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『本当の強さとは何か』 [読書日記]

本当の強さとは何か

本当の強さとは何か

  • 作者: 増田俊也X中井祐樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
格闘技界最大レジェンドの「真の強さ」に、大宅賞作家が肉薄する最強本! 柔道と柔術を極めた伝説の格闘家と、木村政彦の遺志を伝え続ける作家による最強対談。相手の反則により、24歳で片目失明により総合格闘家を引退するも、数年後には柔術家として復活。日本柔術界トップとして多くの弟子を育てている中井の「強さ」の神髄に増田が迫る。二人が共に汗を流した、七帝柔道(北大)の秘話も満載!

先日の『VTJ前夜の中井祐樹』ご紹介の際に書かなかったが、僕の友人で世代的には既に40代を間違いなく迎えているのに、今も総合格闘技の試合に出ている人がいる。なんで中高年になっても格闘技が続けられるのか、それが剣道や合気道だったらわかるのだが、総合となるとキックやパンチが飛んでくるんだろうから、相当な覚悟がいると思う。友人といっても今はお互い異国に住んでいるので接点は多くはないが、最近Facebookでシェアされた映像を見ていると、MMA(混合格闘技)用のマットで、時にパンチグローブやキック用のパッドを付けて練習していたり、かと思うと柔道に似た道着を着用して寝技の練習をしていたりする。「総合」というからにはどんな格闘技にも対応できる幅の広いテクニックが求められるのだろう。

さて、本日ご紹介の本は、先日の『VTJ前夜の中井祐樹』のバーリトゥード・ジャパン・オープン95の惨劇から後の中井祐樹の歩みを垣間見ることができる1冊である。また、ある意味では、『七帝柔道記』以降の増田俊也の歩みを知ることのできる1冊ともいうことができる。

本書の前書きで、増田は「対談しているときから感じてはいたが、こうして活字になると、中井の言葉の切れ味の凄みはあらゆる人生啓蒙書を圧倒している。(中略)私としてはそういった専門誌で語っている言葉を少しレベルを落として一般向けに語ってくれればと思っていたが、実際には中井は格闘技雑誌にさえ語っていない厳しい言葉を、核心をついて語っている」と書いている。上記の書籍紹介にも、「中井の「強さ」の神髄に増田が迫る」とある。

この言葉を鵜呑みにして読み始めると、冒頭から随分と戸惑いを感じる。対談となっているが、全体の7~8割は増田がしゃべっている。中井が寡黙だというのもあるのかもしれないが、増田の問いかけが「俺は~~だと思うんだけど違うか」ってな自分の持つ仮説を先ず述べて、それに対して中井の同意を求めるパターンがだいたい決まっている。中井が「そうですね」と短く答えるセリフが頻繁に出てくる。中井の生の言葉の切れ味がどうこうって、そもそも中井の言葉を引き出せていない。むしろ、増田が持つ「中井祐樹」観、あるいは格闘技観等を確認、実証している1冊となっている気がする。だからといって、本書が読む価値がないとは全く思わないが。

1995年のVTJで右目を失明してからの中井祐樹の歩みを知ることができたこと、それと、中高年になっても総合格闘技の試合に出場している僕の知人がなぜそれができるのか、その理由を垣間見ることができたことが本書の収穫だといえる。なお、増田はパラエストラをWindowsに例えているが、僕はむしろiPhoneのオープンソースに似てるかなという気がした。全国各地にパラエストラの道場ができ、各々がその技術を磨いて独自の発展を遂げ、それが短期間で普及してしまうというのも、ブラジリアン柔術のオープンソースの性格を如実に示しているようで面白かった。
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