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医療サービスが無料だと病院も大変 [ブータン]

JDW病院スタッフの労働負荷高まる
JDWNRH workload increasing
Kuensel、2016年9月15日、Dechen Tshomo記者
http://www.kuenselonline.com/jdwnrh-workload-increasing/

2016-9-15 Kuensel.jpg

【ポイント】
9月14日(水)、ジグミ・ドルジ・ワンチュク国立レファラル病院(JDWNRH)は、初めての年次報告書を公表した。

JDWNRHが年次報告書の発表に踏み切った背景として、タンディン・ワンチュク保健大臣は、病院のサービスについて国民に知ってもらうこと、病院スタッフの労務負担について理解を深めてもらうことを上げている。単に病院スタッフがいかに懸命に働いているのかをアピールすることだけでなく、病院スタッフが患者に対して提供する日々のサービスにはどのようなものがあるのかを、読者に理解してもらいたいという。

JDWNRHのラブ・ドルジ病院長によると、病院スタッフの労働負荷は年々高まっているという。昨年の外来患者数は524,760人で、2014年の494,792人から29,968人増加している。年間の手術実施数は、2014年の6,743回から、昨年は7,669回に増加、出産分娩数は4,035件、帝王切開実施件数は1,033件を数える。これを、専門医71人、一般医10人でさばいているのが現状。

病床数は2014年の350床から2015年には381床に増やすなど、病院側でもサービス改善に向けた努力は進めている。神経外科学手術、泌尿器科の新設、癌手術、成人ICU、小児科・新生児ICUの新設等にも取り組んできている。

JDWNRHは19の専門科で903人のスタッフを擁する。

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保健大臣は、ブータンの病院における医療サービスの提供が遅いという利用者からの批判の声にさらされているらしい。そんな文句を言う前に、病院スタッフがどんな働き方をしているのか、利用者のニーズに応えるために、どれだけ頑張っているのか知って欲しい―――大臣のそんな心の叫びが聞こえてきそうな記事である。

この国、驚くべきことに医療サービスが無料である。ブータン国民だけが対象なのかと思っていたら、外国人の僕たちがJDWNRHにかかっても無料なのである。7月に僕が胸の痛みで悩まされて、骨折の疑いありでJDWNRHでX線検査を受けた時も、確かに無料だった。胸部のレントゲン写真を見て、担当医は「骨折の心配はない」と断言された。あまり鮮明な画像じゃなかったので、よく問題ないと言い切れるものだなと怪訝に思った。もうちょっといい機材でもあったら、もっとわかりやすい画像で読影も確実に行えるようになるに違いない。そういうのも、医療スタッフの負荷の軽減、利用者の顧客満足度の向上にはつながっていくだろう。

また、JDWNRHに患者が集中するような状況の回避策も要検討だろう。JDWNRHに来る患者さんの何割かは、地方から出てきて親類宅に身を寄せながら通ってきている人たちである。地方の病院ではろくな検査機器もないから、やっぱり首都の病院でしっかり検査してもらおうというので来ている。もし地方の病院の機材もグレードアップされて、スタッフも優秀な人が地方に留まるようにでもなれば、JDWNRHに対する圧力もある程度は軽減されるのではないかと思う。

ただ、無料で本当に財政的に大丈夫なのかと心配になる。以前もどこかの記事でブータンの疾病構造が非感染性疾患(NCD)に徐々にシフトしてきている状況だと書いたが、そうなると医療費負担もより高くつく。今の医療制度の財政的持続性はかなり重大な岐路に立たされていると思う。のっぴきならない状況になって初めて病院に行き、治療に膨大な時間とカネをかけなければならなくなる事態に陥る以前に、ことが深刻化する前に予防策を取り、健康な身体を維持することが、医療費の抑制にはつながる。JDWNRHの実態を知り、病院に負担を強いる代わりに病院に行かなくても済むよう健康維持を心がけてもらうよう仕向けて行くことは重要だろう。

勿論、その前提は、JDWNRHのスタッフが皆一生懸命働いていることである。僕はここの病院のスタッフの業務をずっと観察していたわけではないので確たることは言えないけれど、スタッフの働き方に工夫の余地がないかどうか、スタッフ自らが考えて改善していくことも併せて必要ではないかと思う。5Sなんて病院運営には導入されているやには聞くが、なんとなく、使用前使用後の写真をサンプルで見せられて、「ここをこうしなさい」と言われてやってるだけで、継続的かつ内発的なKAIZENには必ずしもなっていないような気がする。

タグ:保健医療
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