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『東京劣化』 [読書日記]

東京劣化 (PHP新書)

東京劣化 (PHP新書)

  • 作者: 松谷 明彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/03/14
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
地方の集落の消滅を危惧する声が高まっているが、むしろ、地方よりも東京のほうがより急激な変化に見舞われると考えられる。東京の高齢化はすさまじい。2040年には、2010年に比べて高齢者が143.8万人増加する。その結果東京の貯蓄率は低下し、インフラが維持できず、都市がスラム化するおそれがある。多くの高齢者が家を失い、老人ホームも圧倒的に不足する…。ならばどうするか。欧州の事例も参考にしながら現実的な対応策を提案する。

少し前に別の記事でも述べたが、今月初旬、日本創成会議が東京の高齢者の地方移住促進を提言した。覚えておいでの方も多いと思うが、当時の記事を1つだけ紹介しておこう。
「老いる東京」集中是正探る 創成会議、地方移住を解決策に
2015年6月4日 日本経済新聞

 日本創成会議の提言は、急速な高齢化で医療や介護の体制が追いつかない「老いる東京」の姿を浮き彫りにした。東京圏に住む75歳以上の人は、今後10年間で175万人増える。現状では有効な対策を打ち出せておらず、創成会議は地方移住を有力な解決策に据えた。移住先の自治体からは歓迎する声が出る一方、東京都や神奈川県は反発している。
 創成会議によると、2025年までの介護需要は東京が38%増、神奈川48%増、千葉50%増、埼玉52%増と全国平均の32%増を上回る。ただ、全国的に見ると減少に転じた地域もあるため、移住を促して需給のミスマッチ解消を提言した。
 移住先に例示された自治体は総じて歓迎ムードだ。大分県別府市は「評価されたことは正直にうれしい。交流人口を増やし、別府を気に入ってくれた人に定住してもらう」(企画部)と語る。
 人口が年約3千人のペースで減少し「消滅可能性都市」にも挙げられた北海道函館市も「医療施設が充実し、介護面でも有料老人ホームなどには空きがある」(企画部)と歓迎する。
 一方、神奈川県の黒岩祐治知事は4日、「移住策には違和感を覚えざるを得ない」と不快感を示した。東京都の舛添要一知事も住み慣れた場所で暮らす重要性をかねて指摘している。高齢者が地方に流出すれば、経済の活力がそがれ、税収も減るとの危機感もある。
 移住者の医療・介護費を自治体間でどう分担するかも今後の課題だ。
 東京都の杉並区は静岡県南伊豆町と特別養護老人ホームの整備で提携した。「特養を区内につくり続けるのは財政的に限界がある」(田中良区長)と判断したためだ。
 両自治体は費用を転居前の自治体が負担する「住所地特例」制度を活用する予定だ。「移住する高齢者が今後さらに増えれば、小さな自治体の介護費用が将来的に重くなる」(南伊豆町の梅本和熙町長)ためだ。
 関東周辺のある市長は「子育て世帯に来てほしいのが本音で、シニア層だけ誘致するところがあるのか疑問」と語る。

この報道を耳にしたとき、最初に考えたのは、そういえば松谷明彦先生が最近出された本が東京の高齢化を取り上げておられたと思い出した。近所の図書館では順番待ちでなかなか読むことができず、そうこうするうちにこんな報道が出てしまったので、これはすぐに読んでおいた方が賢明だと考え、急遽購入し、すぐに読むことにした。

おそらく東京の人口動態予測については日本創成会議でも検討されていて、今回の提言のベースにも人口動態予測があるものと思うが、さすがは人口学者、こと人口動態に関する予測は非常にわかりやすく、大都市の高齢化・人口減少の深刻さがよく伝わってくる。

小見出しだけで、これから2045年までの30年間に東京で起こることについて、本書で書かれていることを簡単に紹介してみよう。

 ◆東京では高齢者が30年間で143.8万人増える
 ◆貧しくなる東京
 ◆老人ホームはそう簡単に建てられない
 ◆インフラが維持できない――スラム化する東京
 ◆GRPの低下――民間資本による再開発も困難に
 ◆オリンピックの狂騒の後に残るもの
 ◆文化や情報の発信力が弱まる
 ◆生活環境の悪化
 ◆「中流都市」への劣化

はっきり言って、こうした東京の将来像からは明るい未来など想像することは難しい。人口動態予測はかなり高い確率で当たるので、人口動態の変化とともに東京に起こることも、かなり高い確率で当たると考えていい。

勿論、その予測も何もしなかったらそうなるというものではあるわけだが、ではそうならないような悪あがきとして今政府が行っていることが適切なのかというと、著者にしてみればかなり的外れで後世に禍根を残すとしている。「少子化対策」も「経済成長の追求」も「増税による財政再建」も、政策としては不適切だとする。さらに言うと、人口に人為的な手を加えることでもたらされる人口動態の歪みは何十年にもわたって経済と社会を苦しめると強調されている。近頃お騒がせの国立競技場建設問題も、いっそ建設など止めてしまった方がいいのではないかと思える。2020年の東京五輪に向けて、東京のランドスケープはどんどん変わっていこうとしているが、それにかかった費用の後年度負担は、日本国民、東京都民、周辺の県民に重くのしかかって来る。そもそも東京五輪のような成長促進策を無理やり入れる政策自体、著者にとっては国民の首を絞めるものだと見ている。明示的には書かれていないが。

人口減少の影響は、今後は地方よりも大都市の方が深刻だと著者は主張する。そこまではっきり言い切っている点は、この本の付加価値だと思う。今後、2045年に向けて、地方では高齢者の死亡数が増えて人口が急減するが、そうなることで高齢化率はそれ以上悪化しないで安定化するので、福祉や医療費の公的負担は今後それほど増えないという。だから、今地方を見据えて行われている、「若者の流出抑制」も「大都市経済への接近(産業再配置や産業誘致)」も「市町村合併」も、あまりやらなくてもいいと述べる。

僕は、高校卒業と同時に東京に出てきてしまい、当時の小学校の同級生で、東京に出てきたのは僕だけ、今も故郷の町に近いところで暮らしている同級生は多いのだが、これでは東京で暮らすのと故郷で暮らすのと、10年後、20年後を考えた時にどちらの方が良かったのか、自分の決断は正しかったのか、非常に考えさせられた。

どうしますかね、これからの子ども達の進路―――。
東京で進学させるのがいいのか、地方も視野に入れさせるのがいいのか。

どうしますかね、自分自身の老後―――。
東京で暮らすのがいいのか、故郷に近いところに生活の拠点を移すのがいいのか。

とはいえ、既存の政策にこれだけダメ出しをしている割に、著者が挙げている対案は正直言って迫力がない。なんか、変化球が多いような印象。きっと専門家の目から見ても打つ手が限られているということなのだろう。


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