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再読『現代ブータンを知るための60章』 [ブータン]

現代ブータンを知るための60章 エリア・スタディーズ

現代ブータンを知るための60章 エリア・スタディーズ

  • 作者: 平山 修一
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2005/04/14
  • メディア: 単行本

ほぼ5年ぶりの再読となる。前回は別の目的もあってかなりメリハリをつけて拾い読みをしたが、今回はブータンでの仕事も10ヵ月近くが経過してきていることもあり、書かれている内容と自分が見分してきたこととを照合することを目的に、全ての章をしっかり読んだ。今回健康診断を受けるために日本に帰ることになり、フライト時間が結構あったので、居眠りしている時間を除いて、パロ空港の待合室で読み始めて、バンコクでのなが~いトランジット待ちの時間を使って読破した。

この本は発刊が2005年だから、既に10年が経過している。しかも、その間に四代国王は退位され、2006年12月には現在の国王が戴冠されている。2008年には立憲君主制と議会民主制が導入され、総選挙に基づいて、民選の首相が任命されている。しかも、既に総選挙を経た政権交代も実現している。五ヵ年計画も、著者がこれを書いていた頃は第8次だったようだが、今や第11次の実施期間中であり、同時に第12次の策定準備が進んでいるところだ。

従って、歴史的経緯にかかる記述はともかくとして、いささか既述の古さを感じざるを得ないというのが再読してみての感想である。著者は現在インドネシアで別の仕事の当たっておられるが、そろそろ改訂をお考えになられてはいかがかと思う。タイミングとしては、2018年内がよろしいかと。

その理由の1つは、2018年7月からが、第12次五カ年計画のスタートとなること。さらに、現トブゲイ政権の任期が2018年6月までで、2018年は年明け後どこかのタイミングで必ず総選挙が行われ、新政権が発足すること。このタイミングで改訂版が出れば、少なくとも5年間は改訂版の記述の賞味期限は維持される。

もう1つの理由は、2018年が青年海外協力隊ブータン派遣30周年であることだ。著者ご自身も青年海外協力隊員としてブータンに二度赴任されているようだし、今こちらに来られているJICAボランティア(シニアボランティアも含めた総称)は、職種も割と豊富で、その数は40名を上回っている。そのネットワークを利用すれば、本書の各章の記述の見直しもある程度は可能ではないかと思う。勿論、協力隊員に限らず、僕を含めて今のブータンを知っている人が広く協力できれば、改定作業はかなり進められるだろう。

ブータンに長期滞在する人にとって、本書はバイブルのような1冊で、そうした人が毎年一定数いることによって、明石書店のエリア・スタディーズのシリーズは成り立っていると聞いたことがある。いわばそうした人々がいるという読みがなければ、本書の出版自体が成立しなかった筈なのである。だから、本書のお世話になった人は皆、本書と自分が見聞したこととの相違を確認し、その更新に協力した方がいい。

平山さん、いかがでしょうか? 

その場合は「60章」では不十分かもしれない。民間セクターやNGOに関する記述はあまり多くないし、教育に関しても、小中高の学校教育(教育省所管)については1章書かれているけれど、王立ブータン大学(RUB)所管の大学教育については既述があまりない。ゴミの問題は今の方がもっと深刻になってきている。スマホが普及して、フェースブックの加入率も高くなり、ソーシャルメディア上で特定人物を貶めるような匿名の書き込みが問題視されるケースが相次いでる。何章かの加筆は必要だと思う。

一方で、今回読み直してみて、既に著者がおられた頃から言われていた傾向が今日的にその意味を強めていると思われる記述もあった。著者ご本人の言葉ではなく、著者の友人の言葉として、「人びとは金儲けにばかり走らず、もっと大局を見て自身の行動を起こすべきである」というのが語られている。最近、僕は他の人の口から、「なんでもかんでも『お金、お金』という傾向がこの15年間でさらに強まってきている」と聞かされたばかりである。

タグ:平山修一
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