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お蔵入りしそうな報告書 [ブータン]

ご無沙汰しております。のんびりした国に住んでいながら、4月以降ほぼ毎週末も仕事をしていた感じでして、そもそも新聞記事のチェック自体もあまりしていませんでした。山は越えたと思いますが、依然として片付いていない仕事が多くて、あまり気の利いたブログ記事が書ける余裕もないのが現状です。とはいえ、新聞記事のチェック自体は再開したので、少しずつでもご紹介して行ければと思います。

G2Cは改善余地あり―第11次五カ年計画に関する調査
BTI survey on 11th Plan Implementation finds G2C can do better
The Bhutanese、2017年2月18日、Sonam Yangdon記者
http://thebhutanese.bt/bti-survey-on-11th-plan-implementation-finds-g2c-can-do-better/

【ポイント】
2月17日、ブータンの民間シンクタンクBTI(ブータン透明性イニシアチブ)は、第11次五カ年計画に関する市民の捉え方に関する調査の結果を報告した。この報告会には、上院議員や金融機関関係者、市民社会組織の関係者等が出席した。

調査は、国際コンサルタントのネイムール・ラーマン氏の指導の下、パロ、シェムガン、ルンチの3県にて実施。合計793世帯で聞き取り調査が行われた。調査項目の中には、保健、衛生、水、教育、農業、環境、文化、G2Cサービス(公共サービス)提供等が含まれる。

その中では、救急車サービスへのアクセス、薬局での医薬品購入費用の高さ、国内移動にかかる費用の高さ等が問題点として指摘された。

特に重大なのは、G2Cサービスの効率性に関する指摘である。ラーマン氏によると、回答者の多くがこのサービスの提供のされ方に不満を感じているという。近隣のコミュニティITセンターでオンライン申請・利用が可能なサービスである筈のG2Cは、処理速度が遅く、申請完了までにかかる時間が長すぎる。G2Cサービスのうち、約20項目についてはオンライン申請された実績が全くない。インターネット接続の遅さがこのサービスの大きな妨げになっている。

この最終報告書は、3月までには公表される見込みである。

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忙しかったと冒頭書いておきながら言うのはちょっと憚られるが、実は今月中旬、インド・デリーに歯の治療に出かけていた。なんでデリーなのかというと、先月出張でインドに行った際、それまで1カ月我慢していた歯の痛みがどうしょうもなくなって、左の頬が見事に腫れてしまい、治療を受けざるを得なくなったからだ。デリーでの歯科治療は10年前にかなり嫌な経験をしたので、できれば避けたかったのだが、どうにも痛みが我慢できず、それで飛び込んだ歯医者さんで、神経を抜いて化膿も取り除いてもらった後、先生から「2、3週後にまた来て下さい」と言われた。それが、今回のデリー行きだったというわけ。

歯の治療は15分ほどで終わり、晴れて解放された僕は、久々のデリーでの残りの週末を、いろいろな形で楽しんだ。その1つが、ネイムール・ラーマンさんとの夕食だった。僕とラーマンさんは10年以上の付き合いがあり、一緒に仕事したこともある。今回のBTIの仕事を受けられてから、去年の秋にラーマンさんがブータンに来られた時には僕が夕食をおごった。そのお返しもあって、今回はラーマンさんがご馳走してくれた。肉づくしのパンジャブ料理、久し振りに食い物を見るのも嫌というほど肉料理を食わされた(苦笑)。

さて、その夕食の際、ラーマンさんから、「ところでBTIのレポートは公開されたのか?」と訊かれた。

記憶にないと答えると、ラーマンさんが、そうだろうなぁと苦笑し、2月の出来事について教えてくれた。

その時にラーマンさんが受けたインタビューが新聞記事に載っていると聞いたので、2月の新聞を読み直して、この記事をようやく見つけたという次第である。The Bhutaneseは週刊タブロイド紙で、比較的政府に対して厳しめのトーンで記事を書く。セミナー会場にクエンセルの記者がいたのかどうかは知らないが、2月18日付のクエンセルはこのBTIのセミナーのことは全く触れていない。

ちなみに、僕はこの時期日本に帰っていた。ラーマンさんはそれを知っていたので、2月のブータン入りの際には僕に声をかけなかったのだが、BTIからはセミナーの案内はもらっていて、僕は欠席と返事をしていた。

記事の要約はラーマンさんから聞いた内容とほぼ一致する。公共サービスに対する市民の不満が幸福度にも影響を与えているというのは、ブータン研究所(CBS)が2015年に行ったGNH全国調査の結果でも明らかになっているし、2018年7月から始まる次の第12次五カ年計画の中でも公共サービスの信頼度の向上は目標達成を測る指標の1つとされている。でも、具体的にどの公共サービスが市民には不満なのかは今までよくわからなかった。

BTIの調査は、その点を明らかにしてくれる有用な調査だと聞いていた。

でも、ラーマンさんが送った分析結果は、BTIの予想をも上回る厳しいもので、セミナー会場でも議論を呼んだらしい。現政権に対して是々非々の姿勢をとる国会上院はもっと話を聞かせろとなったが、ラーマンさんの分析結果の取扱いは、BTIに任せてもらいたいということで話は収まったという。

「ゲオッグ(郡)にはコミュニティITセンターというのがあって、そこに行けばG2Cサービスのオンライン申請ができると言われているけれど、オンラインで手続を完了するのに45分から2時間はかかるので、みんな利用したがらないんだよ」「それだけ時間がかかるんだったら、その分郡庁に行って紙ベースで申請手続を済ませちゃうよね」―――ということであった。

ちなみに、BTIのHPを見たけれども、昨年12月末以降更新がされておらず、当然最終報告書も出ていない。また、僕は4月にBTIの関係者の方々と話す機会もあり、彼らも僕がラーマンさんと親しいというのも知っているが、この最終報告書の話は先方からは一切出なかった。

G2Cが誰の肝いりで始まった取組みなのかは言わずもがなである。ラーマンさんの分析結果の取扱いがBTIに一任されたということは、最終報告書がBTIの一存で非公開になってしまう可能性もあるということだろう。或いは、ラーマンさんの厳しめのトーンを相当薄めるための加筆修正作業で手間がかかっているということなのかもしれない。

いずれにせよ、BTIがこの最終報告書をどのような形で世に出すのかは要注目だ。

タグ:市民社会
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