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もっともっと「包摂性」 [ブータン]

パナスでの監禁生活
Caged in Phanas
Kuensel、2017年6月10日、Gopilal Acharya
http://www.kuenselonline.com/caged-in-phanas/

2017-6-10 Kuensel02.jpg

6月10日付のクエンセルの寄稿欄に、2ページぶち抜きの記事が載っていた。ポイントをここで紹介するにも長い記事なので、それも今回は省略するが、内容としては13歳で精神分裂症を発症した女性が自宅の隣りに設けられた小屋の中で暮らしているという告発レポートである。モンガル県ナツァン郡のパナスという村での出来事だ。

ただ、家族のことを悪く描いているわけではない。この世帯は今は36歳になっているこの女性と56歳の母親の2人暮らし、母親はこの女性に治療を受けさせようと、モンガル病院、ティンプーのジグミ・ドルジ・ワンチュク国立レファラル病院、さらにはインド・タミルナドゥ州ヴェロールの病院にまで連れて行っている。どうにも手の施しようがなく、今の生活に陥っている。母親も娘のケアに疲れ切っている。地域住民もこの家を避けるようになり、コミュニティの支援も得られない。コミュニティとのつながりが断絶されてしまえば、幸福度はさらに下がるだろう。

この女性が発症するきっかけになったと思われるのはその直前にあった両親の離婚だというが、障害を抱えてしまったのは前世に犯した罪だと考える人が多いという。レポートの論調は、こうした家族も含めて家族全体をサポートする仕組みがないと、患者本人だけではなく、その家族もまた苦境に陥ってしまうと指摘している。

この記事は相当ショッキングだったようで、週明け12日のクエンセルの社説でも取り上げられている。政府は短期的な開発利益の追求に躍起になっているが、それで本当に包摂的(inclusive)で公正な社会の構築につながるのかとの問題提起である。成果ばかりを必要以上に強調するが、政策が本当に見なければならないところを見ていないのではないか。
http://www.kuenselonline.com/calling-for-urgent-intervention/

このストーリーを読むと、本当に保護を必要としている人を見つけ出すことは、ちょっとの時間その村を訪れただけでは難しいということを再認識させてくれる。このレポートを書いた人も、別の仕事でその村に入り、ひと通り所定の仕事を終えた後、たまたま偶然この世帯のことを耳にしたと述べている。開発の専門家は特定の目的を持って村に入り、その目的に必要な情報だけ集めて村を去ってゆく。往々にして目的にフィットしない情報は見落とすことになり、特にそもそもコミュニティとのつながりが断ち切られてしまって日々の生活に手一杯の世帯の情報はアンテナに引っかかることが少ない。

この国の幸福を探すのに夢中になるあまり、不幸な人々を見落としてはいないか―――自戒を込めて、このことをハイライトしてみたかった。

余談になるが、この告発レポートには保健省の保健ブレティンから引用したブータンの精神疾患の患者数の推移が載っている。年による変動が大きすぎてどこまで信憑性がある数字なのかはわからないが、2011年と2015年の2時点の比較だけで言えば、明らかに増えている。

2017-6-10 Kuensel03.jpg

障害を抱える家族のいる世帯とそうでない世帯との間で、幸福度に差があるかという比較分析も、先日行われた国勢調査のデータをうまく分析すれば、結果が出て来るであろう。それに関連しそうな質問項目があったので。


タグ:幸福 障害
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