにして行うだけでは一般市民の信頼を勝ち取るのは難しく、道路の渋滞解消への寄与も限定されると指摘している。ここで急速充電ステーションを4基設置した際に行われたパイロット事業のレポートに言及し、「制度環境の未整備(Lack of preparedness and awareness among those tasked with the works)」がその際にも指摘されていたではないかと論じている。ちなみにこのパイロット事業はJICAが行ったものである。
そのパイロット事業のレポートを踏まえて、どこまで政府は考えてきたのだろうか。自動車整備を扱う職業訓練校はティンプーにもあるが、EVの整備のためのコースはない。電気系統の知識を自動車整備士に習得させるようなカリキュラムがそもそもないのである。この点を政府関係者に指摘すると、主に2つの回答が来る。1つは、そもそもEVは内燃機関車に比べたらメンテナンスが要らないという意見。もう1つは、だからだと思うが、整備はディーラーに任せればよいという意見。でも、万が一EVタクシーがプナカやワンデュを走っていて不具合が生じた場合、どうするつもりなのだろうか。
それに、EVは少ないモジュールで構成されているので、モジュールごと取り換えれば車自体は長く使用できるし、特定モジュールに特化すれば、地場の産業の育成にもつながる可能性がある筈だ。だから、僕はブータン国内の工学系のカレッジにはEVの研究開発の機能を持たせてもいいのではないかと思っているが、そういう動きもまだない。あくまで完成車の輸入を前提とした政策のみが論じられている。
新技術を導入、普及させたいなら、その技術を知る人材も併せて育てないといけないですよね。
コメント 0