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国連の対ブータン援助 [ブータン]

国連対ブータン援助枠組み、4分野を特定
UN framework identifies four areas for assistance
Kuensel、2017年9月20日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/un-framework-identifies-four-areas-for-assistance/

【ポイント】
9月19日、政府、NGO、ブータンに籍を置く国連専門機関の代表者が集まり、国連国別課題分析ペーパー(CCA)ドラフトについて議論した。CCAは国連の次期対ブータン開発援助枠組み(UNDAF)の策定にエビデンスを提供するもの。UNDAFは2019年から2023年までを協力期間と定めており、ブータンの第12次五カ年計画と期間を合わせ、国連常駐ミッションによる対ブータン支援のガイドラインとなる。

CCAレポートでは、国連専門機関間の連携プログラム実施の柱となりうる4つの領域を特定している。①気候変動に対する強靭性と災害リスク管理、②ジェンダー平等、③食と栄養の安全保障、④エビデンスに基づく意思決定を可能とするSDGsデータ、である。

このうち、①気候変動に対する強靭性と災害リスク管理における主要な課題として、複数セクター間、複数機関間の調整、災害に有効に対処できる熟練人材の不足、基礎データや資金、知識情報、制度能力等の面での制約が挙げられている。このレポート案は、様々な関連機関との協議を経て作成されたもので、より効果的な災害管理制度枠組みや調整メカニズム、災害リスク地域の特定、国及び各地方レベルでの災害管理計画や緊急時対応計画の策定、予防や復旧に向けた追加的努力、重要インフラの整備等の必要性が指摘されている。

②ジェンダー平等における課題としては、高等教育就学及び修了率、就労機会の平等、公的意思決定や政治参加における女性の参加率、女性に対する暴力等が挙げられている。ジェンダー主流化プロセスの強化、主要な法整備、性別により分解可能な統計データの収集と活用等が今後必要とされ、現存するジェンダーギャップの解消の必要性が指摘されている。

再生可能自然資源セクターの問題は食と栄養の安全保障に直結するため、農業システム自体を抜本的に見直す必要があるとCCAは指摘する。データ収集については、意思決定者の間でデータの重要性について啓発すること、データ生成者間での調整、データ収集活用能力の強化、公的統計をつかさどる法的枠組みの構築、評価のカルチャーの醸成等が今後の取組み課題だと指摘されている。

国連のジェラルド・デイリー常駐代表は、今後数年にわたり、国連システムはブータン政府と議論を重ね、UNDAFを最終確定させるという。同代表はまた、2030年までを視野に入れると、能力強化(キャパシティ・ビルディング)のような分野は国連が政府を支援せねばならない分野だろうと述べる。ブータンの未来と現状直面する課題を見据え、将来的なソリューションが何かを考え始める時期だと強調した。その例として、デイリー代表は、気候変動がとのようなインパクトをもたらすのかを考える必要があると述べる。

最後に、デイリー代表は、「ブータンがより強い国になっていけば、私たちは高齢者や障害者といった、社会的に脆弱な人々の支援を考える必要がでてくる」とも述べた。

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ドラフトの全文を読んだわけじゃなくて、あくまでも記事からの想像として言わせてもらえば、なんでこの4領域なのか、正直言うとよくわかりません。ブータンの開発課題はもっと幅が広く、CCAでも前半部分ではそんな課題の列挙がなされているのだろうが、それがどうしてこういう4分野に集約されるのだろうか。おそらくは、ブータンに事務所を持つ国連専門機関の取組みをドッキングさせたらそういう領域になるということだろう。

①気候変動はUNDPとWHO、②ジェンダーはUN-WOMAN、③食と栄養はユニセフとWHO、④データはUNDPといった感じで。

そうした課題とUNDAFの取組み領域の紐づけの妥当性の議論はさておき、国連の文書で気になっている大きなポイントをここで述べておく。それは、マクロでの課題の把握の仕方はそれで正しいのかもしれないが、その課題への取組みを担うべき組織にしても、政策制度にしても、動かすのは結局は人だというところの考察の少なさだ。この記事だけを見ていても、政策制度の構築の必要性は十分指摘されていると思うが、それを動かすブータン人の顔が見えてこない。

少し前にも別の文脈で述べたことがあるが、この国では、予定していた行事が急にキャンセルになるとか、逆に突然新たな行事の開催が浮上して関係者が奔走させられるとか、遅刻とかは当たり前だし、研修に参加してもらおうと思っても、その研修参加で自分に学びがあると思っていても、参加にあたって現金手当が必要だったりとか、研修や会議に出てもうわの空で頻繁にスマホをいじってソーシャルメディアをちぇっくするとか、仕事が未完了であっても定時になれば平気で退社してしまうとか、自分がわからないことはわかりそうな人に丸投げして、自分では一緒に学ぼうとしないとか、上司がいる場では発言しないとか、上司がいなかったとしてもいいアイデアがなかなか出てこないとか、いろいろと人にまつわるミクロな課題が山積している。

制度だけ整えても、それを運用する人が動かなければ、制度だって動かない。とりあえず外部のコンサルタントに丸投げして書いてもらった政策文書が、実際に運用の段階ではブータン人が誰も動いておらず、実行に至らないということが多いのである。だから、課題を列挙して政策や制度を変えていこうというだけでは実はダメで、人を変える方策への言及が必要だと僕は思っている。

また、この関連で言うと、この文書は、ブータンの人々を受益者として捉えてはいるが、ブータンの社会や経済の開発を担っていく重要なステークホルダーとして捉えた書きぶりになっていないのではないかと気になる。国連がいろいろ「ヘルプ」するというのはそれはそれで必要だと思うが、高齢者であっても、障害者であっても、重要な社会の一員であり、彼らが参加できる環境を作っていくことが必要だ。ブログでは現在Amazonの商品紹介機能が不調で最近読了した本の紹介ができていないけれど、最近読んだ中でもとりわけ小松成美著『虹色のチョーク』から得た示唆は多く、知的障害者であっても労働参加できる環境は、工夫次第で十分整えることが可能だとの認識を強くした。

実際にCCAの原文を読めばもっと言いたいことも出てくるような気はするが、記事だけからの想像として言えることのみ指摘させてもらった。最終確定まではまだ時間もかかる文書のようであるが、安易に現行の国連専門機関のサービスラインナップに合わせた4領域とせず、これまでの事業実施の経験から得た教訓や知見を十分に反映させた文書になっていくことを期待したいと思う。くれぐれも、「森を見て木を見ない」状況は避け、空中戦のみに終始しないレポートになっていくことを望む。

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