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『上京物語』 [読書日記]

私事だが、うちの長男が7日に大学の入学式を迎えた。昨年全滅した大学受験。捲土重来を期して臨んだ今年は、1校を除いて全て合格し、第二志望だった大学に入学することになった。異国で単身赴任中の父親としては何も力になってやれなかったけれど、自分自身の力でここまでやってきたことは称賛に値する。失敗も良い経験として、これからの大学生活に臨んでくれるものと期待したい。

以前、喜多川泰著『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』をご紹介した際、この本、浪人生活確定で高校卒業を迎えた長男に、気分転換で読んでみたらと言って薦めたと書いた。結局読んでくれたのかどうかはいまだにわからない。それから1年経ち、大学生になった長男に、父親として贈ることができそうな気の利いたメッセージは僕自身の言葉としてはなかなか思いつかない。やっぱり喜多川泰の著書でも読んでみたらとは言いたい気持ちはある。押し付けがましさは多少あるけれど、今の長男の境遇からすればそれも許されるタイミングだろう。一浪の末に大学に合格し、親元を離れて東京に向かう「祐輔」が主人公となるこんな本がいいかなと思う。

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

  • 作者: 喜多川 泰
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2009/02/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
夢を夢で終わらせないために……。自分にしかできない生き方を見つけたいあなたに贈る、五つの新常識と三つの方法。魂を揺さぶるメッセージで読者の心を惹きつける喜多川泰氏の最新刊!
<こんなストーリー>
成功を夢見て上京した青年、祐介。いい暮らしがしたい。かっこいい車に乗りたい。自分の家が欲しい。誰もが思い描く「理想の人生」を追い求めていたはずだったのだが……。大きな希望に胸を膨らませながら人生のスタートラインに立ったのに、みんなが当たり前だと思っている常識に流されて生きていくうちに、いつのまにか夢を忘れ、「こんなはずじゃなかったのに……」と後悔する。そんな多くの人が陥りがちな生き方を打ち破るには、何をすべきなのか?本当の幸せをつかむための考え方、心の持ち方とは?父から息子へ贈る渾身の手紙によって、夢を実現する「成功者」の生き方が少しずつ解き明かされていく!

1つだけうちの長男と置かれた状況が違うのは、本書で出てくる「祐輔」というのは、地方出身者で親元を離れて一人暮らしを始めることになっていること。うちの長男は東京生まれで、大学も都内なので、取りあえずは自宅から通学するらしい。「祐輔」の父親が息子に贈った手紙の中で出てくる架空の人物「祐介」が羨んだ、自宅通学、自宅通勤でお金が貯まりやすいという状況にはうちの長男はあるわけだが、だからといって本書が読者に伝えたいメッセージが、うちの長男には当てはまらないというわけではない。

全部書いちゃうとネタばらしになってしまうので、ほどほどにとどめておきたいところだが、本書の中で気の利いた記述は幾つかあったので、ここで紹介しておく。

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人から喜ばれることをコツコツやることが、私の一番の幸せです。

他人となんか比べなくても、昨日の自分よりも一歩でも前進しようと努力しているとき、人は幸せを感じるようにできている。

世の中の多くの人が「安定」だと思って頼って生きているものは、実はほとんどの場合、「みんなもそうだから」ということ以外、何の根拠もなく、実際にはとても脆いものだということがよくある。

本当の安定というのは、自分の力で変えられることを、変えようと努力しているときに得られる心の状態のことをいう。

貴重な財産である「時間」を投資すれば、それこそ大きなものとなって返ってくる。

これまでにこの世に生きた成功者たちは、次の二つのことに特に時間を投資してきたという点で共通している。一つは頭を鍛えるため。そして、もう一つは心を鍛えるため。

一生自分の好きなことをやって生きてゆく強さが欲しければ、人間の持つ一番の武器である頭を鍛え続けなければならない。

やりたいことは、そこら辺にあるものからふっとわいてくるものではない。自分がやったことのあるものの中からしか生まれてこないんだ。やらずにわかる人なんていない。自分が一生をかけてやりたいと思えることは、時間をかけて、真剣に取り組み、工夫を重ねた経験があることの中からしか生まれてこない。

