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『終の日までの』 [森浩美]

終の日までの (双葉文庫)

終の日までの (双葉文庫)

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/02/16
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
母が他界した五年後に、独り暮らしの父が亡くなった。納骨を済ませ子供たちは実家に集まり、ぽつりぽつりと両親の想い出話をする。遺品整理を始めたところ、父は意外なものを遺していた。そして初めて父の家族に対する想いを知るのであった(「月の庭」より)。大切な人の死や老いに直面したとき、生きている今、何をすべきか…。前向きに生きるその先には、救いの光が見えてくる。“人生の閉じ方”を描く「家族小説」第八弾!

森浩美作品は久しぶりだなと思って最後にいつ読んだか調べてみたら、2014年6月の『ひとごと』だった。その時の感想の中で、経済学の「限界効用逓減の法則」という言葉を使い、森作品を沢山読んできて、多く読むにつれて何となく展開が読めてしまい、味わえる感動も少なくなってきたなどと書いていた。

約3年のブランクを置いて久々に読んだ森作品は、ひと言で言えば新鮮だった。今回扱ったテーマも良かった。良かったという言い方には語弊もあるけれど、身近な人の死を絡めた短編が8編収録されている。家族小説というジャンルからは外れるものではないが、これだけ「死」を絡めると、ある意味では鮮度が増す。昔の重松清作品でもよく扱われたテーマで、「重松清?」と錯覚させられるぐらいにイメージが近い。そして、暗いエンディングにしていないところがいい。それに、舞台が中央線沿線っぽいのもいい。

どの作品も、扱っている「死」も誰の目線かも異なる。職場の元上司や出世頭の同僚の死だったりもするし、本人の自死だったりもする。勿論家族小説だから家族は登場するが、亡くなる人は家族でないケースもある。1編40ページほどなので1話ごとで区切って読めるのが良い。

どの作品も良かったけれど、強いて挙げるなら最後の「三塁コーチャーは腕をまわせ」だろう。僕が妻とショッピングに行くとよく言うのが「迷ったら買え」である。やって後悔するよりもやらないで後悔する方が後悔の度合いが大きい。今のように周囲が輸入品ばかりの小さな国に住んでいるとなおのことで、お店にある品物を見て買おうか買うまいか躊躇して結局買わなかったりすると、翌日同じお店に行くと、もうその品物はなかったりする。その時の悔しさといったらない。

敢えて苦労を背負い込むようなことも何度も経験してきた。その都度苦労は強いられるが、終わってみれば良い思い出にはなった。勿論、やらないで済ませて結果を後悔するばかりでもなく、ホッとしたケースも沢山あるが。

先週、そんな苦労をわざわざ自分から率先して背負ったケースがあった。セミナーの企画を職場の同僚に持ち掛け、開催と引き換えに自分がまったくの門外漢であるようなテーマで20分間のプレゼンを自らやったのである。しかも、その準備は一時帰国の終盤から始め、プレゼン資料は帰りのフライトの機中で作り始めた。ブータンに戻ってから本番までは中1日、とんでもない強行軍で、どうなることかと思ったがなんとかやり遂げた。その後の質疑応答も無事にこなせた。ショボいプレゼンだったけれど、やらないよりはやって良かったと思う。

そういう、緊張を強いられる体験をコツコツ積み上げていくことが、人生に彩りを添えてくれて、振り返った時に「オレの人生もまんざらじゃなかったな」と思わせてくれるのだろう。

そして今、また火中の栗を拾うような決断を下そうとしている。迷ったら前に出ろ―――自分の首を絞めるような新たな仕事だが、多分引き受けるのだろうなと思っている。

タグ:終活
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