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『サーバント・リーダー』 [仕事は嫌い]

サーバント・リーダー 「権力」ではない。「権威」を求めよ

サーバント・リーダー 「権力」ではない。「権威」を求めよ

  • 作者: ジェームズ・ハンター
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2012/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
考えは行動になり、行動は習慣になり、習慣は人格になり、人格は運命になる―このシンプルな物語が、あなたのリーダー観を根本から変えていく。

ここ数カ月の僕の読書の傾向からすると、かなり意外な本のセレクションではないかと思う。昔一時的に「サーバント・リーダーシップ」に興味を持っていた時期があって、その時はこのテーマのおそらく古典中の古典と言っていいロバート・グリーンリーフの『サーバント・リーダーシップ』を1冊購入しようかとすら思った。

当時僕がいた部署には、僕の上にものすごくできる上司がいて、僕の下にものすごくできる部下がいた。このできる上司はできる部下が可愛かったので、中間管理職の僕をバイパスして直接部下のところに話を持って行っていた。僕は立場がなかった。この上司と部下が直接つながって仕事やったらそれはそれは部署としてのパフォーマンスも上がったし。一方で、この上司はあまり気に入らない別の部下のことは放ったらかしにしていて、直接口もきかなかった。この部下のことは僕に対応をほとんど任せていた。部署全体のパフォーマンスを考えればこの選択と集中は理解できなくもないが、やられた側――選択されなかった側としてはなんともやりきれない気持ちだけが残った。

そんな中で一応管理職たる僕が部下に対してどう振る舞ったらいいのか――。それを考えているうちに出会ったのが「サーバント・リーダーシップ」だった。「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というやつで、ヒエラルキーの頂点に君臨する支配型リーダーシップとは真逆の概念といえる。ヒエラルキーの頂点はうちの上司にお任せして、僕は部署のスタッフみんなに奉仕しよう、そう考えたら少しは気が晴れた。自分のあり方が見えた気がした。

それを今また蒸し返したのは、今また同じような立場に置かれている自分を感じたからである。僕の業績の評価者にあたる上司は僕をバイパスして僕の部下に直接仕事の指示を出している。それも僕の知らないところで。気に入らないなら直接上司に不快感を表明すればいいじゃないかと思われるかもしれないが、半年ほど前にちょっとした出来事があって、以降冷戦状態に陥っている。没コミュニケーションにはどちらか一方だけに原因があるとは思っていない。僕に断りもなく自分の仕事に僕の部下を引っ張り込む上司も上司だが、自分を通さない不快感を上司に伝えない自分も自分だ。

でも可哀想なのは間に挟まれる部下である。だから、自分を通っていないことへの不満は部下には見せないように心がけ、発想を転換して、そうして仕事を受けてきた部下を全力でバックアップすることにした。だてに歳をとっているわけじゃなく、それなりに経験もしてきているので、僕よりも若いスタッフに欠けている視点を補うようなことはできると思う。それは直属の部下に対してだけではなく、その上司の下で働いている全てのスタッフの仕事で、サポートできるところはサポートしようというポジショニングである。

上司から僕には別に仕事が直接降ってきているわけではないので、はっきり言ってしまえば僕自身は暇である。でも、多くのスタッフの仕事に関して先回りして助言するということであれば、僕は今までの自分の経験の上にあぐらをかいているだけではなく、常に引き出しの数を増やすためのインプットをしてなければいけない。だから、たとえ夕方6時にさっさと退社してしまっても(その分朝は早めに出社してるけどね)、遊んでいるわけではなく、それなりの読書の蓄えはしてるということである。

それに、今の僕は自分の所属する部署の仕事では閑職だと見られているかもしれないが、けっこう他の部署の仕事を手伝ったりもしているので、部署の仕事はやってるように見えなくても、なんだか忙しくしている。うちの上司が見向きもしないテーマを地道に追いかけてるのも自分だという自負もある。

