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有機農業化の先行きへの不安 [ブータン]

2020年までの有機農業化は達成困難
Going organic by 2020 questionable
Kuensel、2017年5月23日、Dechen Tshomo記者
http://www.kuenselonline.com/going-organic-by-2020-questionable/

2017-5-23 Kuensel.jpg

【ポイント】
22日から2日間の予定で、ティンプーで全国有機農業化プログラム(NOP)のワークショップが開催される。初日の開会式において、NOPのコーディネーターである農業省のケサン・ツォモ氏は、NOPが掲げた2020年までに完全有機農業化を図るというNOPのビジョンは達成が困難だとの見通しを明らかにした。

NOPは2007年に農業省が策定した全国有機農業枠組みを実行に移すために設けられたプログラムだが、予算の配分は十分ではなく、予算確保もされていない現行第11次五カ年計画の達成目標は非現実的だとケサン氏は認めた。NOPが実際には枠組みの実行に貢献していない以上、2020年の完全有機農業化は疑わしいと結論付けた。

この日から始まったワークショップは、国際山岳総合開発センター(ICIMOD)の支援の下、ブータンの有機農業の利点と課題をまとめるために開かれた。ICIMODから派遣された2人のコンサルタントが3月から取り組んでいる国内ステークホルダーとの協議の一環として開かれたもので、ステークホルダーの意見を反映させ、それによってプログラム実施に貢献しやすい環境を作ることを目指している。一般からのコメントも聴取するため、コンサルタントが執筆した報告書案は農業省ウェブサイトでも公開される予定。

開会式で発言したイシ・ドルジ農業大臣は、様々なセクターのステークホルダーが、自分がどのように有機農業化に貢献できるかを考えて欲しいと訴えた。今のところブータンの有機農業化は残念な状況に終わっており、期待された結果をもたらすことができていないと認めた。

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「有機農業」と聞くと、皆さん何を想像するだろうか―――イメージは人それぞれだし、達成に向けた方法論も人によって異なると思う。人によりイメージが異なるものを外から持ち込んでブータンでやろうとして、農業省もカネがないから外から来てくれる人は歓迎して丸投げにするだろうから、気付いてみたら収拾のつかないことになっていた。そんな姿が想像できる。

「有機農業」は結構なことである。ブータンは化学肥料にしても農薬にしても、自国で生産していないから輸入しなければいけない。自国にある資源でできる限りの農業を展開するという方向性は多分間違っていないだろう。でも、実現に向けては課題もある。

思い付くままに述べるとすれば、1つには食糧自給との整合性、有機農業で通常農業よりも生産性が高いことが実証できなければ有機農業への移行は難しいだろうが、実際のところは通常農業の方が生産性が高いから、同じ農業省の中でも、通常農業の促進に向けたベクトルを持っている部署も多い。

2つめは農村の過疎化と高齢化。農業の担い手が減っているところに手間暇かかる有機農業を持ち込んでも歓迎されにくい。同じ収入なら楽な農法に行くのは当然のことであるし、耕作放棄地対策として政府が進めようとしている契約農業も、請け負う側は収穫高を増やさないといけないから「有機、有機」とは言ってられない。これまた農業省内でも異なるベクトルが存在する。

3つめは「有機栽培作物」のブランド化。食の安全に対する消費者の意識が高まってくれば有機栽培作物に高いお金を払ってくれる人も出てくるかもしれないが、消費者もまだそこまでは行っていない。有機が健康に良いとか、この作物はどこの誰々さんが手間暇かけて心を込めて作ったとか、作物に付加価値を付けないと高くは売れないし、固定客もつかない。ここは農業省だけで考えていてもできない。サブジ・バザールのような、そこに行けばなんでも揃うという市場に行って通常農業による作物と並べられてしまうと、価格で太刀打ちできない。

4つめは、どの程度まで「有機」であれば「有機」なのかの程度が人によって違うこと。農業を専門にするブータンの大学の学部長が自分は有機農業が専門だというので、「有機」の定義を尋ねたところ、福岡正信の不耕起直播栽培の熱狂的な信望者だとわかった。この定義で入られてしまうと、「何もそこまで…」という人もいるかもしれない。その程度が人によりまちまちであること、有機を使って栽培したい作物が人により異なること、そしてその1つ1つが規模が小さいこと―――それらが相まって、NOPはまとまりのないものになっている。

このICIMODのコンサルタントも、わざわざネパールの本部から来られているわけで、これもある意味では、ブータン政府が自身でまとめられないからICIMODの手を借りた(悪く言えば丸投げした)と言えないことはない。骨太の方針を出そうとしても、結局は外国の専門家に頼ってしまう。コンサルタントも契約期間があるから、ワークショップでもやってステークホルダーを全員集めて話を聞きました、はいおしまい、ということで報告書をまとめてしまう。

ついでに言うと、この報告書のドラフトも農業省HPで公開してパブコメ募集と言っているわりに、農業省HPには載っていない、或いは載っていても容易には探しにくいところに掲載されているようで、そんなに多くのパブリックコメントは集まりにくいのではないかと思う。勿論、農業省Facebookにも載っていない。

日本人でも、「ブータンで有機」をやりたいという人は多いと思う。そういう人の目から見たら、このICIMODコンサルタントがまとめるという報告書はどんな風に見えるのだろうか。訊いてみたい気がする。

タグ:ICIMOD 農業
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