モノづくりの狼煙 [ブータン]
ファブラボ、イノベーティブマインド育成に一役
FabLab Bhutan to foster innovative minds
Kuensel、2017年7月8日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/fablab-bhutan-to-foster-innovative-minds/
【ほぼ抄訳】
ブータンの21世紀型教育システムは、7月20日、ファブラボ・ブータンの開所により新たな勢いを得る見込み。ファブラボはイノベーティブなアイデアを具体的な形にする場所を提供してくれる。発明やイノベーションの近代的な手段へのアクセスを保証してくれる場となるだろう。
ファブラボ・ブータンの創立者であるデビッド・クール氏は、ファブラボに多くの若者が来て欲しいとの期待を明らかにする。「こんなラボがあれば、アイデアを大きく前進させることが可能です。これで残された唯一の制約は皆さんのイマジネーションにあることになります。」
マサチューセッツ工科大学のファブラボ国際普及プログラム、Center of Bits and Atomsのシェリー・ラシター代表は、ファブラボをブータンに作ることで、地元の人々が自身の課題解決に取り組み、また世界的なモノづくりコミュニティと交流を図ることによって、持続可能なソリューションを見つけ出すことに役立つだろうと述べる。「世界中のラボがブータンと協働してソリューションを見つけ出すとともに、ブータンも世界中の人々とその知見を共有することができるでしょう。」
シェリー代表によれば、ブータン人をインスパイアするため、モノづくりコミュニティのためのいくつかのプロジェクトを計画中だという。ファブラボ・ブータンのマネージャー、ツェワン・テンジン・ラブテン氏は、ブータン・トイレット機構(BTO)との協働による、ポータブルトイレの生産を計画中だという。このポータブルトイレではプラスチック素材を用い、この国のプラスチック廃棄物の削減にも貢献するものだと付け加えた。
MITから5人のファブラボ専門家がブータン入りし、ティンプー市内バベサ地区で機材の設置を木曜日から始めている。機材の中には、レーザー加工機やCNCミリングマシン、3Dプリンター、デジタルミシン、鋳造機、鋳込み成形機等が含まれる。これらの機材は、MITのファブラボ普及プログラムとNPOソリッドワークスが供与したもの。
ファブラボ・ブータンでは、7月12日より、登録した若者向けのオリエンテーションプログラムを開始する。今のところ68名の学生が登録済み。うち15名はウッドクラフトセンターの学生。受講者はここで様々な機材の操作法を学ぶ予定。
2016年、ブータンは「ファブ・シティ」憲章に署名。原材料のリサイクリングや地元ならではの発明を通じて地元のニーズに応える、都市内での生産活動の推進で合意した。「この署名において、ブータンはこれから40、50年の間に、自身が消費するものの半分以上は自身で生産できるようになると述べた」とデビッド・クール氏は述べた。
Center for Bits and Atomsのニール・ガーシェンフェルド教授がブータン入りし、ファブラボの開所式に出席する予定。ファブラボというアイデアも、MITの同センターで2001年に形成されたもので、今では地元の発明や、工学教育、起業家精神の醸成等に貢献する世界的なプログラムに成長している。現在、世界100カ国以上の国々に1200のラボが設置されている。
傍から見ていて相当に設立が危ぶまれていたファブラボ・ブータンが、とにもかくにも開設にまで漕ぎつけたことに、先ずは敬意を表したいと思う。新しいもの好きなわりに自分で新しいことを始めることには異常に臆病なブータン人にやきもきして、陰に陽に外部からプレッシャーをかけ続けた僕も、多少は貢献できたかなと思っている。
去年の11月に書いたブログ記事を覚えておられる方もいらっしゃるかと思うが、このファブラボ・ブータン、当初はティンプー・テックパークに開設される筈だった。また、当時の記事には日本人の名前も出てきていたが、今回の記事で出てきたプレイヤーは完全にメンツが入れ替わっている。勿論、このニュースをリリースするのに一役買った外国在住ブータン人は11月の時と同じ人物だが、それ以外のメンツはほぼ総入れ替えだ。テックパーク推しだった初期の発起人メンバーも、いつの間にか顔を見せなくなっている。
