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『シャオミ-世界最速1兆円IT企業の戦略』 [仕事の小ネタ]

シャオミ(Xiaomi) 世界最速1兆円IT企業の戦略

シャオミ(Xiaomi) 世界最速1兆円IT企業の戦略

  • 作者: 陳 潤
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2015/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
Google、Apple、Facebook、Amazonを超え、わずか創業5年で売り上げ1兆円を達成した謎のIT企業のビジネスモデルと戦略。本書は、「超低価格+高スペック+洗練されたデザイン」のスマホをもとに市場を席巻し、今最も注目されているIT企業シャオミのすべてを、「チーム」、「プロダクト」、「イノベーション」、「バリューチェーン」、「ビジネスモデル」、「マネジメント」、「マーケティング」、「エクスペリエンス」、「オリジナリティ」という9つの観点から分析した一冊だ。リアル店舗は「持たない」、自社工場は「持たない」、役職は「つくらない」、ハードウェアでは「稼がない」、KPIは「いらない」などの常識破りなビジネスモデルと経営戦略を、シャオミの創設以来のプロセス、そして創設者である雷軍の20年の経験をもとに徹底的に解説する。シャオミの急成長の理由とそこにいたるまでの失敗の数々は、イノベーションの本質を学びたいすべての人にとってのもっともいいケーススタディとなるだろう。

ブータン赴任の直前、それまで2年使ってきたスマホをデュアルSIMスマホに切り替えることにした。ヨドバシカメラに出かけて物色した際、シャオミ(Xiaomi)って扱ってないのかなと思って眺めてみたけど、それほど置かれたなかったように記憶している。ファーウェイやASUSが幅を利かせていたので、僕はそれじゃあと店員のお薦めにそのまま乗っかる形でASUSのZenfoneを選んだ。

シャオミのことは、前回ご紹介した『メイカーズのエコシステム』の著者である高須正和さんが僕らの会社の勉強会にお越し下さった時に、深圳のイノベーション・エコシステムの典型例として言及されていて覚えていた。早口の高須さんの話の展開に必ずしも十分ついていけてなかった僕は、取りあえずはシャオミのことはシャオミのこととして、高須さんの著書とは別に適当な読み物があれば読もうと考えていた。本書も一度は近所の市立図書館で借りることができたけど、仕事が忙しすぎてすぐに読むことができず、仕方がないので電子書籍版を購入してブータンに持ってきている。

年商1兆円といいつつも町の量販店ではあまり見かけないシャオミのスマホ。忠誠心強いマニアに対してネット販売しているから当然のことらしい。ハイスペックなのに本体価格が安いのは、CEO雷軍が所有する関連企業群から儲けを出しているからだとか。

以下、各章冒頭にあるCEO雷軍の発言からの引用を幾つか紹介してみよう。これらを見渡すと、シャオミの戦略がうっすらとでも見えてくるだろう。

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「ユーザーは神ではない、友達だ」

「集中は極めて重要だ。1種類のスマホを世に出すからこそ、難しい。もし自信が持てなければ100種類になるし、自信があれば1種類でいい」

「偉大な作品というのは、本来真似できないものだ。もし、シャオミが他の人に真似されたら、それはうちの製品がまだ不十分だということだ」

「イノベーションの真髄は、「創造する」ことにあり、決して「新しい」ことにあるのではない。世界を変えるような発明やイノベーションはすべて、「段階的な改良」から生まれた」

「われわれの社会が失敗を受け入れない環境にあるのなら、イノベーションは続かない」

「第一に、シャオミは工場を持たない。それゆえ、世界で最もいい工場を利用できる。第二に、販売チャネルや小売店を持たない。それゆえにインターネットを通じた直接販売モデルを採用できる。そして、さらに重要なのは、3つ目だ。工場も小売店も持たないからこそ、すべての精力を製品の研究開発とユーザーとの交流に向けられる」

「ECはただのトレンドではない。インターネットの時代に生まれた、一歩進んだ販売方式なんだ。すべての中間利益を省き、その利益は直接ユーザーに還元できる」

「みんながちゃんと理解していないことがひとつだけある。携帯電話本体はただの「キャリア」だ。もしここがわからなければ、シャオミがどのような企業か理解することはできない」

「シャオミを外国の企業になぞらえるなら、Appleに近いと思う方もいるかもしれない。しかし、私は、シャオミはGoogle的要素を持ったAmazonだと考えている」

「まずユーザーにシャオミを好きになってもらう。ユーザーに好きになってもらえれば、「ご褒美」のようにチップが入る。われあれはこのチップが稼げればそれで十分なんだ」

「最もヘビーなユーザーを満足させれば、他のユーザーを満足させることはたやすい」

「現在必要とされているのは体験型マーケティングだ」

「旧来のメーカーは1台の携帯電話を売ると、それで商売が終わったと思っている。しかし、シャオミにとってそれは商売のはじまりにすぎない」

いまやユーザーは市場の支配者であり、企業や商品の生殺与奪の権利を握る存在である。以前は、商品を消費者の手元に届ければ商売は終了だったが、現在では、そのときが商売の始まりなのである。

シャオミにとって、アフターサービスとは、もはやユーザーの相談に対応するなどという初歩的なものではない。アフターサービスは顧客との交流のチャンスであり、ユーザーがシャオミの文化を理解するためのひとつのメディアなのである。

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本書を読んで最も感銘を受けるのは、忠誠心強いユーザーを開発プロセスにどんどん関与させるオープンイノベーションを地で行く経営であることである。そして、この点はスマホメーカーだけではなく、アプリ開発や僕らの務めている会社の行っている事業における受益者(顧客)との接し方にも通じるところがあるような気がする。

こういう目で僕たちがやっていることを見渡してみたら、まだまだ僕らのやっていることには改善の余地が相当ありそうな気がする。特に今週は、本書を読んだ後だったこともあるが、オープンイノベーションの思想を僕らのやっている事業に取り込むとはどういうことなのか、ここでは具体的には書けないけど、考えさせられるケースが幾つかあった。

ところで、5月17日(火)は国際電気通信連合(ITU)の定めた「電気通信・情報社会の日」だったそうで、当地でもブータンテレコム(BT)がこの日を祝う式典を開催した。この日に合わせて、BTはクラウドサービスと市内Wifi接続サービスを開始し、また市内にBTモバイルショップ1号店を開店し、3G向けiPhoneやAndroid端末の販売を始めた。

おかげで、僕が日本から持って来たデュアルSIMスマホも、こちらでBTのSIMを購入して、市内のBTモバイルゾーンであれば、どこでもネットにつながるようになった。それまではWifiにアクセスできる職場の中か、住んでいるアパートの中でしかネットにつながらなかったのだから、大変な進歩だ。

さて、この日からBTモバイルショップで販売開始されたAndroid端末は、香港のNUU Mobileであった。やはり、シャオミのスマホではなかった…。本書を読んだ後であれば、それは当たり前のことではあるが(笑)。

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