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『メイカーズ』 [読書日記]

Makers

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  • 作者: Cory Doctorow
  • 出版社/メーカー: HarperCollins
  • 発売日: 2010/07/08
  • メディア: ペーパーバック
内容紹介
我々の未来はどうなるのか?『リトル・ブラザー』を世に放った作家が新たに送る経済の終焉に関するオリジナル小説。ペリーとレスターはあらゆるものを発明する。トーストを作る貝殻ロボット、車を運転するブギウギ・エルモ人形。彼らはまったく新しい経済システムを創り出す。 「ニューワーク」は、テクノロジー時代のニューディールだ。そこに、裸足の銀行家たちは、ペリーとレスターのようなハイテク共同創業者の間を往来し、少額の投資を始める。彼らはともに国を変え、ジャーナリストのスザンヌはそれを文章にして発信を試みる。しかし、新しい経済システムは全く新しい信頼の体系を必要とし、そこには反対者もいる。ニューワークの破綻は、ドットコムの爆弾をさく裂させ、まもなくペリーとレスターは資金不足になり、失業する。落ちぶれても彼らはそこに留まらず、自分たちが最もうまくやれることに回帰する。そこに現れたのが、ディズニーのエグゼクティブ。再び急上昇する彼らの人気に嫉妬し、3-DプリンタがAK-47の「印刷」に使用されていることを警察に通報し、事態は再び悪化する。彼らの運命は?

先月、鳥飼玖美子先生の著書『本物の英語力』を紹介した際、それをきっかけに、舌ならしのために手元にあった英語の小説の音読を始めたとお知らせした。そこで取り上げた小説が、コリイ・ドクトロウの作品で、訳本が出ている『リトル・ブラザー』を2015年に読んだ際、訳本が出ればいずれ読みたいと書いていた『メイカーズ』だった。但し、訳本は未だ出ておらず、原書をキンドルで読んだものだ。

長かった。3週間かかった。音読の素材にしていたのだから、黙読に比べても読むスピードは遅い。それにこの本はペーパーバックだと600頁近くもある大作であり、キンドルだと「%」で示されるページ進行が、非常に遅くて大変だった。キンドルで6頁ぐらいフリップしないと1%にならないのだ。だから、最初の頃は1日でも1%進めるのが関の山だった。二度の週末に頑張ってそれぞれ30~40%読み進めるような力技も駆使して(お陰で1日中読書していた日も)、なんとか最後まで読み切った。

そうして、少なくともその間に出てきた単語のいくつかは、自分が同時進行で執筆に取り組んでいた論文の中で使ってみることにした。ちょうど同じような文脈があったからだが、こうやってアウトプットの機会を組み合わせながらインプットをしていったら、語彙は増えるなと実感したところでもある。

それにしても、長かったお陰で、前半部分のストーリーが霞んでしまった感がある。全体的にはモノづくりの社会運動の進展の話だが、後半は製作されるモノから著作権を巡る係争や銃の3Dプリンティングの問題、企業の買収の話に移り、展開は面白かったけどモノづくりそのものの話からは遠ざかってしまった感じがする。これらの課題は今やモノづくりの世界では当たり前のイシューなので、そういうものの復習にはなった。そして、これが2010年頃に書かれているというのにはちょっと驚きはある。

作品の中でも最も面白かったのは、マイアミのスラム街で、地主が更地化するためにわざと放火して火事が起きるが、その後住民が工作機械を使って瓦礫を材料にして住居を再加工して住み始める(地主は捕まる)という展開。災害が発生した際には瓦礫の処分は大きな問題となるが、これを材料として物を作るという発想が、この作品の中からも垣間見える。実際に、こういう活動をやっている国際NGOがあり、ハイチのハリケーン災害や、2015年のネパール大地震からの復興に、デジタル工作機械を持ち込んで再建につなげようと取り組んでいたと聞く。

僕の読解力が不足していて、「ニューワーク」がどうしてそんなに魅力があるのか(ファブラボやメイカースペースのようなイメージなのかもしれないが)、その後に出てきて、ディズニーの遊園地をパクったとして訴えられるもとになった「ライド」っていうのが何を指すのか、よくわからないところもあったが、とにかく読み切ったことは自信になった。

それにしてもコリイ・ドクトロウ、ディズニーとマジック・キングダムを舞台にするのが好きだな。この作品、ドラマ化でもしてくれたらもっとわかりやすいのかもしれないが。

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