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『荒木飛呂彦の漫画術』 [読書日記]

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

  • 作者: 荒木 飛呂彦
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 新書
内容紹介
全く人気が衰えることなく長期連載が続く『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦。「漫画は最強の『総合芸術』」と言い切る彼が、これまで明かすことの無かった漫画の描き方、その秘密を、作品を題材にしながら披瀝する!絵を描く際に必要な「美の黄金比」やキャラクター造型に必須の「身上調査書」、ヘミングウェイに学んだストーリー作りなど、具体的な方法論からその漫画術を明らかに! 本書は、現役の漫画家である著者が自ら手の内を明かす、最初で最後の本である。
我が家の子どもたちの間で、アニメ化されていた『ジョジョの奇妙な冒険』が大人気となり、自分の学生時代に読んでいた「少年ジャンプ」で連載開始した当初のことを覚えている僕としては、驚きが隠せないでいる。僕の記憶では『ジョジョ~』の連載は自分が高校生の時だと勝手に思い込んでいたが、今調べてみたところでは連載開始は1987年新年号らしく、そうすると僕自身は大学4年生だったわけだ。さすがに当時「少年ジャンプ」を購読していたとは思えず、それなのに連載開始の記憶だけはあるというのだから不思議だ。理髪店の待合室ででも読んだのかな???

僕より3つ年上の荒木先生が、『ジョジョ~』を連載開始したのは26歳の頃という計算になる。それだと普通だが、僕は自分の記憶の間違いに気づくまで、僕は荒木先生の『ジョジョ~』連載が荒木先生が大学生の時に始まったと勝手に思いこんで驚いていたのである。大変な記憶違いだ。でも、先生が『武装ポーカー』で手塚賞準入選して少年ジャンプ誌に初めて作品掲載されたのは確かに1980年から81年にかけてで、この頃ならさすがに僕も高校2年生であり、そうすると先生のデビューは確かに20歳の時だという計算になる。これは早い。でも、その荒木先生を焦らせたのは同い年のゆでたまご先生。荒木先生が大学中退して漫画の途に踏み込んだきっかけは、ゆでたまご先生が『キン肉マン』で16歳でデビューしたことだと本書で明かしている。これは驚きだ。

うちに中高と漫研所属して自室でも絵ばかり描いている娘がいる。漫研所属して絵は確かにうまくなったけど、部で毎年制作している同人誌を読むと、4頁の作品でもストーリーがイマイチで、作画のクオリティにもバラつきがある。1ページ目にエネルギーを費やし過ぎて締切までの残り時間が少なくなり、後半はかなりの手抜きをしていたりとか、登場人物の顔が常に同じ方向からしか描かれていないとか(要は別アングルから顔を書くのがどうも苦手っぽい)、稚拙さがまだまだ解消されていない。

同年齢のゆでたまご先生が既にデビューしていたことを考えると、娘の漫画は自己満足の世界からまだまだ飛び出せていない。プロの漫画家になろうとは今は思っていないようだが、今後も趣味で漫画を書いていくとしても、同人誌をパラパラめくって「これは!?」と一目で惹きつけられるような一瞬のインパクトがなければ、やはり元が取れない形で終わってしまうような気がする。

だから、本書を読了後、娘には、「これ読んどけよ」と渡しておくことにした。

「企業秘密を公にするのですから、僕にとっては、正直、不利益な本なのです」と帯には書かれているが、まあこれは1つの考え方であるので、全てのプロの漫画家がこれらを踏襲しているわけでは必ずしもないと思う。タネ明かしをしたからといって、同じような作風を漫画家の卵たちが皆真似できるようなものでもないだろうし、荒木先生本人が言っているように、遠くから見たってこれが誰の作品かがすぐに言い当てられるだけの個性的な作風は自分自身で築き上げなければいけないと思うので、本書が著者の不利になるとはとうてい思えない。

読んでいて漫画の奥深さは確かに感じた。例えば、せっかく原稿を持ち込んでも編集者が1ページ目を読んで2ページ目以降も目を通してもらえるかが勝負の分かれ道となるので、最も大事なのは1ページ目のつかみだというのはその通りだと思うし、勢いやご都合主義で書き進めると矛盾点がいろいろ生じてきて、賢い読者はすぐに時代考証の稚拙さや現地取材の少なさを見抜いて作品を読む気を失くすといった指摘も、僕自身がそれで読み飽きてしまった経験があるのでとてもよくわかる。また、少年漫画誌にやたらとトーナメント戦や次から次へと強敵が現れるという作品が多かったのも、興行的には常套手段だったんだというのに気付かされた。

挿入されている口絵で荒木作品がふんだんに使われており、これもなかなかのサービスだ。

また、現地取材はきっちり行い、普段から映画や読書、美術展などを通じた新たなアイデアや情報の取り込み努力を欠かせないところも、娘には見習ってほしいものだ。漫画にはその人の歩んできた生き方が反映されるものだと言われると、アトリエを離れてどれだけのインプットができるかが勝負だと思える。

漫画にしても、物書きにしても、表現手段は異なれど、アウトプットの前提はインプットの拡充にあるというところは変わらない。「起承転結」の重視も、文章を書く上では鉄則だと思う。そうした意味では、本書は漫画家志望者へのメッセージであるとともに、(ブログを書いている僕自身も含めて)自己表現をしたいすべての人へのメッセージであるかとも思う。

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