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『謎のアジア納豆』 [ブータン]

謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
山奥のジャングルで出会った衝撃的納豆ご飯。ぱりぱりと割れるせんべい納豆。元・首狩り族の優雅な納豆会席。中国湖南省の納豆入り回鍋肉。そして日本で見つけてしまった「究極の納豆」。本気度1000パーセントのノンフィクション大作。壮大すぎる“納豆をめぐる冒険”

発刊されていることは知っていても、書店で中身を確認するまでは容易に購入に踏み切れない本というのがある。高野秀行さんの近刊は、ブータンの納豆「リビ・イッパ」についても取り上げていると聞き、いつか読みたいと思っていたが、一度中身を見てみないと買う気にはなれず、今回の一時帰国まで引っ張って、近所の図書館で借りて読んでみたところである。

高野秀行さんといえば、『未来国家ブータン』の著者。『未来国家ブータン』も、4年前に図書館で借りて読み、ブータン赴任が決まってから電子書籍版を購入して、時々読み返して僕自身のブータン理解の一助にしている。その前著の中では取り上げておられなかった「リビ・イッパ」の話、近著では紹介されていると知り、今回も図書館で借りて読んでみることにした。

著者も認めておられるが、著者自身が実体験に基づいて「アジアの納豆」を語っておられるのは、タイとミャンマーの国境地帯に住むカレン族と、ミャンマーのシャン族、それにネパール南東部やインド・ミャンマー国境地帯のナガ族、それに中国・湖南省と日本の秋田県内陸部あたりが中心となっている。ブータンの「リビ・イッパ」については特に追加の現地調査をされておらず、来日していたブータン人に聞くとか、間接的な情報収集に終わっている。

それだったら、僕自身がブータンで「リビ・イッパ」探求の旅を行えばいい話だろう。うちの職場で受け入れていたインターンのサンゲイ君が東部メラの出身なので、村では大豆を発酵させた食品を日常的に食べていたのか聞いてみることぐらいからスタートしてみよう。また、東部に出張する職場のスタッフには、食べたかどうかを訊いてみようと思う。

著者によると、リビ・イッパは東南部のサムドゥップ・ジョンカル県あたりでは全ての料理に入っているのだという。それがモンガル県あたりだと、あることはあるけれども、チーズが入手困難な季節の非常食として利用されているというような微妙な立ち位置になるのだという。エマ・ダツィ等チーズをふんだんに使った料理が全盛の西部や中部では、大豆を発酵させる食品をなかなか見かけないのは致し方ない。でも、タシガンあたりの出身の人はティンプーでもよく見かけるし、ちゃんと探せばサブジ・バザールでも売られているかもしれない。

発酵食品はわざわざ自宅調理用には購入しないので、サブジ・バザールのそのエリアには足を踏み入れたことがあまりない。折角リビ・イッパのことを知ったので、一度ちゃんと調べてみて、ブログでもご紹介してみたいと思う。

さて、高野秀行さんというと、著書の多くは徹頭徹尾真面目なトーンでルポをされる作家ではなく、途中でおちゃらけた遊びの記述があるために、本屋でお金を払って著書を購入するというところで必ず躊躇を強いられる。図書館で読む習慣がなければ、著書をこれだけ読むということもかなわなかったに違いない。

しかし、こと本書に関しては、普段のちゃらい記述がわりと抑え気味になっていて、むしろ納豆を中心とした文化人類学のアカデミックなトーンがわりと目立つ記述となっている。それなりに先行研究も重視して引用しておられるし、本書で取り上げたテーマを突き詰めていけば、博士論文にだってなりそうな気がする。著者自身もそれを狙っておられるふしがある。このエリアに多少なりとも関わりのある人であれば、この本は座右に置いておいても決して損ではなく、むしろその地域での滞在生活を豊かなものにしてくれる可能性が高い。

どんな人でも、普段当たり前のように食べているものについて、嫌がられれば嫌な気分になるし、喜ばれれば嬉しい。その人の使っている道具や作る料理を褒めることは、その人の口を饒舌にしてくれる効果は必ずあると思うので(その分いろいろと食べさせられて胃腸をやられるリスクはあるが)、文化人類学のエントリーポイントとしては結構大事なアプローチの仕方である。なので、この地域をフィールドにしている人は、話のネタとして、その地の食文化を知れる本書のような本は手元に置いておくことが必須であるように思う。

僕も、著者が訪れたネパール南東部ビラトナガル郊外にあるブータン難民キャンプの周辺は訪れたことがあるが、その地域にも地元ならではの納豆文化が存在していることを事前に知っていたら、きっとフィールドワークの味わいもさらに深まったに違いないと思う。

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