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『ひたすら読むエコノミクス』 [仕事の小ネタ]

ひたすら読むエコノミクス

ひたすら読むエコノミクス

  • 作者: 伊藤 秀史
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2012/04/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
経済学は、世の中と人間を読みとく「文法」だ!
景気、失業、税金、規制、貿易、為替…。経済学と言えば、新聞やニュースでおどる、「マクロ」な経済問題をイメージされる方が多いかもしれません。
しかし実は、経済学には「文法としての経済学」という側面もあります。社会の仕組みや人間の行動を考え分析するための、「ツールキット」としての側面です。
経済学を通して世の中の様々な問題を考えていくことで、「◯◯は,こんなふうに考えることができるのか!」という新鮮な驚きと、「△△は,経済学で考えないと見落としてしまっていた!」という目からウロコの感覚を味わうことができるはずです。
ひとりで何かを決めること(合理的選択)から始まり、駆け引きのある決定(ゲーム理論)、多人数の意図が交差する市場の成功と失敗、などの基本的なトピックから、「インセンティブ」をキーワードに、現実の不透明な状況でどうすればいいのか、経済学を使って考えてます。
さらに、市場をうまく機能させるため仕組みを考えるの新しい理論(マーケット・デザイン)や、人々の様々な思惑が衝突するなかでの組織の仕組みの作り方(組織の経済学)、についても、経済学という文法で読み解いていきます。

今からちょうど2年前、トマ・ピケティ『21世紀の資本』がもてはやされていた頃、週刊東洋経済が経済学の特集記事を組んだ。その時、参考文献として紹介されていたのが本書で、1年以上経ってある程度ほとぼりが冷めてきた頃になって、BOOK-OFFで本書を見つけ、廉価で購入した。海外赴任までに読み始めることがかなわず、仕方なくそのまま赴任国に持って行ったが、結局現地でも読む機会がなく、そのまま日本に持って帰ってきていた。

取りあえず、この3週間の一時帰国中に、文字通り「ひたすら」読んで、読了というアリバイだけは作った。わからないところで立ち止まったりせず、ひたすら読み進めたので、ちゃんと理解できたかと聞かれるとかなり自信はない。

そういう場合は、取りあえず目次だけを列挙しておく。それによって、何が書かれているのかはある程度想像でき、必要な時にもう一度読み返したりもできるに違いない。但し、本書はどちらかというとミクロ経済学の副読本のようなものなので、これを1冊読んだら何らかの分析ができるのかと訊かれるとちょっと回答には困る。

【目次】
 第1章 経済学を知っていますか?
 第2章 「スマート」に決める原則:ひとりの意思決定
 第3章 駆け引きのなかで決める原則:ゲーム理論超入門
 第4章 多数の意図が交差する場所:市場の成功と失敗
 第5章 現実世界は霧のなか!?:不確実性と情報 
 第6章 サボりの誘惑に打ち勝つ:モラルハザードとインセンティブ設計
 第7章 真実を引き出す:逆淘汰とインセンティブ設計
 第8章 見えざる手は創れるか?:マーケット・デザイン
 第9章 思惑の衝突を超えて:組織デザイン

僕らがミクロ経済学を大学で勉強したのは1980年代の半ば。その頃はこの中のせいぜい第2章ぐらいが取り上げたに過ぎなかったのが懐かしい。それから30年、経済学の理論も現実社会の出来事に合わせて進化が進んできた。きちんとキャッチアップしてきているわけではないものの、ゲーム理論、市場の失敗と政府の役割、逆に政府の失敗と市場の役割の再評価、マーケット・デザイン、組織論等、本書が各章にて取り上げてきた内容は、断片的にではあるがなんとなくは読んだりはしてきていたというのを改めて確認できた。

それが本書を読んでの収穫だったと思う。

読みながら、特にマーケット・デザインやインセンティブ設計の章は、今のブータンの様々な政策の是非を考える上では参考になるところも多いのではないかと思えてきた。良かれと信じて導入した政策が予想外の結果を生んでいるケースは見ていると幾つかあるようだし。また、組織デザインの章では、管理職のやってよいことと悪いこととの峻別に当たっての僕の基準が曖昧であることを指摘されている感じがした。

とまあ一瞬は本書をもう一度ブータンに持っていくことも考えたのだが、それはやめておく。本書はあくまでも副読本であって、ちゃんとした政策設計の成功事例や失敗事例は、そういうのを集めた本というのが他に存在すると思ったから。

たまにこういう本を読んで、30年前から何が変わったのか、確認しておくことは必要だと思う。
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