何が起きたかは想像にお任せする。また、廃棄プラスチックの再利用によるポータブルトイレという発想も、元々は僕自身が出したアイデアだったが、いつの間にかパクられている。結果的にはそれに取り組むのに適切な組織に落ちた印象だが、正直僕の気分はあまり良くない。
とはいえ、先ずはショーケースとしてティンプーにできること自体は歓迎する。実際に僕も利用するつもりだから、はらわたは煮えくり返っていても大人の付き合いはしていくつもりである。
断っておくが、「ファブ・シティ」はブータンが政府として憲章署名したものではない。ティンプー市長の代理人たる人が署名したものだ。従って、ファブラボ・ブータンはティンプーでというところで発想がストップしている。勿論、ティンプーがファブ・シティ化するというのはそれはそれで結構なことだ。
でも、僕はファブラボ・ブータンが成功すればするほど、ブータンのクリエイターはティンプーに集まり、地方の衰退に拍車をかけるのではないかと懸念する。従って、僕は「ファブ・シティ」という発想は取らず、ブータン全国でモノづくりを志向する国になっていく「ファブ・カントリー」という考え方を提唱している。そうでないと、国内消費の半分以上を国内生産でという方向には向かっていかない。
そのためには、地方都市にもファブラボは必要、そのためのラボ機材を動かせる人材、ラボを持続可能な形で運営できる人材、地域のニーズを汲み上げて地域の人々のアイデアを形にしていくファシリテーションができる人材がもっともっと必要になっていくだろう。
ティンプーのことはファブラボ・ブータンに任せよう。その一方で、第二、第三のファブラボを作る動きを今からサポートする準備をしておこう。そんなことを、この記事を読みながら感じていた。
FabLab Bhutan to foster innovative minds
Kuensel、2017年7月8日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/fablab-bhutan-to-foster-innovative-minds/
【ほぼ抄訳】
ブータンの21世紀型教育システムは、7月20日、ファブラボ・ブータンの開所により新たな勢いを得る見込み。ファブラボはイノベーティブなアイデアを具体的な形にする場所を提供してくれる。発明やイノベーションの近代的な手段へのアクセスを保証してくれる場となるだろう。
ファブラボ・ブータンの創立者であるデビッド・クール氏は、ファブラボに多くの若者が来て欲しいとの期待を明らかにする。「こんなラボがあれば、アイデアを大きく前進させることが可能です。これで残された唯一の制約は皆さんのイマジネーションにあることになります。」
マサチューセッツ工科大学のファブラボ国際普及プログラム、Center of Bits and Atomsのシェリー・ラシター代表は、ファブラボをブータンに作ることで、地元の人々が自身の課題解決に取り組み、また世界的なモノづくりコミュニティと交流を図ることによって、持続可能なソリューションを見つけ出すことに役立つだろうと述べる。「世界中のラボがブータンと協働してソリューションを見つけ出すとともに、ブータンも世界中の人々とその知見を共有することができるでしょう。」
シェリー代表によれば、ブータン人をインスパイアするため、モノづくりコミュニティのためのいくつかのプロジェクトを計画中だという。ファブラボ・ブータンのマネージャー、ツェワン・テンジン・ラブテン氏は、ブータン・トイレット機構(BTO)との協働による、ポータブルトイレの生産を計画中だという。このポータブルトイレではプラスチック素材を用い、この国のプラスチック廃棄物の削減にも貢献するものだと付け加えた。
