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現地生産のスポーツカー? [ブータン]

現地生産のスポーツカー、コンペでデビュー
Locally built sports car debuts at innovation competition
Kuensel、2017年3月31日、Younten Tshedup記者
*URLは存在しません。HP上では記事閲覧ができないのです。

2017-3-31 Kuensel2.jpg
《記事が存在した証しとして、写真撮っときました。》

【ポイント】
3月30日、ティンプーにおいて、第2回テクニカル・イノベーション・コンペが開催された。主催は労働人材省。2014年に第1回コンペが開催されて以降、初めてのコンペに出展された作品は6点だった。

うち第1位を獲得したのは、ブータンテレコムの電波周波数エンジニアであるジグミ・タクテン氏の制作した「自動横糸巻き取り機(Automatic Winding Weft for Shuttle)」。ジグミ氏は、母親が手織りを営む姿を間近に見て、このアイデアを発想。マイクロコントローラーArduinoを用いたリニアアクチュエーターで、12ボルトの電圧で駆動させる。プロトタイプ制作費は7850ニュルタム。氏はこれを商業生産につなげたいと意気込んでいる。

第2位は、チュメ技術訓練校(ブムタン県)の教官、クンザン・ゲルツェン氏の制作した改良ボカリ(ストーブ、Bukhari Radiator)。ボカリで薪を燃やすとエネルギーのロスが発生する。薪のエネルギーの90%は煙となって放出されてしまう。氏はこのボカリの熱で温水を生産し、これを室内に循環させることによって、室内温度を長く保てるシステムを開発。これにより90%のエネルギー喪失分の25%は節約できるという。

第3位は、ランジュン技術訓練校の教官、リンチェン・ドルジ氏が制作した「ハイブリッドLEDフェンス(Hybrid Eco-Friendly LED Fencing)」。農地への野生動物の侵入を防ぐシステムのプロトタイプで、太陽光を利用して蓄電し、日中は侵入者を感知してサイレンを鳴らし、夜間はサイレンに加えてLEDライトで侵入者を照らす仕組みになっている。

しかし、会場の注目を最も集めたのは、サムチ県で自動車整備工場を営むツェリン・テンジン氏が制作したコンバーチブル・スポーツカーだった。この車はマルチ・スズキ製のMulti 800とMulti Swiftのパーツを合体させ、双方の利点を組み合わせて1つの車体に収めたもの。コンバーチブルはブータンでも珍しく、今後この車が路上走行できるよう、関係機関と協議を進めるとのこと。

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実に不思議な記事である。3月31日付けクエンセルの第1面を先日ご紹介したティンプー市のスクールバス運行サービス等と分け合い、第2面の続きでは紙面の3分の2を占拠し、かつ労働大臣がスポーツカーに乗り込んでハンドルを握る姿まで写真に掲載されているのに、クエンセルのHPには載っていない。単なるど忘れかもしれないが、何か裏があるかもしれない。

この記事、上位入賞作品のストーリーを読むとかなり面白いのだが、ヘッドラインと記事の内容が全然合っていない。ヘッドラインでこれだけ「スポーツカー」を持ち上げておきながら、記事の中で最初に出てくるのは自動横糸巻き取り機。スポーツカーの話は終盤にようやく出てくるぐらいだし、正直言って、マルチ・スズキの車両2台から未だ使えそうな部品を組み合わせて1台のコンバーチブルを作ってみましたというぐらいで、駆動系が電気というわけでもなく、どこがイノベーションなのかよくわからない内容だ。従って当然上位入賞も逃している。

以前も書いたが、車台はともかく、駆動系に電気を用い、車体に木を使った木製電気自動車でも作る人がいたら、すごく褒めてあげたくなる。今ティンプー市内では市当局の指示で杉の木がガンガン伐採されている。スギ花粉対策だと言われているが、こうして大量に出る杉材を使用した木製電気自動車の開発は、立派なイノベーションだと僕は思っている。電気自動車普及は、トブゲイ首相の宿願でもあるし。

この記事を書いたYounten Tshedup記者は別の記事でもヘッドラインと中身が全然違うというのをやらかしたことがある。他の記者でも時々見られるが、今回の記事はとりわけひどい。これじゃ上位入賞者が可哀想だ。ニュース素材提供する側と取材する側の思惑が完全にズレていて、とても残念な記事になってしまっている。

さらに驚きなのは、今回のコンペ、2014年の第1回開催から3年も経ってようやく第2回が開催され、それにも関わらず6点しか出展されていないというところ。寂しさが漂う。写真をご覧いただければわかると思うが、広い会場に展示物は殆どなく、どうということはない車が1台目立っているという状況だ。こんなコンペをやってたことすら僕らは知らなかったし、大々的に見せられるような代物でもなかったことが窺える。これがインドだったら、毎年3月にデリーのラシュトラパティ・バワンで、大統領主催の展示会が大々的に開かれ、全国各地の中学生や高校生の発明品が所狭しと展示され、メディアでも「これぞインドのジュガード(工夫)の底力!」と取り上げられるだろう。

繰り返すが、この記事はウェブ上では閲覧できず、事情はどうだったにせよ、このままでは闇に葬られる。スポーツカーがどうかというのはともかくとして、1位から3位までに入賞した作品にはそれぞれ非常に惹かれるものはあるし、制作された方々には拍手を送りたい。できれば会って実際の作品を見てみたいとすら思う。こんな労作が闇に埋もれるのはもったいない。

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Sanchai

第2位になった作品の製作裏話が紹介されているブログがあるので、もしよろしければそちらもご笑覧下さい。
http://www.yumeippai.com/?p=740
by Sanchai (2017-04-09 23:50) 

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