SSブログ

ブータンの鉱物資源 [ブータン]

先週後半は新聞紙上で鉱業が取り上げられるケースが多かったので、まとめてご紹介したいと思う。ブータンで鉱物資源というと意外かもしれないが、鉱物資源は水力資源に次ぐブータンの外貨稼得源となっていて、現国王がおっしゃる「5つの宝石」の1つと位置付けてられている。

鉱業セクター、ガバナンスが課題――調査報告書明かす
Study finds mining sector suffers from weak governance
Kuensel、2016年6月23日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/study-finds-mining-sector-suffers-from-weak-governance/

1つめの記事は、22日(水)に公表された調査報告書の内容に関するもので、23日の第1面にでかでかと掲載されたもので、それなりの紙面を割いて、報告書の内容をかなり詳細の報じているものである。

調査はフランスの経営大学院のベルトラン・ヴェナール教授とブータンの反腐敗委員会(ACC)、王立経営大学、地質鉱山局(DGM)の四者により実施されたもので、DGMにはセクターのモニタリングを行うのに必要な予算や人材が十分配分されていないことや、データ整備が不十分である点などが、課題として挙げられている。

こうしたガバナンス(統治能力)の欠如により、本来国庫に入るべき収入が、2008年から2014年までの間に11億7,775万ニュルタムも失われていて、しかもその損失額は年々増加傾向にあると指摘している。鉱業セクターのGDPへの寄与は2.8%で、2013年の総産出高は40億ニュルタム、うち1億9,960万ニュルタムは鉱山使用料等からなる。

2016-6-23 Kuensel.jpg

その上で、報告書は鉱業セクターの改善に向けて、10項目の提言を行っている。鉱業戦略計画の策定、独立規制当局の設置、コミュニティの関与に関するガイドラインの強化、鉱山借用期間の延長、関係機関間のコーディネーションの強化、鉱業関連法制に関するアドボカシー等が含まれる。報告書はまた、鉱業セクターは汚職腐敗の巣窟になりやすく、22の鉱山会社のうち、31%は最低1回は過去に賄賂を要求されたことがあるという。

情報アクセスも課題として指摘されており、鉱物資源のデータベースの欠如や既存データの未活用も問題視されている。ブータンの鉱物資源埋蔵量は、1990年代初頭にUNESCAPが実施した地質学調査に基づくもので、しかもその調査結果も十分活用されずに今日に至っている。

こうした課題に取り組んでいくためには、DGMの組織・制度強化は必須である。

xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

上院、鉱業法の制定を提言
NC recommends Govt. table mining Act
Kuensel、2016年6月24日、Younten Tshedup記者
http://www.kuenselonline.com/nc-recommends-govt-table-mining-act/

次の記事は、前の記事の翌日の第1面を飾ったもの。上院(National Council)が政府に対し、鉱業セクターの透明性強化と腐敗撲滅、脱税その他の不正行為を防止することを目的として、1995年鉱山・鉱石管理法の改正法案を速やかに提出するよう求めた。また、上院は併せて、この改正法案と現在策定中の鉱業開発政策(MDP)において、鉱業公社(State Mining Corporation、SMC)に特別な役割を付与することを盛り込むよう提言した。「特別な役割」とは、この場合、主要採掘事業、戦略的鉱石の国内探査・選鉱における排他的権限のことをいう。

これは、2014年12月の財務省令で規定されている、「SMCは経済省が定めた「戦略的鉱石」の開発のために設立されている」という業務内容を改めて支持するものである。

ただ、この場合の問題は、「戦略的鉱石」に何が含まれるのかというところの解釈にある。政府側の解釈としては、SMCは主に千枚岩(phyllite)の開発のために設立された公社だが、かなりの埋蔵量があるとみられている千枚岩も、品質は悪く、商業的には採算が取れていないという。また、近年注目を集めているレアメタルについては、SMCへの権限付与の可能性はないとはいえないと経済大臣は答弁しているらしい。

またそれ以前に、現在の政府与党は、公営企業が排他的権利を有するのは、民間企業の成長を阻害するという立場を取っており、上院の提言にも反対の姿勢を示している。外国企業が欲しがるレアメタルに関してSMCに排他的権限を与えてしまうと、外国からの直接投資が期待できなくなる恐れがある。

xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

これらの記事の中では、ブータンで産出される鉱物資源って具体的に何なのかははっきりしないが、なんとなく「戦略的鉱石」としてはタングステン、銅等、それ以外では石膏、ドロマイト、石灰石等なのかなという気がする。

僕が以前インドで暮らしていた頃、オリッサ州の先住民居住地域での鉱山開発で、地元住民と鉱山会社、中央政府と州政府との間で頻繁に対立が起きていたのをよく覚えている。当時はこのブログでもそうした報道を度々ご紹介していて、どちらかというと住民側の視点に立って書いていた。経済と社会と環境という、「持続可能な開発」の3要素は、こと鉱業開発に関して言うと、バランスをとることの難度はかなり高いという気がする。

ましてや「持続可能な開発」の王道を行っているともいえるブータンが、鉱業開発でどういう舵取りを見せるのかは興味あるところである。企業に対する監督のあり方、鉱物資源輸出による収入の地域住民への還元のあり方、自然環境への負荷を極力抑えた鉱山開発のあり方、外国企業への採掘権の付与のあり方など、うまくコントロールできれば、世界にも誇れる優れた鉱業開発につながる可能性は秘めていると思う。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0