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『恋に焦がれて吉田の上京』 [読書日記]

恋に焦がれて吉田の上京 (新潮文庫)

恋に焦がれて吉田の上京 (新潮文庫)

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 文庫
内容紹介
札幌に住む吉田苑美は、23歳にして人生初の恋をする。相手は四十路男のエノマタさん。不器用な乙女は「会いたい」と「知りたい」と「欲しい」の本能のまま、想い人を張り込んだ。だがある時彼の上京を知り、吉田は友人・前田の制止(「正気かい?」)を振り切り後を追う。まだ吉田の存在を知らぬ彼に、ちゃんと出会うために―――。初恋の全てがここにある! 『とうへんぼくで、ばかったれ』改題。

朝倉かすみ作品はこれまで2冊しか読んだことがないが、『田村はまだか』が結構当たりだったので、気が向いたらまた読もうと思っていたところ、昨年出た文庫版の内容紹介が面白そうだったので、読んでみることにした。著者自身が北海道のご出身だからだろうと思うが、今回の主人公も札幌在住の吉田。但し、ストーリーのほとんどは東京・池袋周辺で繰り広げられる。

上記の内容紹介である程度はご想像いただけると思う。短大卒23歳の契約社員の女性が、42歳の独身男性に一目ぼれして、ストーカーまがいの追っかけをするというシチュエーションは容易にはイメージできないけど、20近くも年下であっても一方的に惚れられる可能性があるというのはちょっと救われた気がする。アラフィフティーのおっさんが何言ってんだというご批判はあろうかと思いますが(笑)。

恋愛って、遠くの相手を羨望の眼差しで見守っている間がいちばんいいのかも。首尾よくお近づきになれたとしても、至近距離で相手を見ていると、見えなかったものも見えてくるだろう。憧れだけでは済まない現実も見えてきてしまったりして。基本的にこの作品は吉田の目線で描かれているから、そういう葛藤が積み重なって、結局はうまくはいかなくなる。吉田の目線からだとエノマタさんの良くないところばかりが増幅されていって、エノマタさんのダメっぷりばかりが批判の的になりかねない。

ただ、エノマタさんにも多少の非はあったとしても、やっぱり「お金があまりない」のが恋愛の行く手を阻むという言い訳にも多少の理はあるようにも思える。甲斐性なしと思われてもないものはないわけで。また、独身男性も40代にもなると、お一人での老後のことを考えてしまい、それを独身男性仲間のネットワークの中で心の安寧を得ようとする行動パターンというのも、なんとなく腑に落ちる。とはいえ、やっぱりエノマタさん、19も年下の一途な彼女を大事にしてあげなよという気はしてしまう。

この作品で印象的なのは、朝倉さんのボキャブラリーの多さ。特に、吉田が親友・前田やりえぽんと繰り広げる会話の面白さといったら、なかなかのものだと思う。それで吉田・前田が短大の落ちこぼれ組だとはとても思えないほど会話の内容がウィットにも富んでいる。実際、僕の周りにはこんな会話ができそうな独身女性がおり、この人たちを吉田・前田に当てはめてみたらめちゃめちゃ作品の風景にフィットするので、読んでて笑えてきた。

同様に、エノマタさんっぽい独身の先輩も僕にはいる。同性の僕から見てなんでいつまでも独身でいるのか謎のナイスな先輩だ。その先輩をこの作品の風景に当てはめながら読むと、腑に落ちるところがいっぱいあった。

でも、全体的に吉田の目から描かれているのはまあいいとしても、第1章のエノマタさん目線の記述は、読んでてさっぱり理解できなかった。アマゾンの作品紹介・あらすじ等を事前に読んだ上で作品に入っていくと、いきなりの第1章で何が何だかわからなくなる。作品紹介とは異なる多くの登場人物が出て来るので、頭が混乱する。だから、最後にもう一度第1章を読み直してようやく納得するという手間がかかった。この章、冒頭に置いとく必要あったのかどうかは疑問だ。

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