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雇用のミスマッチ解消に求められるものは何か? [ブータン]

職業訓練は時代の変化と歩調を合わせるべき
TVET must keep apace with change: Symposium
Kuensel、2017年6月23日、Yangchen C. Rinzin記者
http://www.kuenselonline.com/tvet-must-keep-apace-with-change-symposium/

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【ポイント】
22日、ティンプーにおいて、技術職業教育訓練(TVET)に関するシンポジウムが始まった。2日間のシンポジウムの共通テーマは「ブータンにおけるTVETの歴史を祝う~持続可能な開発に向けたTVETの貢献」。国内各地にある技術訓練校(TTI)、伝統工芸院(ゾリグ・チュスム)の校長、副校長、民間の訓練実施機関の代表等、40名以上が参加した。

初日のパネル討論では、技能労働の軽視が労働市場における職のミスマッチにつながっているとの指摘が相次いだ。技能労働者はブルーカラー労働だと見下されている。討論では、技能訓練を修了したワーカーが、その技能と合っていない分野で働かされ、それが雇用のミスマッチにつながっているのだという。

こうした状況が起きるのは、TVETで行われる教育が旧態依然としているからだとの指摘も。あるパネリストからは、ブータンのTVETは1965年には始まっているが、テクノロジーの進展が急速なのに、商業訓練校の機械は1965年に導入されたものをいまだに使用している、これでは雇用のミスマッチが生じるのは当たり前だとの辛辣な指摘も。

また、ブータンにはブータン人熟練労働者がいるのに、かなりの数の外国人労働者が雇用されていることにも話が及んだ。地元建設大手のCDCLのCEOは、この問題は即座に解決ができるほど単純ではなく、同社で行う入札では、最低30%の労働者はブータン人とするよう応札業者に求めていると述べた。

ブータンには、公営、民営、NGO、企業形態を含め、労働人材省登録のTVET実施機関が99ある。
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最近、労働人材省は、海外雇用促進スキームで送り出したブータン人が第11次五カ年計画の目標値に達していないことについて、「そもそもそんな目標値を設定した覚えはない」という反論をして、マスコミに叩かれている。僕は以前にも政府が雇用創出を行うかの言い方には違和感を覚えると述べたが、こんな苦しい反論をする以前に、この国での失業は政府の責任だとすること自体がおかしいと思っている。

今回ご紹介する記事でも言及があるが、実は雇用機会自体はあるのに、それをえり好みしているのは職探しをしているブータン人の方である。「非ブータン人」とか「外国人労働者」とか、隣国に配慮した表記をしているけれど、要するにインド人労働者を雇っているのは、決してインドがブータンを侵略しているからではなく、そういう労働市場の需給のミスマッチを、インド人労働者で埋めざるを得ないからである。

奇しくも同じ日のクエンセルには、TVETのシンポジウムの他に、こんな記事も出ていた。このヘアサロンの経営者の言い訳も苦しい。「私は忙しい」を言い訳にするところがいかにもブータンらしいが、結局ヘアドレッサーになろうなんてブータン人がなかなか現れない現状を見事に表している好事例だと思う。

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非ブータン人理髪師の契約延長が問題に
Non- Bhutanese barber’s contract extension raises questions
Kuensel、2017年6月23日、Younten Tshedup記者
http://www.kuenselonline.com/non-bhutanese-barbers-contract-extension-raises-questions/
【ポイント】
タシガンのウゲン・サムドゥップリン・サロンの経営者から2年前に申請のあった、サロンでの非ブータン人理髪師の傭上について、当初申請はブータン人理髪師育成のためのマスタートレーナーという位置付けで承認されたが、それから2年が経過する現在も、このヘアサロンではブータン人理髪師の訓練も行われていないことが明らかになった。

このヘアサロンは、ブータン人訓練生の受入れもなく、非ブータン人理髪師が自分で運営しているのが現状。サロンの経営者であるサンゲイ・ワンモ氏によると、ヘアドレッシングに関心を持ってそれを学ぼうとするブータン人を見つけるのは困難だという。また、この経営者自身も非ブータン人理髪師から学ぶつもりでいたが、子供の面倒も見なければいけないので、学んでいる時間がないという。

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さて、シンポジウムに話を戻すと、そもそもこのシンポジウム、参加者が40名少々しかいないのに2日間も費やしていることも不思議だが、労働人材省のHPを見ても、その概要がまったく書かれていない。実は僕はこのシンポジウムの主催者から閉会式へのご招待を受けたのだが、受けたのがシンポジウムの前日で、しかも閉会式が何時から行われるかも書かれておらず、また2日間のプログラム全体にむしろ興味があったので、主催者に問い合わせた。でも結局なしのつぶてだったので、最終的には閉会式にも出席しなかった。

事前告知がHPでも行われず、個別告知であってもこれだけショートノーティスだったわけで、「シンポジウム」と言いつつも40名少々しか集まらなかったというのは当然といえば当然だ。多分、閉会式に出られる大臣の都合がギリギリまで確認できなかったとか、いかにもブータン的な事情が垣間見えるが、全国の技術訓練校(TTI)は7月には1カ月の夏休みに入るのに、なんで6月のこの時期に校長、副校長に召集かけてこのシンポジウムをやらなければならなかったのかといえば、今月が会計年度の締めだったからだと勝手に勘ぐっている。

おおかたこんなシンポジウムを開催するというのが今年度の大臣か事務次官あたりの年次達成目標協約(APA)に書かれていたんだろう。このシンポジウム、21日から3日間開催されていた全国県知事会議とも日程がバッティングし、しかも23日には2県の新知事、最高裁判事等の任命式とカダ(白いスカーフ)の贈呈式とも重なり、参加者動員には相当苦労したに違いない。主催者も可哀想だな。

シンポジウムで話し合われた内容もいつものことで、あまり変わり映えする論点は含まれていない。参加者の顔ぶれを記事から見る限りは内輪の議論が中心だったようで、ちょっと特筆すべきは産業界から企業のCEOを呼んでいることぐらいである。それでも出来上がった枠組みの中で人を集めて議論しているだけだから、イノベーティブな発想がなかなか生まれてきにくい。こういう場に外部の人を呼んできて、外部者の視点で「こうしてみたら?」というのを述べてもらったら、このシンポジウムもそれなりに意味があったのではないかと思う。プログラムが確認できないから、実際はそういうセッションがあったのかもしれないが。

もし僕がパネリストで出られたとしたら、日本の「高専」制度と、そこで行われているプロトタイプ製作を紹介していたと思う。1965年に導入された機械をいまだに使っていて、全然更新されないのが問題だと述べてたパネリストもいたが、日進月歩の工作機械を今更新してもまた同じ問題が数十年後に起こる。それなら最新の機械を持っている隣国のTVET機関や、国内の工場に短期研修に出すとか、そういう措置で補完していけばいい。それに、ここのTVETは基本単一技能を2年間もかけてダラダラ教えるスタイルで、1つのTTIの中でも科による縦割りが残っている。せめてこの縦割りを取っ払い、足りないところは地域の企業家とも連携して、よりマルチスキルになれるよう育てる、あるいは意識付けを図るようなことができていけば、もっと地域から求められる人材になっていけるのではないかと思う。

外部者の勝手な意見だが、そういう意見を言う場を労働人材省はちゃんと計画的に設けて欲しい。

タグ:職業訓練
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