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ブータン西部の体験型商品見本市 [ブータン]

ガキ・ガテン-幸福の祭典
Gakyed Gatoen – Festival of Happiness
Kuensel、2017年1月29日、Thinley Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/gakyed-gatoen-festival-of-happiness/

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【ポイント】
体験型商品見本市Gakyed Gatoenが1月初旬から開催されている。これに参加している起業家のもとを消費者が訪れ、実際にその商品の生産・製作を体験してみることで、商品への理解の促進と生産者へのフィードバックを図ろうというプログラムである。

ティンプー、パロ、ハの3県の村落起業家がプログラムには参加し、その中の多くが、県産業振興関係者と経済省小規模零細産業局(DCSI)職員らとともに、大分県での研修に参加した、同県で始まった一村一品運動やオンパク事業という、地域資源を生かした地元産品やサービスの育成を通じて農村振興を目指す取組みを学び、加えてタイでの一村一品運動の企業家のもとでも補完研修を受けた。これらを持ち帰り、自身の商品開発へと反映を図っている。

プロジェクトでは、これら村落起業家が提供する体験型プログラムを1冊のカタログにまとめ、商店やホテル、レストラン、人が集まる公共施設、空港等に置いて、外国人観光客を中心とした想定顧客の目に触れやすいよう取り組んでいる。2016年のカタログへの出店起業家は、日本やタイでの研修参加者も含む67名だったが、2017年1月にスタートした2回目の見本市では、カタログ掲載起業家数が85名に増加している。

記事では、ハ県の乳製品加工組合のリーダー、ティンプーのエゼ(唐辛子和え)生産者、パロの茶店での紅茶テイスティングサービス提供者という、3名の女性起業家が提供するサービスの内容と、実際にティンプーでの生産体験に訪れた観光客との交流経験が紹介されている。加えて記事に使われている写真として、別の3名の起業家のサービス提供の様子も紹介されている。いずれのサービスも有料で、DCSI担当者によれば、通常の商品販売とは別の追加収入をもたらし、口コミで商品情報が広まるというメリットも期待される。

体験型見本市Gakyed Gatoenは、1月から2月末までの2ヶ月間を重点プロモーション期間としているが、それ以降もカタログ掲載起業家のサービス提供は行われる予定。

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先週土曜日のクエンセルの特集記事で、体験型商品見本市Gakyed Gatoenの様子が報じられていた。この見本市の話は、1月前半にご紹介した「草の根イノベーション」の記事の中でもご紹介している。JICAが3年間の予定で協力してきたプログラムで、この2017年3月で協力期間は終了する。

このブログでも数年前には何度か書いていたことなのだが、今や売れる商品の開発には消費者(ユーザー)の生産への参加はかなり重要なファクターである。そうすることで、消費者(ユーザー)の嗜好を商品に反映させることができるし、消費者(ユーザー)側でも、その商品開発プロセスに自分が参加したということで、当事者意識をある程度持って口コミで商品情報を広めてくれたりする。

このプログラムの場合、想定されるのはやっぱり外国人観光客だろうから、ブータンまで来て、世界で1つだけのブータン土産を自分で作って持ち帰ったら、後々までの自慢の種になるものもあるだろう。去年の8月、僕の家族が会いに来てくれた時、高校漫研所属のうちの娘に、ブータンの典型的な農村風景を水彩画で描くという体験プログラムを経験させてみた。VASTという、ティンプー市内にある若手芸術家の梁山泊のようなところである。そこに、JICAの研修から帰ってきたばかりという人がいて、たまたま僕は知り合いになったので、娘が来た時に水彩画の指導をお願いしてみた。娘は水彩画は初めてだと言っていたが、出来上がった風景画はなかなかの出来栄えで、娘は喜んで大事に作品を日本に持ち帰った。

外国人にとっては、エゼはかなり激辛の部類に入る。市販の瓶詰めのエゼは辛すぎるし、この国には瓶の国内生産施設がないので、瓶詰めの瓶もインドから輸入したデカいのしかない。だから、外国人観光客は持ち帰ることができない。小型の瓶が国内でも生産できるようになり、かつ辛さの調節が可能ならば、エゼは売れるかもしれない。瓶の生産施設はすぐには難しいかもしれないが、自分なりの辛さのエゼを自分で作り、それをラップに包むかタッパーに入れて持ち帰るというのでも、お土産にはなるかもしれない。そうした体験型サービスを提供する生産者の側も、そうすることで消費者の嗜好を学ぶことができる。

イノベーションは、同じ考え方をしている者同士が集まっていてはなかなか生まれない。この研修プログラムのミソは、取扱商品の異なる生産者や行政関係者が集まっているところにもあり、そうしたネットワークの中からも、新しい商品アイデアは生まれてくる。そういうところを狙って行われたプログラムだろう。

但し、課題もある。

1つは、生産者側に見られる固定観念へのこだわり。例えば、エゼ作りの体験は僕自身もしたが、「唐辛子を大量に入れないエゼはおいしくない」と言われてしまうと、辛いものが苦手な消費者は身構えてしまう。「チリ(唐辛子)抜きエゼ」と言ったら同僚のブータン人に僕も笑われてしまったが、唐辛子の苦手なうちの家族に食べさせるなら、そういうのも考えなければならない。

それに、仏教関連の木彫りやお面など、いかにもブータンチックなものは幾つかあるが、ここの国の工芸家の熟練度は、いかに決められたデザインのものを決められた通りに作れるかによると見られている。従って、伝統芸術と先端技術のコラボ、伝統芸術と近代デザインのコラボといった発想が、この国では生まれて来にくい。

例えば、島根県浜田市が支援した和紙製造技術をもって、ジュンシ和紙工房あたりがタクツァン僧院の飛び出すカードでも作ったら、軽量でいいお土産になると思うのだが、それには、タクツァン僧院、あるいは仏塔や仏像等をそういうコンテンツとして使ってもいいのかという、最初にクリアしなければいけない壁がある。しかも、デザイナーがどこまでデフォルメを許されるのかという課題も…。

もう1つは、それとも関連するが、生産者間での競争意識がまだまだ低いと感じる。カタログを見て思うのは、同じようなサービスがいくつも並んでいるという姿である。エゼ作り体験、織物体験、木彫り体験等々。ハ県のところなどは、餃子皮に地元産のそば粉を使った「ヒュンテ」という料理の体験プログラムばっかりで、どれに参加すればいいのか迷ってしまう。それが基本的に決められたフォーマットでしか提供されないのだから、まさに金太郎飴状態。

でも、そういうのを気付かせられるのは、消費者が生産者と交流することを通じてなのだと思う。「お宅のヒュンテと、〇〇さんところのヒュンテは、どこが違うのか」と訊かれてみて、生産者は初めて気付く。織物にしても、パターンは変えられない、変えられるのは糸の色の組み合わせということになるので、こんなド派手な色づかいではなく、もう少しシックな色の組み合わせはないのかといった注文は、消費者と交流しないと生産者には伝わらない。

このカタログ、パロ空港に到着すれば空港税関には置いてあるらしいし、パロやティンプーのホテルに宿泊すれば、ホテルには必ずフロントに置いてあるらしい。ブータンを出張で訪問予定で、週末をティンプーやパロ、ハで過ごされる方、あるいは観光旅行で来られるような方には平日でも勿論構わないけれど、是非このカタログを見て、お土産物づくりを実際に体験してみてほしい。それがこの国の生産者の意識を変えていくきっかけにもなる、ささやかな国際協力にもなると思うので。

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