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『ビジネス・フォー・パンクス』 [仕事の小ネタ]

ビジネス・フォー・パンクス

ビジネス・フォー・パンクス

  • 作者: ジェームズ・ワット
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2016/09/01
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
2007年に300万円で始めたクラフトビールの会社が、8年足らずで売上70億円を超える急成長を遂げる。熱狂的なファンを世界中でどうやって獲得したのか?ブリュードッグの奇跡のマーケティングを創業者本人が語る!

11月上旬、GNH国際会議で日本からお越しになられた方に、「面白いよ」といって薦められたのがこの本である。著者はスコットランドでクラフトビールの製造を始め、今では世界40カ国でクラフトビールのバーを展開している「ブリュードッグ」の創業者。タイトルからは想像できないが、起業し、事業拡大していく過程での、著者の思想や手法が詰まっている。

11月はGNH国際会議から始まり、グローバル企業家週間、そしてティンプーでのスタートアップ・ウィークエンドと、起業について考えるイベントが目白押しだった。個人的にも月末にはブータン商工会議所の方にお目にかかって「ブータンでのビジネスは特別であなたたちにはわからないだろうが」的な言われ方をしたばかりだったので(その割には、やろうとしていることは外国からの投資誘致だったりして、少しは外国のビジネスのやり方に歩み寄ろうと考えた方がいいんじゃないかとも思うのだが)、この本は、そういう、起業というものをブータン人的思考の枠組みの中でしか捉えていない人々に、原書で紹介したいとぐらいだ。

とても数えきれないぐらいにマーカーで線を引きまくった。全部を紹介するのは無理なので、特にブータン人の起業の捉え方との違いが鮮明だと思う箇所だけ抜粋してみる。

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誰かと一緒に起業すれば、より早く、より巧みに、より鋭くなれる。自分以外の人間に責任を持って考えを伝えながら事業を続けることは、勢いを保つための秘訣だ。

起業が成功する可能性はただでさえ低いが、ひとりでやった場合はそれが段違いに低い

起業の失敗が多い理由はとにかく単純だ。せっかく稼いだ金を、実際に必要のないものにまであれこれと使ってしまうのがいけない。起業するなら、すべての資金を最大限に生かす方法を身につけ、自分たちより経営基盤の固まった既存企業の10倍、手持ちのキャッシュから効果を引き出す必要がある。

立ち上げ期は実際のところ厳しいもので、何度も他人に拒絶され、何度も苦痛を味わい、何度も挫折するだろう。ほとんどの凡人が、この時期にさっさと降参してあきらめる。手厳しく拒絶されることや、絶えず批判されること、資金繰りで極度のプレッシャーを味わうこと、そして山ほどきつい仕事をすることを覚悟しなければならない。この時期はすべてを懸けては足りても、ゆっくり後退しているように感じるものだ。障害、問題、課題、脅威がありとあらゆる方向から襲いかかってくる。

魔法の公式もない。どんなサクセスストーリーも、10年がかりで生まれるもので、「一夜にして大成功!」などという話はあり得ない。何かを成し遂げたければ、幻想にとらわれず、とにかく全力を尽くすしかない。大事なのは、何年かかろうとも信念を曲げず、自分を甘やかさず、集中を続けることだ。簡単に手に入るものなど存在しないのだから。

小さな会社を早く成長させることは気弱な連中には不可能だ。急成長中の小さく野心的な会社が限られた資金源を最大限に生かそうと思えば、常に破綻の瀬戸際を歩くことになる。快適などという感覚は、凡人が平凡なことをやる場所にしかない。わずかでも心地よさを感じているとすれば、頑張りが足りないということだ。

