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『誰がアパレルを殺すのか』 [シルク・コットン]


誰がアパレルを殺すのか

誰がアパレルを殺すのか

  • 作者: 杉原淳一、染原睦美
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2017/05/25
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
大きな転換期を迎えたアパレル業界。この産業を衰退に追いやった“犯人”は誰か。サプライチェーンをくまなく取材し、不振の真因を、ついに突き止めた!

ベストセラーになったビジネス書を紹介する。元々日経ビジネスの特集記事だったものを、書籍版に改訂したのだそうだ。

衣料品が売れなくなった、業況が悪化している―――これは、親交があるこの業界の方からも会って飲むたびに聞かされる最近の話であった。そういう状況の中で、どこまでCSRを頑張れるのか、業況悪化したらさっさとCSRから手を引くのか、僕には非常に気になるところだが、知人からこの話を聞かされるたびに、まあ一時的なものなのではないか、業況も、悪い時もあれば良い時もあるのではないか、などと安易に考えていたところがあった。

ところが、本書を読んでみると、話はそんなレベルではない、もっと構造的なもので、業界大手が相当ドラスティックに変わっていかないと、退出する企業が続出するのではないかと思うようになった。ショッキングなタイトルに対する著者の答えは、戦後復興期から発展を遂げてきた従来型のアパレル企業が、高度成長期からバブル期に至る過程で得た成功体験から脱却できず、思考停止に陥っているのだと述べている。

逆に、そうした成功体験を経ていない新興企業は、業界の内輪の論理にとらわれず、自由な発想でサービスを展開し、実績を上げているという。衰退したといわれるアパレル産業の中にも、生き残っていける企業はあるというのも著者の強調しているポイントだ。

では、生き残りをかけた企業の戦略にはどのようなものがあるのだろうか。第4章では新興企業の取組みを具体的に紹介しているが、その見出しを4つ並べただけで浮かんでくるキーワードが幾つかありそうだ。

 - 国内ブランドだけで世界に挑む
 - オープン戦略で世界市場を切り拓く
 - 服を売ることだけが商売ではない
 - 「来年にはゴミになる」服を作らない

こう並べてみると、1つは世界市場を見据えること、2つめはシェア・エコノミー、3つめは差別化なのかなと思う。最後の「差別化」という言葉は悩んだのだが、要すれば1年単位でのはやりすたりとは一線を画し、長く着続けてもらえる服を作るということであり、それには他社にはない付加価値を付けたり、あるいは他の人が着ていないような個人レベルでのカスタマイズも含まれてくるのだろうと思う。当然、売れ残りが出るほど沢山作らない、自社のリソースでできる範囲のものを作るという発想も必要になる。

自分自身を振り返ってみてもそうなのだが、妻から捨てろ捨てろとさんざん言われているのに捨てられない、結婚生活よりも長く所持しているTシャツがあったりする。あるいは、昔米国で出たマラソン大会の参加賞Tシャツとかも。何しろこれを持っている日本人は僕だけだとの自負もあって、いくら古くなってもやっぱり持っていたいのである。

もう1つは、業界の知人と話していてずっと気になっていたのが、国内市場で売ることを前提でサプライチェーンが出来ているんだなという点だった。そのサプライチェーンも、原料の調達は外国に頼っているケースが多いわけで、工夫すれば新興市場でも戦えるのではないかと思ったりもする。例えば日本のコットン製品の原料となるコットンはインド産が多いと思うが、紡績までインド国内でやっているのなら、その後の行程もインド国内でやってみて、インドの市場で売ってみてはどうなんだろうか。

大都市のショッピングモールに行くと、GAPだのZARAだのH&Mだの、どこかで聞いたブランドのお店が金太郎飴のようにどこにもある。どこに行っても店舗の顔ぶれが一緒というのでは面白くもないので、差別化できるブランドで出店するのも1つの手だと僕は思っている。

最後に1つだけ付け加えておくと、本書で描かれた企業の生き残り戦略の中で、岡谷のシルクの話が出てきたのは嬉しかった。


週刊ダイヤモンド 17年7月8日号 (ユニクロ柳井正/藤井聡太四段×井山裕太六冠スペシャル対談)

週刊ダイヤモンド 17年7月8日号 (ユニクロ柳井正/藤井聡太四段×井山裕太六冠スペシャル対談)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/07/03
  • メディア: 雑誌

余談だけれども今週はこんな雑誌も手元に来たので読んでみた。ベーシック衣料品を高品質低価格で提供するというユニクロの戦略はまあわかるのだが、街で同じものを着ている人を見かけるとちょっと恥ずかしくなってしまうので、娘が学校の文化祭用に作った缶バッジをフリースジャケットの胸に付けてひと冬を過ごした。ブータン的には缶バッジは受けると思ったのだが、案の定そこから会話が生まれるケースは多々あった。こういうカスタマイズが店舗に近いところでもう少しできると、ユニクロの製品も面白いかもなと思う。

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