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『捏造の科学者 STAP細胞事件』 [読書日記]

捏造の科学者 STAP細胞事件

捏造の科学者 STAP細胞事件

  • 作者: 須田 桃子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/01/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
はじまりは、生命科学の権威、笹井氏からの一通のメールだった。ノーベル賞を受賞したiPS細胞を超える発見と喧伝する理研の記者会見に登壇したのは、若き女性科学者、小保方晴子。発見の興奮とフィーバーに酔っていた取材班に、疑問がひとつまたひとつ増えていく。「科学史に残るスキャンダルになる」STAP細胞報道をリードし続けた毎日新聞科学環境部。その中心となった女性科学記者が、書き下ろす。
発刊当時、話題になった本。STAP細胞に関する理化学研究所の自信満々の記者会見と小保方晴子さんフィーバーから1年。記者発表前から主要研究者との交流があった毎日新聞科学環境部の女性記者が、その取材記録を整理して本に纏めたものである。STAP細胞事件について書かれたルポとしてはおそらく最初のものであろう。

そもそも生化学に関する予備知識がほとんどない中で、これを読むのは大変だったが、何が問題だったのかある程度は理解できた気はする。小保方さんが研究者として未熟だったというのは確かにそうかもしれない。でも、そういう人がフリーパスで理研に採用され、プロジェクトリーダーになってしまうというのも、システムとしてどこかに問題があったのではないかと思わざるを得ない。だから、タイトルを『捏造の科学者』として、表紙に小保方、笹井、若山の三氏の写真を載せている時点で、どこか違うんじゃないかという気もしてしまう。少なくとも著者の書きぶりからして、笹井、若山の両氏については、多少の複雑な感情は残しつつも、でも研究者としての実績については肯定的に捉えている。それに、画像すり替えというのがこのSTAP細胞事件に限らず、調査委員会のメンバーの過去の研究論文でも行われていたことが明らかになり、理研では割と頻繁になされていたという点で、「捏造の科学者」とはこの三氏のことだけを言っているわけではないとますます思いたくなる。

ただ、無断コピペはやっぱり問題。ましてやそういうコピペに対してより厳しい米国に留学経験がある小保方氏が、引用元を明らかにしないでコピペをやっていたとしたら、やっぱり悪意を感じてしまう。ましてや、20ページにもわたるコピペなど、非常識も甚だしく、単なる見落としではなく、それぐらいのボリュームでコピペをやっているから余計に引用元を明記しずらかったんだろうと思わざるを得ない。(昔、僕の部下にもネット上に掲載されている文章から出典明記せずにコピペをやって自分の執筆担当部分の原稿を書いた奴がいた。そこだけあまりにも彼の文章よりも詳しいので、この情報源を訊いてみて発覚したものだが、本人はネット上で公開されている情報は公共性が高いので、出典明記は不要だ、何が問題だというのかと首を傾げていた。だから、ネット上の情報の引用で出典明記が必要だと思っている人自体がまだまだ少ないのかもしれないという気もする。それでもねぇ…。)

繰り返しになるけど、小保方さんが常識に欠ける未熟な研究者だったというのはそうだろうが、そういう人をなぜバカンティ教授がそんなに高く評価してしまったのか、なぜ早稲田の博論が通っちゃったのか(僕は、博論提出までの間に行われたジャーナル掲載論文が共著だった場合に、自分の博論の中でまるまるそれを使えるのかどうかがよくわからない)、そういう脇の甘い人が採用されてしまう理研の人事採用の制度、STAP研究を秘密裏にやろうとした理研の実施体制、そして研究チームのメンバー間の遠慮とかコミュニケーション不足とか、ジャーナル投稿論文の査読者のコメントへの対応をクローズドでやったことによる未対応、そういう様々なシステム上のヒッチがあって、取り返しのつかない事態に陥ってしまったんだと思う。僕は理系じゃないのでよくわからないが、ジャーナル投稿論文って普通は投稿者名を伏せて査読者に渡されると思っていたが、投稿者名を明らかにして査読依頼をしているケースがあるんだというのにも驚いた。「笹井さんや若山さんが共同執筆者に入っているのなら」という甘えが生じてしまうこともあるかもしれない。

でも、できれば単に取材記録を淡々と時系列でまとめるだけでなく、なんでこうなっちゃったのかについて、誰の何が良くなかったのかについて、著者なりの仮説を最後に提示してほしかった。また、人物相関図があるとわかりやすかったかもしれない。そのためには、本当なら小保方さんや米国のバカンティ教授への取材ももっとやって欲しかったと思う。小保方さんの未熟を著者は明らかに責めていると思うが、小保方さんは自分自身のことをどう思っているのか、周囲の人々に取り立てられて、あれよあれよといううちにこうなっていってしまったんじゃないか、言い分も含めて語ってもらう機会を設けて欲しかったし(この内容じゃ欠席裁判だ)、バカンティ教授については取材依頼すらされていない。

最後に、上記とは全く違う視点からひと言―――。

この本、発刊日は2015年1月7日である。通常、発刊日の2週ほど前には出版元から取次店には出荷されるのが慣例だというから、2014年12月20日前後には既に本が刷り上っていた筈だ。その頃といえば、理研で行われていた実験でSTAP現象を再現できなかったとして、小保方さんが理研を退職する意向を明らかにしたと報じられたのが12月19日。すなわち、そうなることをある程度予想していないと本書の印刷・出版にゴーサインはだせなかった筈だ。それなのになんで急いで出版に踏み切っちゃったのか。急がなきゃならない事情が何かあったのかもしれない、という別の観点からの疑惑もこの本にはあるような気もしますが…。
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