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慢性貿易赤字について今思うこと [ブータン]

貿易赤字、320億ニュルタム規模
Trade deficit widens to Nu 32B
Kuensel、2017年3月10日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/trade-deficit-widens-to-nu-32b/

2017-3-10 Kuensel.jpg

【ポイント】
2016年の貿易収支統計によると、ブータンの貿易収支は321億ニュルタムの赤字だった。これは2015年の328億ニュルタムからは若干の改善となる。電力輸出の増加が貢献したものとみられる。電力輸出収入130.3億ニュルタムを除いた貿易収支は、449億ニュルタムとなり、これは前年の446.8億ニュルタムから拡大したことになる。

ブータンの輸入総額は673.6億ニュルタム。そのうち83%に相当する552.8億ニュルタムがインドからの輸入である。輸出総額は352.5億ニュルタムだが、うち90%は対印輸出によるもの。よってインドとの貿易収支は232.3億ニュルタムの赤字で、それ以外の国との貿易赤字88.9億ニュルタムを大きく上回っている。

電力は最大の輸出品目であるが、年間30億ニュルタムにのぼる対外債務の返済を売電収入によってカバーしなければならない構造となっている。

主な輸入品目としては、軽油が最大で57.7億ニュルタム。これにガソリンを合わせると75.3億ニュルタムとなる。車両輸入(スペアパーツ含む)の増加(69.4億ニュルタム)に伴い、燃料の輸入も増える構造となっている。その他の輸入品目としては、野菜、乳製品、肉類、米、輸送車両・ダンプ・重機等が続く。米の輸入は15.3億ニュルタム。

電力に続く輸出品目としては、フェロシリコンが最大で68.3億ニュルタム。これにセメント(16億ニュルタム)、カルダモン(13.4億ニュルタム)、炭化カルシウム、ドロマイト、炭化珪素、ジャガイモが続く。

輸入相手国は、第1位のインドに続き、タイ、中国、日本、韓国、シンガポール等が続く。

ブータン政府の進める輸出促進、輸入代替政策は、貿易収支の改善には効果薄で、2013年以降悪化傾向が続いているようだ。

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ブータンの新聞には出典明記がされていないことが多いが、貿易収支統計は財務省歳入税関局(DRC)が発表しているようである。毎年このタイミングで公表されているのかどうかは、通年で済んだことがないからよくわからないし、プレスリリースなどを財務省が行っているのかどうかもわからない。1面のトップストーリーで取り上げられているけれども、意外とニュースネタの穴埋めとして使われたのかもしれなかったりする。

自分でこの記事の要約をブログに書いたりしていると気付くことは幾つかある。

例えば、輸入総額に対して上位の輸入品目の輸入額がそれぞれそれほど大きくない。ということは、輸入品目がそれだけ多岐にわたっているということの証左だろう。ブータンはなにせ人口が75万人程度しかいない、マーケットの規模としては非常に小さな国であるため、自国で生産しようというわけにはいかないも品目が相当数ある。農産品も、隣りのインドの方が安いので、多くの品目が流入してくる。

また、主要な輸入相手国として挙がっている国々も、感覚としてそうだろうなと納得がいくものの、順位的に日本の方が韓国よりも先に挙がっているのには少しばかり驚いた。乾麺類や携帯電話、自動車等、韓国製とおぼしき消費財はまちなかでよく見かけるけれど、メイドインジャパンは車以外ではあまり見かけない。もっとも、ランクルや日産リーフ等は韓国車よりも単価は高そうだし、橋げたのようなブータンでの製造ができないものは日本で製造して持ってきているかもしれないので、品目数は少なくても、単価が高いというのが多いのかもしれない。

既報の通りで、主力輸出品目の電力が、水力発電所の完成の遅れによって左右され、国の開発計画の財政見通しさえ危うくしている。一方で、いずれ車両登録台数の推移も調べてみたいと思うが、モータリゼーションの動きは加速している。このままでは車両輸入台数の増加に伴って燃料輸入も増えていく構図が続くだろうから、輸入代替を図るというのは当然の方向性で、だから電気自動車へのシフトというのトブゲイ首相が頻繁に口にするのもわかるような気がする。

でも、それがもしうまく行っても電気自動車の輸入は増え続けることになるから、いっそのこと、電気自動車そのものを作っちゃったらいいのになと思ったりもする。電気自動車はガソリン車と比べてパーツの品目数が少なく、中小企業でも参入しやすいらしい。だったら、車台は輸入かもしれないが、車体(ボディ)は木製にしちゃうとか、やれたら面白いかもしれない。多分相当高額になるだろうから、国内普及用というよりも、輸出用に限定されちゃうだろうけど。

AERA(アエラ) 2017年 3/6 増大号【表紙:AAA】[雑誌]

AERA(アエラ) 2017年 3/6 増大号【表紙:AAA】[雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/02/27
  • メディア: 雑誌

木製電気自動車のアイデアは、上記週刊アエラの電気自動車特集記事を読んでて閃きました。

放っておいたら貿易収支が改善に向かうという状況は、なかなかイメージしにくいというのが正直なところです。僕は、デジタル工作機械がブータンにあれば、ネット上でのデータのやり取りとそれに現地ニーズに合ったカスタマイズを施して現地生産でき、貿易構造の改善に貢献できるのではないかと期待している。手足を動かして苦労しながらものを作るというのがなかなか受け入れられないこの国で、それもまた容易ではないことなのだが…。

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