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越境ゾウに荒らされる農地 [ブータン]

シプスの耕作放棄農家、今年も増加へ
More Sipsu farmers to quit this year
Kuensel、2016年6月18日、Rajesh Rai記者
http://www.kuenselonline.com/more-sipsu-farmers-to-quit-this-year/

今回の記事はクエンセル紙掲載記事の全訳ではなく、要約をご紹介する。

ブータン南西部、サムツェ県シプス郡では、毎年大勢の農家が所有する農地での耕作を放棄している。郡内の稲作用地は1,215エーカーあるが、うち50%以上が耕作放棄され、その面積はさらに拡大している。この地域はシプス川の流域であり、土地も肥沃で耕作には向いている。それなのに耕作放棄地の面積が年々増え、多くの農民が村を出て行ってしまうのには理由がある。野生のゾウが荒らすからである。

2016-6-18 Kuensel.jpg

野生のゾウはインド側から国境を越えてやってくる。インド側の経済開発が進み、ブータンでは許されていない武器や手段で追い回され、挙句生息地が限られてくると、ゾウは川を渡り、国境を越えてブータン側にやってきた。ブータン側にはジャングルを想起させる深い森が広がっていた。そうしたゾウに頻繁に農地を踏み荒らされる農家は、寝ずの番にも疲れ果て、やがて耕作放棄してたの土地に移って行ってしまう。今では若者はどんどん地域から流出し、域内の人口は高齢者が多くなってきているという。こうして耕作放棄地が増えると、なおのことゾウには住みやすい土地になっていく。

こうした、人間と野生動物との間の紛争がシプスで顕著になってきたのは、2000年代半ば以降のことだ。稲作用地だけではなく、郡内には400エーカーのトウモロコシ畑もあったが、現在ではピークから80%も減ったという。

各村からメンバーを集めて即時対応チームが編成され、松明やレインコート、レインブーツなどが支給された。しかし、電気柵が設置された地区はない。サイレン設置も検討されたが、効果は薄いとして導入は見送られている。

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僕の故郷でもシカやイノシシによって田畑を荒らされるという被害の声は、年を追うごとに大きくなってきているが、さすがに野生のゾウに荒らされるというのはスケールがでかい。しかも、これは国境をまたぐ問題でもある。インド側で行われている人間の活動が、ゾウをブータン側に追いやっているのだという。この話は相当深刻で、別の記事によると、国会での討議でも度々言及されているらしい。

以前、ブータン農林省の方にこの国の農業の直面する課題は何かを伺ったことがある。第1には、農業の機械化。農業を担える若者が農村に留まらなくなり、残された農民の平均年齢が上昇する一方、農業労働者の賃金も上昇しており、それを農業機械の導入によって補おうという政策が検討されているという。第2には、作物の多様化。野菜や果物等、換金作物のバラエティをさらに増やして、若者にとっても魅力ある農業にするんだという。
第3には、優良種子の生産。農業生産性を上げるためには、機械化に加えて、多収量の品種を開発して、F1種子の大量生産を図る必要がある。そして、第4には、人間生活と野生動物との対立(Human-Wildlife Conflict)の問題への取組みだとか。

初めて聞いた時には、野生のトラのことでも言われているのかと思っていたが、いやはやゾウだとは…。しかも、耕作放棄がさらにゾウに住みやすい環境を作ろうとしているというのだから、負のスパイラルだ。

6月16日付けのクエンセルには、同じシプスの野生ゾウによる被害について、結構生々しい記事が載っている。
http://www.kuenselonline.com/human-wildlife-conflict-takes-a-toll/
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