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土地の劣化が進んでいる [ブータン]

土地管理は危機的状態――農業省幹部語る
Land management critical: agriculture ministry
Kuensel、2016年5月30日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/land-management-critical-agriculture-ministry/

ブータンでは年間に1ヘクタール当たり約3.34トンの表土を失っている。土壌喪失を増加させ、持続可能な土地管理技術が実装されていない地域では、この8倍の1ヘクタール当たり24.61トンを失った。これは、トラック3台分の土壌が毎年剥がされ、下流に流されていくことを意味する。持続可能な土地管理技術を有していたとしても、ブータンは、毎年少なくとも1200万トンの表土を失っている。

これは、人口の65%以上が農業に生計を依存している国にとっては大きな問題だ。統計局によれば、貧困状態で暮らす人口の12%のうち、16%以上が農村部にいる。農業省関係者によると、この国の地形を考慮すると、土壌、土地、および流域に関連する問題は年々増大している。タシガン県ウォムロン郡ツォゴンパ村では、6世帯の半数以上が農地を大きく浸食され、生活も危険度が高まったことから、村を捨てて引っ越さざるを得なくなった。

土地の劣化は農地でも森林でも発生し、生活や生態系の機能に影響を与える。ブータンでは耕作可能な土地が国土のわずか8%しかない。そのうちわずか2.93%が実際に耕作されている。農業局のニム・ドルジ局長は、「土地は非常に重要、しかも多くの場合、それがあって当たり前のものだと思われている」と指摘する。

農業省関係者によれば、南アジアでは表土の流失によって主に引き起こされる土壌肥沃度の低下から、年間36万トンの穀物生産機会を失っていると推定されている。このことが、食料や栄養安全保障や生態系サービスへの悪影響、気候変動の影響を増幅させることにつながりかねないという。

ブータンにおける土地生産性の損失の主な要因の1つは、農業活動の結果として、浸食を通して肥沃な表土を失ってしまうことである。様々な土地の劣化の中でも、小渓谷や地滑り、峡谷の形成などが顕著で破壊力が大きい。風や連作による劣化も広範囲で起きている。土壌の有機物の枯渇や、作物による栄養素吸上げ、表土への盛り土、床締め等といった原位置劣化も顕著だからである。「これらはすべて農業生産性を引き下げ、人々の生計への損害につながります」――国立土壌サービスセンター(NSSC)のツェリン・ドルジはこう述べた。

耕作による土壌侵食は中等度であり、特に急な斜面の乾燥地でよく見られる。耕作を繰り返すうちに、表土はゆっくりと斜面に沿って降下する。この国では、多くの地域において、斜度38度までの斜面で農民は耕作を行っている。

NSSCの関係者によると、土地の劣化は水力発電の収益の損失も引き起こすという。「タービンのメンテナンスや発電ロスの費用は膨大であると考えられます。発電所の機械装置はメンテナンスのためにいったん停止させなければならなくなるからです」――こう述べるのはNSSCのシニア土壌調査及び土地評価担当官のプンツォ・ゲルチェンである。

表土の流失を抑えるために多毛作が推奨されている。同様に、石積みの堤防や飼料木の植栽、段々畑等も奨励される。農業省流域管理課では、土壌劣化を最小限に食い止めるための方策を実施中だ。パロ、モンガル、チュカにおいて、飲料水サービスのための環境プログラムを実施してきた。こうしたスキームでは、上流のコミュニティでは、劣化から水源と土地を守るために植林が行われ、下流で水を利用する人はそのための費用を負担する。

流域管理課が実施中のREDD+プログラムも森林減少や森林劣化を抑え、森林管理を改善するのに一役買っている。「これは森林資源の持続可能な管理と環境サービスの維持確保のための追加投資を生みだすよう設計されています」――同課の副主任森林官であるシゲル・デマはこう述べる。

我が国初の土地管理キャンペーンは、土地の劣化を抑制するとともに劣化した土地を回復することも目的として、2005年にブータン東部で行われた。

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ブータンって、国土の総面積の7割だったかを森林が占めるよう法律で規定している国で、そのことは首相をはじめとした閣僚が、国際会議などの場で結構強調しているポイントでもある。それだけ環境と経済活動のバランスをとっている国であり、温室効果ガスの排出も、ゼロどころかマイナス、すなわちブータンは他国の排出した温室効果ガスを吸収している「カーボン・ネガティブ」だと胸を張って主張している。

おそらくその通りなのだろうと思うが、森林面積が7割といったって、ティンプーの周りの山々には、雲がかかって降水量が多そうな山のてっぺんの方はともかくとして、市街地に近い中腹あたりだと、樹幹密度はそれほど高いという感じは受けない。この国の「森林」の定義ってどうなっているんだろうか、いずれ調べてみたいと思う。

さて、先週末、初めて首都から外に出かけた。ティンプーからウォンデュポダンのちょっと先まで行ったのだが、ドチュ・ラの峠を越えてプナカに下っていく途中の道路から対岸の山々を見ていると、結構土壌浸食が激しいのに驚いた。てっぺんに寺院がある急峻な山だが、赤い表土がむき出しになっていて、雨が降れば一気に水は流下するから谷のえぐれ方が半端でない。断層でもあるのかと思ったぐらいだ。

しかも前夜の雨のせいで、ウォンデュポダンの町の麓を流れる川は土砂で赤みを帯びていた。明らかに表土を押し流して川に流れ込んだものである。こういう土砂が現在建設が進められているプナサンチュ水力発電所に流れ込んでいくのである。ブータン政府は膨大な水力資源をフル活用すべく水力発電所の開発に邁進しているけれど、ダムに流れ込む土砂って半端ないんじゃないだろうかと気になっている。その辺も計算の上で推進されているんだろうとは思うけれど。

せっかくの農地でも、化学肥料に依存しすぎて土壌の管理をちゃんとやってないと、やせた農地になってしまう。有機肥料を混ぜ込んで土壌の管理をちゃんとやっていかないと、生産性向上どころか維持することも難しいのではないかと思われる。

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