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二国間でトラックが自由に往来すると・・・ [ブータン]

インドの運輸業者が国内で活動している
Indian trucks operating in Bhutan: Truckers
Kuensel、2017年1月21日、MB Subba記者
http://www.kuenselonline.com/indian-trucks-operating-in-bhutan-truckers/

【ポイント】
インド登録のトラックによるブータン領内2地点での貨物の積卸しが日常化している。昨年からバングラデシュ・ブータン・インド・ネパール四カ国車両相互乗り入れ協定(BBIN)批准が政策上の大きな懸案となっているが、トラック業界が表明してきた懸念が既に現実化している実態が記事では指摘されている。

ブータントラック業協会によれば、インドのトラックが南東部ペマガツェル県ナンラムから南部ゴムトゥ、ゲレフ、プンツォリンへと石炭や鉄滓を輸送しているという。同様に、南東部サムドゥップジョンカル県から国境沿いの工業都市に原材料を運搬するトラックにも、インドナンバーが多く、ブータン国内の運輸業者の仕事を奪っていると指摘されている。これらの都市間の移動は、いったんインドに出てインド国内の道路を使用する方が効率的。

現行の二国間協定では、インド登録の貨物輸送車両は、インドからブータンに貨物を輸送することのみを想定しており、こうしたインド領内を経由して輸送されるケースは灰色の領域となっている。ブータントラック業協会は、インド登録のトラックがブータン国内で積載することは認められないと主張。

これに加えて、ブータンのトラック運転手や運輸業者がインド領内で受けるハラスメント(違法な手数料の支払い請求や寄付の強要)や、インド人に売却されたブータン登録トラックが、登録変更なしでブータンナンバーのまま運行している実態も懸念されている。

政府はBBIN施行に伴うこうした個別の懸案事項にも考慮し、次の国会会期中に上下院合同審議により批准可決につなげたい意向。

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「連結性(Connectivity)強化」というのは南アジア全体を見た時には当然の流れなのだと思うが、そういう中で「陸の孤島」というのに近いブータンで、連結が進んだらどうなってしまうのかはずっと気になっている問題である。

一般的には物流が活性化されて、インドの荷物がより大量に、かつより安く、タイムリーに運ばれてくるようになるし、逆にブータンの産品がインド市場に出ていくこともより容易になるだろうという回答になるのだろうが、何せ狭小な国内市場向けの産業がほとんど育っていないこの国で、インド市場へのアクセスが期待できるからといってすぐに生産拡大が進むという保証などない。少なくとも短期的にはインドからの物資の流入の方がはるかに大きく、輸入超過が進むんじゃないかというのが想像できる。

ブータンの運輸業者がインド領内で嫌がらせに遭ってしゅんとする姿も、なんだかすごくリアルに想像できてしまう。ブータン人はインド人ほど押しが強くないので、インド人にガンガン来られたら、ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできないだろう。

同じ南部でも、東部のペマガツェルやサムドゥップジョンカルから中部のゲレフや西部のプンツォリンに移動するには、ブータン国内を移動するなら最低でも2、3日かかってしまうところが、インド領内を移動すれば5時間程度で行けてしまう。だから、このインド領内ルートの使用自体は合理的なのだが、誰がそれを運用しているかというところで、またぞろ「インド」というのが出てくる。法制度の抜け穴を見つけるのに長けた人たちだから、記事にあるような事態は大いにあり得るだろうし、制度の運用もそういうのを考慮して行われないとブータン側が損してしまう。

インドが大国だからと言って、ブータンからほど近い場所に大消費地となりそうな都市があるわけではない。デリーやコルカタをターゲットにして最初から事業を考えているようなブータン人企業家はものすごく少ない。短期的にはインド企業や外国企業の介在がないと事業が成立しにくい。また、中長期的には商売っ気のあるブータン人企業家が育って来ないといけない。

インドも西ベンガルや北東州が成長していかないとブータンも裨益しにくいだろうし…。

「連結性強化」を言うのは簡単だし、時の政権がそれを推進するのは当然のことだと思うが、それに付随して考慮して行かないといけないことは多いと改めて痛感させられる記事であった。
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