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『太陽は動かない』 [吉田修一]

太陽は動かない (幻冬舎文庫)

太陽は動かない (幻冬舎文庫)

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/08/05
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件。産業スパイ組織AN通信の鷹野一彦は、部下の田岡とその背後関係を探っていた。目的は機密情報を入手し高値で売り飛ばすこと。商売敵のデイビッドと謎の美女AYAKOが暗躍し、ウイグル過激派による爆破計画の噂もあるなか、田岡が何者かに拉致された。息詰まる情報戦の末に、巨万の富を得るのは誰か? 産業スパイ“鷹野一彦”シリーズ第1弾!

僕のKindleには、いずれ長時間の移動を伴うような出張をする機会があれば読もうと思って、積読状態にしてある小説がいくつかある。吉田修一『太陽は動かない』もそんな1冊で、鷹野一彦シリーズの第2弾『森は知っている』を図書館で借りて読む際、ついで買いをしてしまったのである。ところが期待した出張機会などなかなか訪れず、先もどうなるかわからないので、我慢しきれず読んでしまうことにした。

鷹野一彦シリーズとしては本作品が第1弾で、いきなりこれを読んだ人も十分楽しめる作品だと思う。また、僕のように第2弾『森は知っている』を先に読んでいた人にとっても、鷹野のその後を知ることのできる作品としての面白さは十分にあるだろう。今回もディビッド・キムは登場しているし、鷹野に指示を出す風間も出て来る。また、現在鷹野とペアを組んでいる田岡に加えて、AYAKOや青木といった、今後シリーズ化が進むにつれて鷹野との絡みが相当出てきそうなキャラも何人か登場させている。また、『森は知っている』には出てきたけど今回は登場しない柳というのもいて、今後の展開が楽しみだ。

産業スパイというのをテーマに据えたのは、その時々の時事問題を中心的に扱えるからというのもあるだろう。今回は宇宙太陽光発電――静止軌道上で太陽光を効率的に集めてエネルギーを生み出し、そのエネルギーをマイクロ波やレーザー光に変換して地上に送って、それを地上で受けて電力や水素の形で利用するというものだ。荒唐無稽の話にように聞こえるが、本書でも取り上げられているように、意外と実用化にまで近いところに来ているらしい。そういう時事ネタが盛り込まれ、読了するとちょっとわかった気になれるところがいい。

展開が速すぎるのと主要登場人物が世界各地で何をやっているのかを同時並行的に描く必要があって場面があまりにも頻繁にとぶので、なかなか話についていけないところもある。産業スパイの話に、主人公以外のライバルを何人も登場させたらまあそうなりますわな。エンターテインメントなんだから、それはそれでよしとしないといけない。

こういうタイプの作品は、イッキ読みするのがいい。暇を見つけてはコツコツ読み進めるというタイプの読書には向いていない。僕は本書の前半部分はそんな感じでチンタラやってたら、読書再開するたびに今どこだかがわからなくて苦労した。前半部分では登場するキーパーソンが相互につながっていない場合も相当あった。週末に入って後半部分はまとめて読める時間があり、しかもキーパーソンがつながり始めたので、読むペースが一気に加速した。

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