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『Made by Hand』 [仕事の小ネタ]

Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)

Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)

  • 作者: Mark Frauenfelder
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2011/06/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
「Makerムーブメント」を主導する雑誌「Make」の編集長、ブロガーとして知られる著者による、ビットの世界からアトムの世界への旅の記録。野菜作り、エスプレッソマシンの改造、シガーボックスギター作り、鶏小屋作りと養鶏など、さまざまなDIY体験を通じて、個人が物を作ることの意味を考える1冊です。「失敗とは恥ずかしいこと」、そして「自家製品は不完全なもの」という固定観念から抜け出して、身の回りの物理環境を創造、改良するという楽しみを、生活に取り入れていく過程をユーモアを交えて綴ります。自分にあったDIYをはじめてみたいと思っている方、Makerムーブメントの根底にある価値観を知りたいと考えている方におすすめです。

別に今住んでいるブータンが何もないから自分でものを作らないと生きていけないというつもりではないが、以前から気になっていた『Made by Hand-ポンコツDIYで自分を取り戻す』を読んでみることにした。先週後半から読み始め、週末にコツコツ読み進めて、今日早朝の読書で読み切った。翻訳が良くて読みやすかったが、上下二段組みになっているので、読み進めるにはある程度時間がかかったのだ。

芝生を枯らして家庭菜園にすること、エスプレッソマシンの改造、鶏小屋の整備と養鶏、お手製ギターの製作、紅茶キノコ(懐かしいでしょ?)の培養、養蜂と、DIY初心者の著者が、インターネットで調べたり、その道の有名人に教えを請うたりして、試行錯誤の末に徐々に成果を上げていく姿が微笑ましいし、羨ましい。

以前住んでいた別の南アジアの国で、僕は自宅の庭でニワトリを飼っていたことがある。本書の著者と同様、家の庭に前に住んでいた人が建てたと思われる小さな小屋があり、中をちょっと掃除すれば鶏小屋として使うことができた。いくらかの飼料は外で買ってきたが、日中は小屋の扉を開けてニワトリを庭に放ち、庭の雑草や虫を食べさせる。また、料理後の野菜くずや食べ残しも庭に撒けば、ニワトリがついばんでくれる。当然その間我が家の愛犬コテツ君は、鎖でつながれる。そうしないとコテツ君がニワトリを食べてしまうからだ。

ニワトリはやがて卵を産むようになる。何を食べさせたか把握しているから、卵は生でも食べられる。卵かけ御飯なんて我が家の定番だった。そして、卵を産まなくなってきたら、今度はニワトリ自身をいただく。唐揚げ等にして、食べ残った骨はコテツ君に食べてもらう。こうして我が家のゴミ排出量はかなり削減された。エコな生活だった。本書を読んでて、20年も前の養鶏経験を思い出した。

今は自宅の裏庭でそんなことをやれるようなスペースはない。サービスアパートメントでの一人暮らしである。でも、ベランダはあるから、その気になったら家庭菜園はできないことはない。ベランダ全然使ってないから、そういう使い方を考えてみても面白いかもしれない。「熟成と発酵」なんてのも面白そうだ。

ファブラボに置かれているデジタル工作機械などを前にすると、途方に暮れてしまう。一体、何を作ったらいいのかがわからない。そんな時、デジタル工作機械だけがものを作る手段じゃなく、日常生活を振り返ってみたら、結構自分自身で作ってしまえるようなものはいっぱいあるかもしれない。しかも、単純なものなら、カッターナイフで木を削るだけでもできてしまう。本書で出てくる木製のしゃもじなんて、まさにそのパターンである。そんなものでもいいというのなら、適用範囲はもっと広がるだろう。本書における著者の取組み事例は、どれも僕らの創作意欲をくすぐるものばかりだ。

今の僕なら、職場の自分の部屋の中をワガモノ顔でブンブン飛び回るでかくてウザいハエを、センサーで飛行方向予測して、ピンポイントで自動的にエアゾールを浴びせる機会なんて欲しいものである。殺生を嫌うブータンで、そんな装置を作っちゃったら、同僚のブータン人がどんな顔をするのかは不安だが。

