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ブータンビジネスの難しさ [ブータン]

酪農家組合、ナノファイナンスを開始
Dairy cooperative starts nano-financing system
Kuensel、2018年2月16日、Younten Tshedup記者(タシガン)
http://www.kuenselonline.com/dairy-cooperative-starts-nano-financing-system/

2018-2-16 Kuensel.jpg

【ポイント】
タシガン県チェナリの幸福インターナショナルの乳製品加工工場に牛乳供給を行わないという酪農家組合の決定は元が取れつつある。同組合は、組合員から構成されるナノファイナンス(貸付組合)の仕組みを昨年11月11日に導入。最大2万ニュルタムの無担保貸付を会員に対して行う金融機関として発足させた。貸付金利は年10%、1年返済を想定。将来的には預金受入も行い、最低5000ニュルタム、最大5万ニュルタムまでの預金を受け入れる計画。

これまでに14人の組合員が借入れを行い、ジャガイモ栽培用の肥料の購入等に充てられた。借入手続きは銀行からの借入れよりもシンプルで、借入条件もやさしいという。教育を受けておらず銀行での手続きに不慣れな農家にとっては好評。現在、貸付組合の貸付原資は、牛乳の売上金と会員からの月額100ニュルタムの会費によって積み立てた210万ニュルタムが充てられている。

この酪農家組合は、2005年に22人の会員により発足し、2011年に組合登録された。現在の組合員数は約50世帯で、飼育乳牛数は200頭に上る。夏場は日産270リットル、冬場は200リットルの牛乳を生産。

◇◇◇◇

「ナノファイナンス」という言葉、不勉強で知らなかったのだが、地域限定の小規模金融のことをこう呼ぶらしい。聞きなれない言葉だったので思わず記事に見入ってしまったが、確かにそういうことだ。

ただ、この記事の第一段落を読んで、おやっと思った。「幸福インターナショナルに牛乳を卸さない」というところが気になった。「幸福インターナショナル」といったら、日本の新日本科学が出資して設立された乳製品加工企業で、「幸福チーズ」というブランドでゴーダチーズを生産し、日本にも輸出している。工場立地がタシガンなので、ティンプーではなかなか手に入らないらしいが、タシガンならインドのグワハティ経由で出荷が可能なので、日本のマーケットでもご覧になられた方はいらっしゃるのではないかと思う。

そうした工場に牛乳を卸さないといったら穏やかな話ではない。何があったのかがわからないので、クエンセルの記事をもう少し遡って調べてみたところ、昨年末に幸福インターナショナル絡みで次のような記事があった。

◇◇◇◇

輸送が乳製品加工場への牛乳供給の妨げに
Transportation hampers milk supply to dairy plant
Kuensel、2017年12月28日、Younten Tshedup記者(タシガン)
http://www.kuenselonline.com/transportation-hampers-milk-supply-to-dairy-plant/

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【ポイント】
タシガン県の牛乳生産は2016年で6,710トン、国内第1位の生産量を誇るが、チェナリの乳製品加工工場の稼働率は30%にも満たない。幸福インターナショナル(KIL)の工場は、1日4000リットルを加工できる規模にあるが、現在、1日1200リットルしか牛乳を調達できていない。これは、県内22の酪農家グループのうち、KILの工場に牛乳を卸せているのが9グループしかいないからだ。

KILのサンジョク・ビシュワカルマ工場長によると、同社の牛乳集荷場までの農家の牛乳輸送に課題を抱えているのだという。同社の冷蔵施設が村から離れているので、農家が輸送に消極的なのだ。同社の牛乳タンカーは1台だけで、牛乳調達のために各村を個別に巡回するのは1日ではとてもできない。同社は近々2000リットル容量の新型タンカーを導入予定で、これにより集荷能力と牛乳の質の工場を図ることが可能だと見込んでいる。

この乳製品加工工場は、2015年、ドルックホールディングス(DHI)と日本の新日本科学(SNBL)の合弁で設立。当初は新日本科学側が70%出資し、上質の牛乳だけを調達して、国内市場及び日本市場向けにゴーダチーズを生産するためにKILは設立されていた。しかし、こうした企業の姿勢が、同社に牛乳供給するのを妨げる結果となった。

このため、2017年3月、DHIが出資比率を80%に引き上げた。KILのウゲン・デンドゥップCEOによると、工場の主力産品はゴーダチーズであり、そのためにはバクテリア繁殖を最低限に抑えた高品質の牛乳が必要だという。しかし、今のところは全てのタイプの牛乳を仕入れている。同CEOは、ブータンは年間30億ニュルタム相当の乳製品を輸入しているが、もし同社が事業計画を効果的に実行できれば、乳製品輸入を最小限に抑え込むことができるという。

昨年、同社は3000万ニュルタムの損失を計上。今期は損失幅を50%縮小したいという。CEOによると、現在同社は既存産品の標準化と商品多角化の方策を検討中で、これらが軌道に乗れば、損失幅の圧縮は可能だと見込んでいる。飲むヨーグルトや各種バター、チーズ等の新製品の生産を既に開始している。廃棄物ゼロの企業方針に基づき、仕入れた牛乳の有効活用が図られているという。新製品の感触も良好だ。

KILは、牛乳の仕入れに1カ月120~150万ニュルタムを支出。毎日3万ニュルタムを地域経済に落としている。商業活動というよりも、社会起業家に近い位置付けだと自負する。206世帯がKILに牛乳を供給する。モンガルやタシヤンツェといった、近隣県からも牛乳を調達する計画もある。既にモンガル県チャスカル郡、ガツァン郡から1700リットルを調達することで合意済みとのこと。

◇◇◇◇

何があったのかはわかりませんが、幸福インターナショナルへの出資比率、日本側が減っていたようで。そりゃ日本に出すならある程度の品質確保が必要なんだろうと思うが、この国ではあるものを使えばいいじゃないかと言われてしまうことが多くて、「品質」というものへの意識の低さは気になるところであった。DHIはそもそも社会起業指向の強い企業の持株会社なので、そりゃ幸福インターナショナルがそういう方向に向かうのはわかる気がする。国内市場向けにはそれでいいんでしょう。

ただ、繰り返しになるけど、やっぱり日本の消費者にものを売りたいのなら、どういうものが好まれるのか、日本の消費者の趣向をちゃんと学んでほしいと思う。ブータンの農産品は農薬を使ってないからオーガニックだ、それなのになんで買わないのか(なんで売れないのか)、なんて言われることも多いのだが、そういうなら外国に売ることは考えないで欲しいものだ。以前、パロ米はジャポニカなんだから日本には輸出できないのかと政府の方に真面目に訊かれたことがあるが、精米技術がひどくて小石が含まれているような米を、買えと言われてもなぁと困惑した。うちのオヤジの方がずっとうまいお米作ってるよと申し上げた。

「プロダクトアウト」的発想、そろそろ見直しませんか?

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