そう考えたら、今の自分の置かれた状況に不満など漏らしていても仕方ない。部署の役に立つかどうかはわからないが(少なくとも優秀なスタッフの皆さんを陰ながら下支えする役には立っていると思うが)、僕自身へのインプットにもなっているという点はメリットだと思わないといけない。今さら昇進云々を気にする年齢でもないので、そういう自分のあり方を上司がどう思おうとあまり気にしない。今の部署も既に2年近いので、長くても今年度いっぱいだろう。

ただ、そういう開き直りについて少しは精神的な支えが欲しいと思うことがあって、それでこんな本を読んでみたくなったのだろう。僕が勝手に言っている、今の部署での残りの半年に臨むにあたって。

前置きがものすごく長くなった。本書はそういう自分を自分で納得させるために読みたかったというわけ。本書は「修道院に集まった人びとがメンターの援助を得ながらリーダーシップの原理原則を語り合うという小説仕立ての自己啓発書」であり、基本小説のような感覚で軽く読み進められる。修道院というところからもわかる通り、ちょっとキリスト教との関連性が強すぎるので、読んでて違和感を感じるところもなかったわけではないが、会話の中にこれはと思うような有用なエッセンスが含まれている。

いくつか引用してみよう。なんか含蓄あるな~。

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「簡単に言うと、リーダーシップとは人を通じて何かを行なわせることです。人々と一緒に働き、その人達に何かを行なわせる時、そこには常に二つの原動力があります。タスク(課題)と人間関係です。リーダーがどちらかを犠牲にして片方だけに集中し、人々のバランスを失わせるのはたやすいことなのです。」(p.51)

「あんな風に話の途中で口を挟むと、悪いメッセージを送っていることになるのです。まず一つ目は、もし自分の頭の中で次に言うことを考えているなら、明らかに相手の言うことを聞いていないということです。二つ目には、相手または相手の意見を尊重していないということです。なぜなら、相手の言葉を聞くのに時間を割くことを拒んでいるからです。そして三つ目に、自分が言わなくてはならないことは、相手が言わなくてはならないことより大切だと思いこんでいるに違いないということです。ジョン、リーダーとして示してはならない礼を欠いたメッセージがそこにはあるのです。」(pp.61-62)

「ここまでのところを要約すると、リーダーとは、部下が必要としているものを見つけ、それに応え、従業員が顧客にサービスを提供できるようすべての障害物を取り除く者である、ということです。そして、繰り返しますが、人を導くためには、人に奉仕しなければならないのです。」(p.80)

「『意図プラス行動、イコール意志』です。人が調和のとれた人間、調和のとれたリーダーになるのは、行動と意図がともに備わった時なのです。」(p.111)

人に関心を向けるということはとても大切です。そして人に関心を向ける最大の機会は、能動的に人の話を聞く時だと思います。」(中略)
「相手が話している時、こちらは黙っているので、多くの人は聞くことは受身的な行為だと考えがちです。でも、聞き上手といわれる人々も、たいてい相手の話を選びながら聞いたり、相手が言っていることを判断したり、その話を終わらせる方法を考えたり、自分にとっていいように話を変えさせたりしているのです。」(p.132)

「リーダーが誰かを人前で罰すると、仲間の前でその人に恥をかかせることになり、信頼口座からたくさん預金を引き出す結果となります。それだけでなく、それを見ていた人達の信頼口座からも預金を引き出すことになります。見せしめにするようなことは、見ているほうにも恐怖で、『次は自分かもしれない』という思いを抱かせるでしょうから。つまり、信頼口座の残高を減らすつもりなら、人前で罰するのはとても有効な手段と言えます。」(中略)
「同じことが人前で誉めること、感謝すること、評価することにも言えるでしょう。誉められることだけでなく、人が誉められているのを見ることでも、信頼口座に預金することになると思います。シメオンが前に言ったように、人は皆、リーダーがしていることをいつも見ていますから。」(pp.168-169)


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