MITから5人のファブラボ専門家がブータン入りし、ティンプー市内バベサ地区で機材の設置を木曜日から始めている。機材の中には、レーザー加工機やCNCミリングマシン、3Dプリンター、デジタルミシン、鋳造機、鋳込み成形機等が含まれる。これらの機材は、MITのファブラボ普及プログラムとNPOソリッドワークスが供与したもの。
ファブラボ・ブータンでは、7月12日より、登録した若者向けのオリエンテーションプログラムを開始する。今のところ68名の学生が登録済み。うち15名はウッドクラフトセンターの学生。受講者はここで様々な機材の操作法を学ぶ予定。
2016年、ブータンは「ファブ・シティ」憲章に署名。原材料のリサイクリングや地元ならではの発明を通じて地元のニーズに応える、都市内での生産活動の推進で合意した。「この署名において、ブータンはこれから40、50年の間に、自身が消費するものの半分以上は自身で生産できるようになると述べた」とデビッド・クール氏は述べた。
Center for Bits and Atomsのニール・ガーシェンフェルド教授がブータン入りし、ファブラボの開所式に出席する予定。ファブラボというアイデアも、MITの同センターで2001年に形成されたもので、今では地元の発明や、工学教育、起業家精神の醸成等に貢献する世界的なプログラムに成長している。現在、世界100カ国以上の国々に1200のラボが設置されている。
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傍から見ていて相当に設立が危ぶまれていたファブラボ・ブータンが、とにもかくにも開設にまで漕ぎつけたことに、先ずは敬意を表したいと思う。新しいもの好きなわりに自分で新しいことを始めることには異常に臆病なブータン人にやきもきして、陰に陽に外部からプレッシャーをかけ続けた僕も、多少は貢献できたかなと思っている。
去年の11月に書いたブログ記事を覚えておられる方もいらっしゃるかと思うが、このファブラボ・ブータン、当初はティンプー・テックパークに開設される筈だった。また、当時の記事には日本人の名前も出てきていたが、今回の記事で出てきたプレイヤーは完全にメンツが入れ替わっている。勿論、このニュースをリリースするのに一役買った外国在住ブータン人は11月の時と同じ人物だが、それ以外のメンツはほぼ総入れ替えだ。テックパーク推しだった初期の発起人メンバーも、いつの間にか顔を見せなくなっている。
何が起きたかは想像にお任せする。また、廃棄プラスチックの再利用によるポータブルトイレという発想も、元々は僕自身が出したアイデアだったが、いつの間にかパクられている。結果的にはそれに取り組むのに適切な組織に落ちた印象だが、正直僕の気分はあまり良くない。
とはいえ、先ずはショーケースとしてティンプーにできること自体は歓迎する。実際に僕も利用するつもりだから、はらわたは煮えくり返っていても大人の付き合いはしていくつもりである。
断っておくが、「ファブ・シティ」はブータンが政府として憲章署名したものではない。ティンプー市長の代理人たる人が署名したものだ。従って、ファブラボ・ブータンはティンプーでというところで発想がストップしている。勿論、ティンプーがファブ・シティ化するというのはそれはそれで結構なことだ。
でも、僕はファブラボ・ブータンが成功すればするほど、ブータンのクリエイターはティンプーに集まり、地方の衰退に拍車をかけるのではないかと懸念する。従って、僕は「ファブ・シティ」という発想は取らず、ブータン全国でモノづくりを志向する国になっていく「ファブ・カントリー」という考え方を提唱している。そうでないと、国内消費の半分以上を国内生産でという方向には向かっていかない。
そのためには、地方都市にもファブラボは必要、そのためのラボ機材を動かせる人材、ラボを持続可能な形で運営できる人材、地域のニーズを汲み上げて地域の人々のアイデアを形にしていくファシリテーションができる人材がもっともっと必要になっていくだろう。
ティンプーのことはファブラボ・ブータンに任せよう。その一方で、第二、第三のファブラボを作る動きを今からサポートする準備をしておこう。そんなことを、この記事を読みながら感じていた。
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