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下水処理施設の開発競争 [ブータン]

バベサの新下水処理施設、来年完成へ
New treatment plant in Babesa to complete next year
Kuensel、2018年2月14日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/new-treatment-plant-in-babesa-to-complete-next-year/

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【ポイント】
ティンプー南部、バベサにある汚水安定化池は、来年5月までには、より処理容量の大きい回分式活性汚泥法による処理施設によって代替される。現在の安定化池の処理能力は1日175万リットル。安定化池に隣接して建設中の新処理施設の容量は1日1200万リットルとなる。現在の安定化池は人口1万6千人対応だが、新処理施設は人口10万人にも対応できる。

アジア開発銀行(ADB)の支援で進められている新処理施設建設プロジェクトの市担当者によると、旧施設は既に処理能力不足に陥り、悪臭に対する苦情が近隣住民から寄せられてきた。新施設はこれらの問題を解決可能だという。機械による新処理施設に必要な用地は3エーカーだが、これを安定化池にした場合は14エーカーの用地を必要とする。安定化池に比べてスペースが節約できるという。また、新処理施設には臭気除去装置も据え付けられる。

ADBは総費用の85%にあたる1400万ドルを拠出、残る15%は財務省が予算配分。全体の進捗状況は10%程度、回分式活性汚泥処理タンクの建設については15%程度の進捗。処理施設はティンプー川の河岸に隣接するため、雨期の工事に支障をきたす恐れがある。そのため乾期の現在、作業は急ピッチで進められているが、外国人労働者が冬場の屋外作業を忌避することから、作業は遅れ気味。

1990年代初頭から使用されてきた旧施設は、新施設の完成とともに撤去される見込み。

◇◇◇◇

汚水管理に向けた新たなパイロット事業
New sewerage system piloted to manage wastewater
Kuensel、2018年2月8日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/moaf-revises-two-apa-targets/

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【ポイント】
土壌浄化システムと呼ばれる小規模下水システムの実証事業がヘジョ地区で進められている。このシステムは、単に汚水処理を行うだけでなく、レクリエーション目的でも利用が可能だという。

ヘジョ地区南部の86世帯、700人超の住民を対象としたこの施設は、悪臭などを発生させず、運営費用も安価で、しかも場所を取らないという。実証施設の建設は、2016年12月に行われた、公共事業省技術サービス局と日本の毛管浄化システム株式会社、それにJICAの三者による覚書署名に基づき、昨年から始められた。JICAはこの実証事業に1800万ニュルタムを拠出。処理漕は6漕から成り、1日100㎥の汚水処理が可能だという。

現在は処理施設の建設が進められているが、このあと導管ネットワークの敷設作業を行い、システムの完成は今年4月から6月までの間が見込まれている。

2月7日に市内で開かれた普及セミナーには、公共事業省事務次官やティンプー市長、日本側からも在ニューデリー日本大使館曽根経済公使が出席。土壌が本来持つ自然の処理能力を生かした代替技術として期待が表明された。発表者側からも、同施設が悪臭を発生しないことから市街地の中であっても設置可能であることが強調された。

ヘジョ地区の事業の技術アドバイザーであるプブ・テンジン氏によると、この土壌浄化法の唯一の弱点は、汚水処理施設を被覆する土壌の上を頻繁に歩いたりしてはならないことにあるという。ある程度空気が入りやすい柔らかさで土壌を保持する必要があるからだという。

◇◇◇◇

たまたま、ティンプーの下水処理施設の話題が続けざまにクエンセルに載ったことから、まとめてご紹介することにした。書いた記者は同じだから、時系列で言うと、先ず2月7日に毛管浄化システムが市内で開催した技術普及セミナーを取材して、「そういえばバベサはどうなっているんだろうか」と疑問を持ち、バベサの方も取材したのだろう。

2つの記事を見比べると、規模感がまるで違う。10万人規模と700人規模の施設を単純比較することは難しいが、土壌浄化法に基づく小規模施設の方は、臭気を土壌本来の力で処理してしまい、特別な装置を使わないで済むし、用途は限定されるとはいえ、下水処理施設の上をピクニックグランドのような形で有効利用できるという点でもアドバンテージがありそうだ。こういう、複数の技術を1つの都市の中で比較できるというのは面白い。

僕も2月7日のセミナーに出るために、水処理技術については事前ににわか勉強もした。沈殿槽と曝気槽を組み合わせた施設というところは水処理技術の入門的解説書にはたいてい書かれていることなので、土壌浄化法のどこがどう違うのか、よくわからなかった。セミナーの場でも、この技術の説明をして下さった毛管浄化システムの方の話を聴いても、よくわからなかった。

ようやく腑に落ちたのは、プブ・テンジン氏の解説があったお陰だ。この施設に被せる土の部分が土壌浄化法のミソなのだとようやく理解できた。空気の通りを良くするためには、この土を踏み固めてはいけない、だから、たまに入れるピクニックグランドのような形であれば利用できるが、サッカー場としては使っちゃダメなのだ。多分、アーチェリーグランドとしては使ってもいいかもしれないが。さらに、僕はこの施設を被覆する土も、施設を建設する際に掘った残土をそのまま被せればいいのだろうと思っていたけれど、被覆にはそれに適したフワフワの土壌を探してきて使う必要があるらしい。これも、プブ・テンジン氏の補足説明があって初めて知った。

もう1つわからなかったのは、いずれにしても出てくる汚泥をどう利活用したらいいのかという点である。バベサの安定化池でも汚泥は発生しているだろうから、彼らはこれをどう処理しているのかちょっと疑問が湧いた。汚泥の活用方法については、毛管浄化システムの方の説明でも、選択肢の提示はあっても、実際その点で現在何が具体的に検討されているのかには言及されなかったし、日本の自治体でこの技術を導入して出てきた汚泥をどう利活用しているのかまでお話下さった方はいらっしゃらなかった。

当然、汚水処理施設の上に養分タップリの汚泥をかぶせるわけにはいかないのだろうから、別の場所に持って行く必要があるわけだ。日本だったら、「下水道ビストロ」なんて、汚泥を利用して野菜や果物の栽培をやって、収穫した食材を使って料理を出すなんて取組みもあるみたいだが。バベサの処理場の汚泥をどう処理しているのかはいずれ調べてみることにして、僕のアイデアをここでちょっと開陳しておくと、この汚泥や生ごみから作るコンポスト等を用いて、そういう資源循環を売りにしたブルーベリー農園を営み、都市住民にブルーベリー狩りに来てもらうってのはどうだろうかと考える。ブータンにはブルーベリーはないので、生育するかどうかは要検討だが。

一昨年ぐらいだったか、千葉県木更津市の関係者の方々がブータンに来られて、ブルーベリー栽培を普及させたいとお話されたとかされなかったとか聞いたことがあるが、それとこの毛管浄化システムが普及させたいと考えられている汚水処理施設で出てくる汚泥を組み合わせるようなコラボが実現したら、近郊農業の面白そうなパイロットモデルになりそうだし、環境教育にも使える。

土壌浄化法の普及セミナーを傍聴していて、そんな妄想を抱いたので、ここに記しておく。

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