今の消費者は、既存のブランドを押しつけられるより、自分でブランドを見つけ出すことを好む。だから、マーケティングの苦労も地道な努力も報われ、利益につながる。「すごい!」「なんだこれ!」「気に入った!」「かっこいい!」と思わせれば、そのブランドが定番になる。消費者は従来のマーケティングで売り込まれる量産品より、自分で発掘した希少品のほうに共感する。素晴らしいことに、消費者に発掘してもらうマーケティングの方が安上がりで、しかも頼りになる。

彼らが欲しがっているのは、本物であり、質であり、情熱であり、実感であり、こだわりだ。

ここで肝心なのは、消費者とのやり取りやコミュニティーづくりをおろそかにせず、自分たちのブランドは本物なのだと伝えられる定番のオンラインコンテンツを十分に用意することだ。

信頼は与えられるのではなく自分で積み重ねるもので、心を開き、誠実に、隠し事をせず、顧客と関わり合うことで積み重なっていくものなのだと肝に銘じている。

度胸をつけよう。リスクを冒さなければならない。正気じゃできないことが必要だ。仲間が怖じ気づくような、ときには自分でも足のすくむような経験をしよう。

どんな会社でも、どんな産業にいても、顧客への情報提供で競争相手を上回り、自分たちの商品ではなく使命を強調すべきだ。自分たちが何者なのかを顧客に理解させることに意識を集中し、顧客が最善の選択をできるよう知識を与えることを考えなければならない。

何か意味のあるものを生み出したければ、まずは頭の中にスペースをつくらなければならない。アイデアが芽を出し、育ち、広がっていける創造的なスペースだ。

強い意思で、周囲の雑音や邪魔な出来事から完全に自由な環境をつくり、できるだけ長い時間をそこですごすべきだ。鍵をかけ、電話とコンピューターの電源を切り、ノイズキャンセリング・ヘッドフォンを着けよう。すべてを遮断するのだ。自分の空間をつくり、思う存分考えよう。電子機器も、邪魔な出来事も、中断が入ることもなく、自分と自分のアイデアだけになれる空間だ。そこを思索の聖地にして毎日巡礼するのだ。そういう場所が絶対に必要になる。時間をつくって、それを生かす。そして創造性を発揮し、未来を見通し、人と違うことを考えよう。

ビジネスで人脈がものを言う時代は過ぎ去った。当然のことだが、大事なのは、自分自身がどれだけ優れているかだ。

もう誰と知り合いだろうが関係ない。才能と知恵があれば、それで世の中に名が広まる。自分の会社をよくすることに時間を使おう。たいしてうまくないパーティー料理などどうでもいい。

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こうして引用を列挙しながら、実はこれらは自分に対する戒めでもあるように感じた。例えば、メール多用に対する戒めもあるし、「企業文化は、誰にも見られていないと思ったときの行動に表れる」というのもそうだし、リーダーの責任や「リアクション型ワークフローへの没頭」というのもそうだ。そして、特に僕自身の今置かれた状況を踏まえて最も心に響いたのは、次の記述だった。

経営陣は日々の仕事を回すための業務や現在進行形の問題の解決、すでにある問題への対応には、自分が働いている時間の半分までしか使ってはいけないことにして、会社を改善し、成長させ、発展させる方法や、次の成長の段階に進ませる方法を考えることに残り半分を使う

著者は他所からの引用として、「パンクっていうのは、世界に対して気まずくなるような問いかけができて、逃げずに答えさせるために全力を尽くす人のこと。パンクっていうのは、驚きを生むためにすべてをかけている人のこと」だとも言っている。パンクというと、僕らはすぐに音楽やアート、ファッションの話だと思ってしまうが、こういう定義の仕方でいけば、世の中どこにいようと、どんな仕事をしていようと、「強い意志」(本書では高頻度で出てくる言葉)で、「全力」を尽くして、自分の流儀で物事に取り組んでいくのなら、パンクなのだと思った。

この本を薦めて下さった方には、大変感謝しています。多分いろいろな思惑があってのご推薦だったことと思うので、それらをしっかり胸に刻んで、これからの人生も精進していきます。

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