『あなたのゼイ肉、落とします』 [読書日記]
内容紹介
ダイエットは運動と食事制限だけではない。大庭小萬里はマスコミには一切登場しない謎の女性だが、彼女の個別指導を受ければ、誰もが痩せられるという。どうやら、身体だけでなく「心のゼイ肉」を落とすことも大事なようだ……。身も心も軽くなる、読んで痩せるダイエット小説。
先週、『あなたの人生、片づけます』をご紹介した際、この作品には続編があることにもふれた。整理整頓アドバイザーの大庭十萬里には2歳年下の妹がおり、姉妹で協力して掃除請負業を始めて成功を納めたが、やがて独立して個人コンサルタントのような仕事を始め、姉は家の掃除、妹の小萬里はダイエットのアドバイザーとして、各々の著書はベストセラーとなり、引く手あまたの売れっ子アドバイザーとなる。
その基本姿勢は、家の中が片付けられない人、太ってしまう人は、本人も気付かない心の悩みを抱えており、その根本要因を解きほぐしていくことで、整理整頓やダイエットにつながっていくのだというものだ。
但し、姉妹の間で描き方が異なる部分が多少は存在する。著者が掃除編の単なるコピーにならないよう、多少のスパイスを効かせたふしがある。例えば、姉はテレビにも登場して顔が売れているが、妹の方は著書にも顔を出さず、マスコミへの露出もないため、そもそも素性が明らかでなく、それが利用客の想像と実際とのギャップを生むところが毎回面白い。ダイエットアドバイザーなのに痩せてない、せいぜい30代だろうと予想しているところに、どう見ても50代というおばさんが登場するのである。その辺は、道行く人に「あ、大庭十萬里だ」と言われてしまう姉とは好対照だ。
また、姉の掃除編の時には、事実質問を繰り返す対話型ファシリテーションのお手本のような内容だった。それと比べると、妹が主人公のダイエット編では、ストレートな意見表明が多くてちょっとお説教じみているところがあった。著書に収録されている「チェックリスト」も、姉の場合は、その質問が何につながっていくのかが回答者には想像しづらく、「こう答えて欲しいんでしょ」という読みが働きにくい質問が多い印象だが、妹の著書にある「チェックリスト」はわりとストレートな質問が多いように感じた。
そんな違いもあって、対話型ファシリテーションのケーススタディとして読むには『あなたのゼイ肉、落とします』は物足りないところはあったが、いくら運動してもウェートが落としづらくなってきたオジサンとしては、家の中や職場の机の上の整理整頓よりも、ダイエットの方が心の琴線に触れる作品ではあったと思う。単純に娯楽作品としては面白くて、最初から最後まで、ページをめくるスピードは落ちなかった。週末読書としては最適だ。
ダイエットの成功に向けたアプローチの仕方は、人それぞれだと思う。基本は摂取カロリーよりも消費カロリーを増やすということに尽きるのだが、それに向けた方法論はいろいろあるだろう。僕自身にとっては、ダイエットそのものを目的化するのではなく、他に打ち込めるものを目標に据えるというのが最も自分に合っているアプローチだろうと思う。従って、18歳女子高生の話がいちばん面白かった。
こういう、のめり込める本を集中して読むことも、駄菓子に手が伸びるのを防いでくれそうだ。そういう意味でも、こんな作品は週末読書に最適だ。
2017-05-16 09:00
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