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内陸途上国研究機関? [ブータン]

シンクタンク設立審議、遅れる
NA defers Think Tank endorsement debate
Kuensel、2017年5月18日、Jigme Wangchuk記者
*URLは乗っ取られているため、掲載しません。

【ポイント】
17日に行われた下院質疑で、ダムチョ・ドルジ外相は、内陸開発途上国に関するシンクタンク設立に向けた多国間協定を説明した。この中で、外相は、下院議員に対し、アルマティ宣言とアルマティ行動計画をグーグル検索するよう求め、同行動計画こそが内陸途上国の開発ニーズに対する取組みの第一歩として採択されたものだと強調。アルマティ行動計画はその後ウィーン行動計画に引き継がれている。

こう述べた上で、外相は、協定は内陸途上国の開発に向けたアイデアと専門知識を共有する場としてブータンにも恩恵をもたらすと述べた。

下院側では、中継貿易の重要性は認めつつも、ブータンが協定に署名するには協定自体をもっと理解する必要があると述べた。しかし、外相はアルマティ行動計画の原文の提示をしなかったため、審議は遅れる見通しとなった。

これを受けて、外務省では、求められた文書を後日配布し、併せて協定のメリットとデメリットを提示することになった。

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5月3日開幕した国会の開会式での下院議長の演説の中で、「あれ?」と思ったのが、「内陸途上国の開発について研究するシンクタンクの設立」が今国会会期中に審議されると聞いたことだ。その時の印象では、このシンクタンクを国内で新設するんだというニュアンスに聞こえたのだけれど、今日ご紹介する記事を読む限りでは、シンクタンクはブータンに新設されるものではなく、設置に向けた国際協定の批准に関する審議らしい。

これだけでは自分の理解も中途半端だと思ったので、もう少し調べてみた。

第1に、このシンクタンク自体は既に設立されている。2006年頃から構想として持ち上がっており、2009年に国連事務総長がモンゴルを訪問した際、シンクタンクは設立された。従って、おそらくというか、このシンクタンク自体はモンゴルにあるのだろうと考えられる。

第2に、2010年9月の内陸途上国会合において、これを国際シンクタンクとする国際協定が締結された。次のステップは参加内陸途上国各国における批准手続きとなるが、これが進んでおらず、2016年9月の内陸途上国閣僚会合において、批准手続きをスピードアップしようとの合意がなされている。

現在国会で審議されているのは、従って、この国際シンクタンク設立協定の批准案ということになる。

一方、外相が審議の場で答えている、「アルマティ宣言/アルマティ行動計画」というのもちょっと調べてみた。UN-OHRLLS(国連後発開発途上国・内陸開発途上国・小島嶼開発途上国担当上級代表事務所、長い…)のHPの説明が最も詳しいのだが、それを自分なりに読み込んで解説するには時間もないので、日本の外務省のHPにある「内陸開発途上国」のページからコピペしてみた。
【内陸開発途上国】
内陸開発途上国(LLDC)とは、国土が海から隔絶され、地勢的に開発に不利な途上国をいう。特別の開発ニーズを有することから、ミレニアム開発目標(MDGs)においても、 LLDC問題は、目標8のターゲットの一つとされている。(なお、1990年代ごろまでは、LLDCといえば、「the Least among less Developed Countries(現在のLDC)」のことを指し、内陸途上国やその抱える問題に関心を払う先進国は少なく、内陸途上国としてのLLDCが定着し始めたのは、2000年頃からである。)

【アルマティ閣僚会議】
2003年8月、カザフスタンのアルマティにおいて、内陸国の問題を話し合う初の閣僚レベル会合が開催され、1)基本的な通過政策問題、2)インフラ開発、3)国際貿易・貿易円滑化、4)国際的支援措置、5)執行及びレビューを優先事項としてアルマティ行動計画が策定された。 なお、地理的制約から生じる通過輸送コストの問題を解決するには、LLDCと通過途上国の協力が重要であるが、アルマティでの閣僚会議において、通過途上国が自らも資金不足等の困難に直面していることを主張した結果、アルマティ行動計画ではLLDCのみならず、通過途上国の課題についても盛り込まれている。
なんでも日本語のサイトに頼ろうとすると、これくらいの情報しかなく、日本にとっては「内陸国」という括りで開発途上国を見るというプラクティスがあまりなされていない実態を垣間見た気がする。同様のことは小島嶼開発途上国(SIDS)というのにも言える。これらに属する国は地域をまたがって存在するため、東南アジア・太平洋、南アジア、中南米、サブサハラアフリカ等といった地域割りになっている日本の組織では、LLDCグループとかSIDSグループとか言ってもピンと来ないのである。これは僕自身の反省も込めて述べている。

でも、ブータンに住んでみると、意外と「内陸途上国(LLDC)」という言葉はよく使われるし、ブータン政府代表団が毎年9月の国連総会に出席する際には併せて開催されるLLDC年次閣僚会合に必ず出席している。内陸性に関する意識が高い。

このあたりには、日本とブータンの人々の意識の違いを強く感じる。こちらで暮らしていくなら、「内陸性」に対する自分の感度を高めておかないと、こちらの人との話が噛み合わないこともあり得るので注意が必要だ。

最後に、その昨年のLLDC年次閣僚会合の文書の中から、ブータン関連の記述で興味深いものがあったので原文をそのまま掲載しておく。
20. In his statement, H.E. Mr. Damcho Dorji, Minister for Foreign Affairs of Bhutan, emphasized the utmost importance of mainstreaming the VPoA and the 2030 Agenda, as well as including the SDGs into national plans. He informed the meeting that his government was currently preparing for the 12th Five Year Plan and would work towards integrating the VPoA and the SDGs into their national development plans and programmes. He stressed that harnessing coherence and success in the implementation of the VPoA and SDGs would depend more on collaborative efforts in the spirit of renewed and strengthened global partnerships.

21. H.E. Mr. Dorji also underlined the importance of adequate and predictable financial support to LLDCs in order to achieve tangible results in the priority area of infrastructure development and maintenance. In this regard, he stressed that it was imperative for the Group to push for a global trust fund to LLDCs and to follow developments on the Global Infrastructure Forum. At the global level, H.E. Mr. Dorji highlighted that the follow-up and review process at the UN should continue to pay special attention to the cause of LLDCs. Finally, he stressed the importance of the Group to ensure that their issues find an adequate reflection and mention in the upcoming resolution on Quadrennial comprehensive policy review of operational activities for development of the United Nations system (QCPR).

45. We welcome the project entitled “The Research on Economic Diversification of LLDCs: Cases of Mongolia, Bhutan, Nepal and Paraguay” which will be implemented by the International Think Tank for Landlocked Developing Countries from 1 January 2017 that will provide important evidence-based policy recommendations to assist the LLDCs on how to build their productive capacities, diversify their economies and undergo structural transformation;
―――批准案の行方もさることながら、このシンクタンクで既に行われている共同研究というにブータンが1枚噛んでいるというところが興味深い。いずれケーススタディレポートは出てくるだろうから、気長に待ちたい。僕がその時までブータンにいられるのかどうかはわかりませんが。


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