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『あと20年でなくなる50の仕事』 [仕事の小ネタ]

あと20年でなくなる50の仕事 (青春新書インテリジェンス)

あと20年でなくなる50の仕事 (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 水野 操
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2015/04/02
  • メディア: 新書
内容紹介
昔、私たちが望んだ無邪気な未来では、コンピューターの進化が私たちの仕事を楽にしてくれ、人間はより創造的な仕事に集中できるはずだった。しかし、コンピュータの能力が飛躍的に向上するにつれ、実際は私たちを仕事から追いやる存在になってきている。タクシードライバー、弁護士、営業部員、コールセンター業務、飲食店の接客業などは、今後消えていくかもしれない。また、企業の中間管理職などの中途半端な知的労働者も、これから一番職を失う可能性が高い時代になる。では、どうすればそうした状況でも生き残る人材になれるのか? コンピュータと戦うのではなく道具として使いこなすには何が必要なのか? 3Dプリンタなど最新技術の導入を企業にコンサルティングしている著者が、その経験から見据えた大胆な予測を提示する。

この本を実際に手にとって見てみるまで気付かなかったのだが、この著者の本を読むのは二度目である。1冊目は『3Dプリンターで世界はどう変わるのか』であり、その他にもこの著者の既刊には3Dプリンターや三次元CADに関する技術書が多く、身近になって来たこれらの新技術を僕達がうまく使いこなし、日常生活にちょっとだけ彩を添えるようなカスタマイズ作品をどう作ったらいいのかを説明するのがこの著者の本来お得意とするところなのではないかと思う。

仕事や雇用といったものが今後20年でどう変わっていくのかは、既に管理職ポストから外れる年齢までカウントダウンの時期に来ている僕自身にとってはさほど身につまされる話でもない。むしろ、自分の子ども達の世代が将来の職業選択を考える上で、何か参考になるものがあるのではないかとは思った。

繰り返すがこの著者は元々仕事や雇用の論客ではない。むしろ、3Dプリンターや三次元CADのような技術が僕たちの仕事や生活をどのように変えていくのかを論じるのが上手い方だと思う。その意味では50もの仕事を論じるにはちょっと力不足かなという気がする。この本には元ネタになっている英国の論文があるらしい。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来――コンピューター化によって仕事は失われるのか」というものだ。幸い、この論文自体はウェブ上で公開されていて僕らでもダウンロードできる。

Carl Benedikt Fey and Michael A. Osborne
"THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?"
Sept. 17, 2013

http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf

本文だけで45ページもある相当長い論文だが、これにくっついているappendixがまた長く、702もの職種について、コンピューターに置き換えられる可能性がどれくらい高いかが算出されているのである。本書は基本的にはその論文を著者なりに日本の仕事の文脈に合わせて論じたもので、元ネタの論点を基本的にはサポートした書き方になっている。「コンピューター化」というのが「AI(人工知能)」に置き換わっただけであり、AIが今後もどんどん発展していけば、今ある仕事もかなりの部分がAIにとって代わられるというのが基本的な論点だ。

実際に「50」もの職種を取り上げているのかは数えるだけ野暮だと思ってやってみなかった。多分、具体的な数値を入れた方が本が売れるという営業サイドの判断なのだと思う。本書における「50」のカウントの仕方はナゾだ。仕事に貴賤があると言うつもりはないものの、誰だって最初からタクシーの運転手になりたいと思っていたわけではないので、こんなに沢山の職種を取り上げなくてもいいのに、とは思わぬではない。むしろ、多くの読者は既に就いている仕事があるか、或いは将来こんな仕事をやりたいという具体的なイメージを持っている。それがAIにどこまで代替されるのかには興味があるわけだから、最初から目次で職種を明記して、読者が一足飛びにそこにたどり着けるような構成にしてくれてもよかったかもしれない。この本を通読するにはちょっとエネルギーが必要だった。

本書のネタ本は僕は読んでないけれども、つい最近、同じ英国の防衛省系シンクタンクが出した2045年までの世界的趨勢を予測したレポートを読む機会があった。要すれば今後20年というところでは本書とそのレポートは期間設定が同じなわけだが、そのレポートでも、3Dプリンターのような積層製造技術が出てきたことで、生産拠点はどんどん分散化されていき、大量生産のための雇用機会は今後どんどん少なくなっていくとの予測であった。日本の場合は「成長」という言葉がどこまで適切かはわからないが、経済成長が今後も続くとしても、雇用自体は同じペースでは伸びないということらしい。本書を読むと無くなる仕事の方が圧倒的に多い印象で、読んでいて暗澹たる気持ちにさせられてしまう。

三次元CADが著者のご専門だからというのもあるだろうが、こういう技術を使いこなせないと、簡単に職が奪われる事態に陥るということは言えるらしい。本書の帯にも書かれているような「AIに使われる人 vs. AIを使いこなせる人」、「AIを道具とするのか、それとも競争相手とするのか」、「コンピュータの「上流」と「下流」のどちらに立つか」といった文言が如実にそれを物語っている。我が子には示唆が多いかもしれない、わりと短時間で読めてしまう本である。僕自身が読んで暗澹たる気持ちになるのもいいが、この本をうちの子ども達が読んで、どう感じるのかを見てみたいものだ。

以前読んだ『ワーク・シフト』は2025年までを見越した仕事と雇用の未来予測だったわけだが、本日紹介した本は基本的に職種別の興亡を論じているのに対し、『ワーク・シフト』は仕事のスタイルを論じているという点で相互補完的かもしれない。

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