雑感はこれくらいにして、本書で「これは!」という記述を幾つかご紹介しよう―――。

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彼ら(註:DIY愛好家)の秘密は、彼らが何か特別なものを持っているというよりは、むしろ何かを持っていないことにある。それは、失敗に対する恐怖感だ。ほとんどの人間は失敗を恐れる。そのため、自分の力量を超える技術を要することには手を出そうとしない。私が好きなDIY愛好家たちには、大学を中退しているか、大学には進まなかったという人が多い。高校すら卒業していない人もいるが、それは偶然ではないようだ。彼らは教育システムから脱出できたラッキーな人たちなのだ。学校では、失敗は成績の低下という懲罰の対象になる。私たちは、失敗は避けるべきものだと教えられてきたため、何かを作ったり修理したりといった挑戦を敬遠するようになってしまった。挑戦しても、最初に失敗してしまうと、すぐそこであきらめてしまう。(p.29)

何かをダメにする勇気を持つことで、物が直せるようになる。スクラップから何かを作れるようになる。自分の好みに合わせて物を作り変えることができるようになる(p.32)

失敗は避けられないことであり、そればかりか、学んだり技術を磨いたりするうえで失敗は必要である(中略)。失敗は、自分が行動的で好奇心があるという証拠だ。(p.32)

人は行動しながら生きていくものだ(中略)。ところが学校は、「今、行動させるのではなく、将来、行動するであろうと気に要求される知識を十分に準備させることに専念している。人が生きていくうえで、何が退屈かって、ずっと準備ばかりしていることだよ」(p.212)

現在の子どもの教育における、もうひとつの問題は、個別教育の余裕がないことだ。グレイはボストンの職業訓練学校でそれを感じた。近年、こうした職業に密着した訓練施設で学ぶ十代の若者は、高校生と同じ内容の統一学科試験を受ける決まりになっている。この試験の準備のために、「彼らがいちばん得意とする技能の訓練を受ける時期と機会が奪われている。彼らは、自分がもっとも苦手で、もっとも嫌いなもので評価されようとしている。「落ちこぼれをなくす」という考え方は、みな同じにするということだ。すべての人間を、同じ線路の上で、同じように成長させようという考え方なんだ」(p.212)

DIYへの関心の高まりは、善意の輪も広げている。自分のプロジェクトに関する情報を、きれいに整えてネットで公開することを得意とする人たちがいる。それが、自分も何かを作りたいという意欲を、見た人たちに起こさせる。(中略)私のプロジェクトを見た大勢の人から、製作意欲を刺激されたとメールをいただく。その人たちは、何かを作ることで周囲の世界の見方が変わってきたと話してくれる。それが新しい扉を次々と開き、知識、高い技術、想像力、批判能力、判断力、危険負担力、社交性、臨機の才などの新しい力が要求される作業と真剣に取り組む機会を与えてくれるという。この人たちは、よくわかっているのだ。自分の手で何かをすることで、いちばん大きく変化するものは、自分自身であることを。(pp.226-227)

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これ読んでたら、一人暮らしで夜の時間が長い今、電子工作キットでもいじりたくなった。本書では、米国のRadioShackの"Electronics Learning Lab: A Computer Course in Electronics"を著者がいじるというシーンが出てくる。

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「フォレスト・ミムズが開発して付属本を書いたという製品だ。基本的にはノートパソコンぐらいの大きさの黒いプラスティックの箱で、ハンダ付けのいらないブレッドボードの周囲に、スイッチ、ダイヤル、LED、メータ、フォトレジスタ、ブザー、スピーカ、ノブなどが配置されている。キットには、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、ICなどもたくさん入っている。それに、ミムズが書いたワークブックが2冊。200種類以上の電子回路の作り方が解説されている」(p.217)

う~~~ん、やりたい!!

Radio Shack Electronics Learning Lab Kit 20-055 by RadioShack [並行輸入品]

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  • 出版社/メーカー: RadioShack
  • メディア: おもちゃ&ホビー


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