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『腐ったリンゴをどうするか?』 [仕事の小ネタ]

腐ったリンゴをどうするか?

腐ったリンゴをどうするか?

  • 作者: 釘原 直樹
  • 出版社/メーカー: 三五館
  • 発売日: 2015/06/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
会社は手抜きに満ちている。手抜きは伝染る。手抜き研究の第一人者による「サボッてばかりのあの人」の取扱説明書。
この本が発売された直後、新聞広告を見て衝動買いしてしまった。その頃僕はちょっとばかりくさっていて、こういうテーマにビビッと反応しやすい状況だったのだ。他の本を後回しにして、さっそく読み始めたものの、途中で読むのを止めてしまった。そのまま放ったらかしにしておくのも申し訳ないので、23日から出発した海外出張の往路に読み直すことにした。

タイトルや装丁だけからはもっと実用的なハウツー本だと想像されるかもしれないが、実はこの本はれっきとした研究書である。アカデミックに先行研究をレビューし、著者自身の研究成果も併せて紹介している。それも、どういう実験を行ったのかが意外と詳細に説明されていて、その結果がどうで、その結果から何が癒えそうかまで書かれている。この手の本は欧米の研究者の著書によく見られるものだが、日本人研究者の著書でこの手の本は珍しい。でも、ハードカバーで300頁ぐらいの専門書にすればよかったものを、ソフトカバーの200頁に抑えたことで、なんだか中途半端な内容になっている。実験結果が詳述されている割に、その実験は誰が実施し、どのような研究論文で書かれているのか言及されていない。巻末には参考文献リストがしっかりついているのに、そのうちどの文献が本文中のどの箇所で引用されているのかがわからないのである。

これではあまり丁寧な編集とはいえない。タイトルや装丁と中身とのギャップがかなり大きい本である。外見のとっつきやすさと比べると、内容がハードで、読みづらさが相当に大きい。

内容については、僕自身も自分のチームの中に手抜きをする奴がいて周囲に悪影響を与えたことがあったし、僕自身も影響を受けたところがないとは言わない。手抜きする奴を自分の力で排除することはできないため、チームとしてのパフォーマンスを落とさないように自分自身がムリをした時期があったが、次から次へと新たな課題が上司から持ち込まれるうちに自分の気力が続かなくなった時、当時の上司はそれに何らの気遣いもしてくれなかったことがあった。自分がムリして体をこわしたり、心と体のバランスを失ったとしても、組織は守ってくれないというのに気付いてしまった。

あれから8年ぐらい経つが、グループで何かに取り組む場合、僕はムリはしないようにしている。自分にはムリだと直感的に思ったら、仕事を受ける前に拒否したいというメッセージを出すようにしている。そうやって自分でガードを固めていたため、僕に仕事を持って来づらくなった上司もきっといたに違いない。また自分が請け負った仕事であっても、誰もその進捗状況を気にしていないと思ったら、後回しにするようにしている。でも、これは結構誰でもやっているような気がするが。僕もやられたケースはあるし。

僕の割り切りは、組織はメンバーの8割のパフォーマンスで持っていて、残りの2割のメンバーの低パフォーマンスをカバーしているという通説による。この2割を切っても、残りの8割の中からまた「2割」の手抜きが出てくるという。それだったらその2割は必要悪だと割り切らなければしょうがない。僕がその2割に該当するような立場になることだって、あってもいいかも…。そんなふうに考えている。著者の言う「怠け者有用論」みたいなものだ。

一方で、本書の著者は、「腐ったリンゴは、周りも腐らせるから、排除すべきだ」という選択肢についても考察している。でも、手抜きしている奴を排除しても残った中から手抜きする奴が出てくると思うので、これ自体も考察しているとなると、我々が目指すべきところは何なのか、「手抜きゼロ」の組織なのか、よくわからなくなるところもあった。読んでいて自分がどこに向かっているのかわからないというのが、本書を読了するのに時間がかかってしまった大きな理由の1つである。記述の内容がアカデミックすぎるというのだけが理由ではない。

本書に書かれているような現象は、長いこと働いていればどこかで経験したことがあるもので、著者の言う「社会的手抜き」対策も、それに類することはこれまでに自分自身でもあるいは組織としても実践しているものが結構多い。これに対して実証研究で裏付けするのが本書の付加価値だとはいえると思う。

このテーマは書きはじめると際限がなくなりそうなので、これくらいで。

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