やりたいことというのは、自分が世の中の人の役に立てると自信が持てること、それを通じて人を幸せにできると思えるものの中にこそある

仕事でなくても、努力を重ね、真剣に取り組み続けていることがある人は、それに関係した仕事を自分の人生を通じてやりたいと思う日が遠からずやってくることになる。

誰よりも多くの成功を手にした人は、誰よりもたくさん挑戦した人でしかない。同時に、誰よりもたくさん失敗を経験してきている。

普通の人が失敗と呼んでいる出来事こそが、人生に感動や感謝、新しい出会いといった、幸せな人生を送る上での必要なものすべてを運んでくれる

常識の殻の外に出て、新しく成功者の常識を身につける具体的な方法は何か。そう、本を読むことだ!それも、良い本を。そうすれば、頭も心も鍛えられる。そして、幸せな成功者になる方法を自分の力で見つけていくんだ。

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そういえば、今週、うちの次男からの電話取材で、お父さんのような仕事を目指すなら今からやっておかないといけないことは何かと訊かれ、僕は「本を沢山読め」と答えていたのを思い出した。意外と僕もイイ線いってるかもね(笑)。

幸せに関する上記の引用も、GNHを謳っているブータンの人々に聞かせたいくらいだ。何でもカネ、カネになりつつあると嘆く人もいるくらい、賞金が付かないと努力しない人も現れてきているこの国で、幸せに生きるとはどういうことなのか、改めて考えてみるのに良い引用だと思う。

ついでに言うと、ここの国で起業がはやらず、若者がやたらと公務員を志望する傾向があることについても、本書を読んでたら「ヤバいな」と感じるところがある。

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成功する人というのは、今この瞬間からでも、やりたいことを始められる人

父さんがおまえに「明日から会社をつくれ!」って言ったら、おまえは何て答えるかな。おそらく「無理だ」と言うだろう。その理由は何だろう?

 お金がない。
 コネがない。
 事務所がない。
 働き手がいない。
 経験がない。
 できることもない。

「それなら、おまえよりもお金がなく、コネも事務所もなく、働いてくれる人もいない、経験もない、その他おまえの考えるできない理由をすべて同じように持っている人は、絶対に会社をつくることができないと断言できるか?」

やりたいことがあって、それをゼロから始める勇気があって、ゼロからでも始められる方法をつくり出す頭脳さえ持っていれば、誰だって会社をつくることはできるんだ。

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そう、起業を目指させるために、ブータン政府は融資へのアクセスを改善しようと躍起になっている。コネがないとなかなか起業できないという声もよく聞く。さらには、「経験がない」「見たこともない」というのも、行動を起こさない理由になっている。そういう言い訳を並べて、自分にはできないと言う。自分ではない誰かが行動を起こしてくれるのを待っているだけで、自分から現状を打開しようと小さな一歩すら踏み出すこともしない。

ことは起業だけのことではなく、新しい何かが必要だという時、自分ではない誰かが、往々にして政府が何かをすべきだという意見を平気で口にする。

最近、日本に行ってコミュニティ・スポーツが盛んなのに感銘を受けたというブータンの学校の体育の先生が、「政府はコミュニティのスポーツクラブを作るべき」と発言しているのを耳にして、笑ってしまったことがある。「そんなの、政府じゃなくてあなたにその気があればすぐに作れるのでは?」と思わず突っ込んでしまった。

つべこべ言わず、とにかく自分で行動しろ―――そういうことなのである。そこの部分の意識変革を起こさないと、融資にアクセスできるからといって若者は起業はしないと思う。政府が雇用対策に躍起になったとしても、若者を甘やかすだけに終わるだろう。

元々本書は長男に読んで欲しくて紹介したものだが、ブータン人の幸せを考える上でも、また僕自身の幸せを考える上でも、示唆に富んだ記述が多い作品だった。

タグ:喜多川泰
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