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『開発協力と新興国』 [持続可能な開発]

来週末、都内で開催される会議で、15分間の英語によるプレゼンをやることになった。テーマについて書き始めたらブログの記事としては十分説明しきれないと思うので、あえてここでは明かさない。ただこれだけは言える。僕にとっては今年の大きなチャレンジの1つであると。プレゼンだけでなく、発表内容をまとめた英文ペーパーを後日提出することになっている。

それほど造詣があるとも思えないテーマであっても発表を引き受けたのは、僕なりの「下心」があってのこと。どこに異動するにしても、就活するにしても、自分の履歴書に書けるものなら無理してやって、アピールの材料にしたいという魂胆だ。年明けぐらいから意識して取り組んできたことで、既に形になったものもあるけれど、今からでももうちょっと頑張っておこうと思った次第。

予備知識がほとんどないテーマで話すには、それなりに勉強しておかなければならないことは言うまでもない。後日まとめるペーパーにも、参考文献を載せなきゃならない。そう考えて、1ヵ月前にこの仕事を引き受けた頃から少しずつではあるが参考になりそうな英文の報告書や論文を読み始めていた。その全部をご紹介するつもりはないけれど、そのうち何冊かはまとめてこの場で紹介しようかと思う。

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Development Cooperation and Emerging Powers: New Partners or Old Patterns?

Development Cooperation and Emerging Powers: New Partners or Old Patterns?

  • 編者: Sachin Chaturvedi, Thomas Fues, and Elizabeth Sidiropoulos
  • 出版社/メーカー: Zed Books
  • 発売日: 2012/05/15
  • メディア: ペーパーバック

1冊目の本は新興国のお話。ふと思いついて購入してから1年以上放置していた本である。

開発協力のための既存の枠組みが先進工業国の経験に大きく支配されてきたけれども、新興国が近年、他の開発途上国に対する開発協力を加速化させ始めており、こうした国々を既存の援助の枠組みに引っ張り込むことには慎重かつ懐疑的な見方も多い。本書は、中国やインド、ブラジル、南アフリカの開発協力政策を分析し、これをメキシコや西側諸国のそれと比較したものである。また、新興国の開発協力の動機や実績を調べる中で、「南南協力」という考え方がどのようにして生まれてきたのか、それが伝統的な先進国と途上国の間の開発協力とどういった点で異なるのかを考察している。執筆したのはそれぞれの国出身の研究者であり、今後グローバルな枠組みが既存の枠組みからどのように変貌していく可能性があるのかも述べている。

新興国が後発途上国への協力を、「連帯」という原則の下で、投資、貿易、開発協力、技術共有等をまとめて「南南協力」という言葉で述べているというのがよくわかる。著者たちは、こうした新興国が他の途上国に行っている開発協力を、伝統的な先進国からの開発援助と一線を画した「南南協力」だと言っている。でも不思議なのは、日本もODAの世界ではかなり昔から「南南協力」という言葉を使っている。日本自身も昔は途上国みたいなものだったので、日本自身が行ってきたODAもいわば「南南協力」なんだけど、そのODAを通じて開発の実績が進んできた国々から他の国々へ協力を行うのも「南南協力」と呼んでいる。でもそこで前提とされているのは「政府間協力」――ODAの世界の話。同じ「南南協力」といっても、日本にいて使われているこの言葉と新興国が使っているこの言葉では意味がまるで違うので、議論があまり噛み合わないような印象を受けた。

もう1つの論点は、そうした新興国が、既存の開発協力枠組みがあまりにも先進国主導で先進国の都合の良いように作られ過ぎているので、今のグローバル社会の現実に即した枠組みに変えていくことを求めている点。それには既存の枠組みに参加してそれを変えていくという選択肢と、新興国主導で新たな枠組みを作っていこうという選択肢の2つがあり得る。本書では、OECD-DACのような先進国が作った枠組みへの参加は難しいが、G8に代わるG20の開発作業部会の場であるとか、国連の場であれば開発協力フォーラム(DCF)の場を利用して発言していけるだろうと可能性を見ている。

この本が書かれたのは2012年で、その頃の議論としてはそうだったのかもしれないが、その後進展もあって、先月末に採択された「持続可能な開発に向けた2030年アジェンダ」では、その政府間交渉の過程で、中国をはじめとする途上国グループの発言力の高まりが浮き彫りになり、実際にかなりこれらの国々の主張が反映された内容になったと聞いている。でも、その一方で、南の国々の間での結束力の強化のために、国連総会を舞台にした贈収賄も明るみに出てきており(下記記事参照)、汚職腐敗に今でも脆弱な途上国の現実が改めて突き付けられた気もする。


もう1つの路線は、新興国主導で全く新たなグローバルな枠組みを作ってしまえというもの。アジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS銀行の設立の動きがまさにそれで、もう南は南で結束して自分たちの意向が十分反映された制度を創設しようという動きは、途上国の間では好感をもって受け止められているのではないか。その辺の話までは、2012年の発刊の書籍にはその萌芽すら感じることはできないけれど。

「南南協力」の概念を巡るねじれた関係や南主導の新たなグローバルガバナンスの枠組み構築の動きに対して、日本はどう向き合っていくんだろうか。特に、南の国々の言う「南南協力」の概念に合わせれば、先進国にもっと求められるのは援助だけじゃない貿易、投資、技術開発、外国人労働者/留学生等の受入れ等を含めた政策の一貫性であるだけに、そういうのは国内でどこが司令塔になって来るのか、よくわからない。本書では日本に関する言及は殆どない。

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