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『上司失格!』 [読書日記]

上司失格!  「結果を出す」のと「部下育成」は別もの (青春新書インテリジェンス)

上司失格! 「結果を出す」のと「部下育成」は別もの (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 本田 有明
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/12/02
  • メディア: 新書
内容紹介
話を聞かない「耳栓上司」、言うことが毎日変わる「日めくり上司」、成果を独占する「オレ様上司」…。自分の成績優先のスタンドプレーヤーから、できると思っている使えない上司まで、マネジメントできない上司が生まれる背景にあるものとは? 人事教育コンサルタントが教える「ダメ上司」につぶされない働き方のヒント。

僕は今の部署に来てから既に2年を経過しており、そろそろ異動の時期だろうと密かに思っている。社内の役員だの他の部署の社員等とのやり取りがかなり多い部署だったので、自分のような人間嫌いが通用するのかとかなり不安を感じながらの船出だったが、2年経過するとそれももう最終コーナーにさしかかっていると思う。優秀な部下に恵まれた。今の部署で明確に僕の指揮下にある部下は1名だけだったが、とても優秀で僕の至らないところを見事に補ってくれた。また、部下ではないけどスタッフ数はそこそこいた部署だったが、これだけ優秀なスタッフを揃えている部署も僕は初めてで、その分楽させてもらったと思う。

だから部下や同僚との関係において不満はあまりない。一方で、同じ中間管理職及び上司との関係性においては、僕は事情があって一歩引いて接するようにしていたけれども、正直言ってストレスはあった。それをここでいちいち詳らかにするつもりはない。それでも書かせてもらうとすれば、一部のスタッフにとりわけ厳しく当たり、結果心の病に追い込んでしまうような中間管理職や、部署のマネジメントは中間管理職の仕事だと割り切り、部署の中で何が起きているか、誰が何を考えているのかに気づきもしない上位管理職はどうかと思ってきた。また、僕が年上で遠慮があったからだとは思うが、だからといって、僕をバイパスして僕の部下に作業の指示を直接してしまう上司というのもね。そんなことだから、僕らがここに至るまでに背負わされたもの、積み上げてきたものに対するリスペクトもなく、僕が前部署で実績を上げてそれなりに胸を張ってきた成果に対して貶す発言までしてしまうのだ。

今まで我慢してきたのは、幸いなことに部下には恵まれてきたからだ。来年半ばになればその部下も異動するし、僕が歯を食いしばってもここで頑張ろうという気持ちはもうない。

さて、肝心の本書の感想に入ろう。僕はそんなわけで、今の部署の管理職連中のどこがどういけないか、本書のような「失格上司」の類型でどこに該当するのかというところに興味があって、この本を読んでみることにした。フムフムと頷けるところも多く、面白かったといえば面白かったのだが、読み進めていくうちに一点気になることがあった。

この本、想定読者は誰なのか。管理職なのか、部下なのか。上司に襟元を正せというメッセージが込められているのかと思えば、ダメ上司の存在は与件と見なし、部下はそれにどう対処すべきなのかが書かれている箇所もある。版元の紹介文にも「人事教育コンサルタントが教える「ダメ上司」につぶされない働き方のヒント」とあるので、きっと後者なのかと思うけれど、なんだか立ち位置が定まらない書きっぷりだなという気がした。

要は読者が決めろということか。職場というのは上司と部下という2つのグループしかないわけではなく、1人の社員が時に上司、時に部下になったりもする。だから、立ち位置を決めにくいというのはあったかもしれない。

ただ、著者は「ダメ上司につぶされない働き方のヒント」と言ってるのだから、結論部分でわざわざ「サーバントリーダーシップ」を論じるのは矛盾してるのではないか。また、読み進める途中でなんとなくオチが「サーバントリーダーシップ」だというのが見えてきてしまい、当たり前すぎる結論にちょっと拍子抜けしたところもある。

「部下の仕事をやりやすくすること、支援することが上司たる者の最大の職務である。」(p.134)

至極まっとうな結論である。実際、僕はそれを指向してきたから、基本的に部下が上げてきた仕事の成果に対してはそれを多としつつ、何かしら僕自身の経験やパースペクティブから付加価値をつけられないかと考えるようにしている。それを会議等の場で説明する時は部下にやってもらうこともあれば、役員等への説明の際には僕自身がやるようにしている。その時には、部下がどのように考えてこの資料を作り上げてくれたのか、部下の立場に立って見てみるよう心掛けてはいる。

ただ、本書が「サーバントリーダーシップ」を念頭に置きつつも、そこで述べているのはほとんどが上司と部下の1対1の関係の中での話になっている。これは僕的にはちょっと物足りないポイントで、「「ダメ上司」につぶされない働き方のヒント」というなら、答えがそんな1対1関係の中から生まれてくるわけでは必ずしもないという点にも注意は必要だったのではないか。言い換えれば、部下の立場で言えば、1対1関係の中でダメ上司をどうやり過ごすかではなく、そんなダメ上司を抱えた部署の中で、他のスタッフとともにいかに働きやすい人間関係を作るかという視点があってもよかった。

そんな視点に立った場合の僕の痛恨は、中間管理職のパワハラまがいの接し方で心が折れてしまったスタッフを庇えなかったことにある。同じ部署とはいえ横から管理職に口を出すような形になるので接し方そのものに対して「それ、パワハラでは?」と指摘するようなことができなかった。組織というのは人と人の人間関係で成り立っている。どこかがふん詰まることはあるし、その場合に周囲はどうすればいいかという示唆も、過去のネットワーク論の先行研究からは得られている。それをわかっていながら僕が実践で生かし切れなかった点は、僕自身の大きな反省であり、そのスタッフには謝っても謝り切れない。

勿論、そういう人を同僚から出してしまったのは部署にいる各々のスタッフにも反省すべき点はあると思う。しかし、それで役員や他部署の管理職からは「仕事できる人」と評価を受ける管理職には虫唾が走る。僕が異動で離任する時には、その点については上位管理職にだけは指摘をして去りたいと思っている。

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